ローリエ(月桂樹の葉)とは|ベイリーフとインドのテジパットは別の植物

ローリエ(月桂樹の葉)とは|ベイリーフとインドのテジパットは別の植物

ローリエとは、ローレル(Laurus nobilis L.)の葉を使う香辛料で、米国の連邦規則21 CFR 182.10は英名をBay、学名をLaurus nobilis L.と1行で記す[1]。一方、インドの香辛料局はクスノキ科のテジパット(Cinnamomum tamala)をBay Leafとは別の品目として扱っており、こちらは植物そのものが異なる[3]。輸入食材店で手にした葉がどちらかを知るには、パッケージの学名表示を確認するのが確実な方法になる。

この記事の結論
  • ローリエは、ローレルの葉を使う香辛料で、英語のbayやlaurel、フランス語のlaurierも同じ植物を指す。
  • インドのテジパットは属の異なる別の植物で、葉の味はクローブに似て、香りはかすかに胡椒に似る。
  • パッケージの「ベイリーフ」がテジパットを指す場合は別の植物なので、確かめるには学名の表示を見る。

この記事は「世界のスパイスの種類と産地|ISO命名で読む単一スパイス完全図鑑」の各論です。

目次

ローリエ・ローレル・ベイリーフは同じ植物か

米国の連邦規則21 CFR 182.10が定める学名

米国の連邦規則集21 CFR 182.10「Spices and other natural seasonings and flavorings」は、香辛料・天然調味料を学名付きで列挙する。この一覧のうち「Bay」の行は、学名を「Laurus nobilis L.」と記すのみで、産地や加工法についての記述は伴わない[1]。この一覧では、英語のBayは1つの学名に対応づけられている。

GRINが載せる英語・中国語・フランス語の呼び名

米国農務省(USDA)農業研究局(ARS)が運用する遺伝資源情報ネットワーク(GRIN-Global)のLaurus nobilis L.の頁は、この植物の呼び名を言語ごとに記録している[2]。確認できる呼び名は次のとおりである。

  • 英語:laurel、sweet bay
  • 中国語:月桂(yue gui)
  • フランス語:laurier

英語の呼び名としてlaurelとsweet bayが同じ植物の頁に並んでいる点が、この頁の記述から確認できる[2]。呼び名は言語ごとに複数あるが、学名で見るかぎり指す植物は1種である。

日本語のローリエ・ローレル・月桂樹は出典にない

日本語で使われる「ローリエ」「ローレル」「月桂樹」という語が、英語のbay・laurelやフランス語のlaurierのどちらに由来するかは、今回確認した出典のいずれにも記載がない。そのためここでは、これらの日本語表記をLaurus nobilis L.の葉の呼び名として並べて示すにとどめ、語源の系譜については断定しない。複数の表記に出会ったときは、学名の表示があるかどうかを確認する方が確実である。

インドの「ベイリーフ」=テジパットは別の植物

Spices Boardが別の品目頁として扱う

インド商工省の香辛料局(Spices Board India)は、Bay LeafとTejpatをそれぞれ独立した品目頁として公開している[3][6]。Bay Leafの頁は植物をLaurus nobilis L.と記し、原産地を地中海とし、インドでは商業作物として栽培されていないと明記する[6]。一方Tejpatの頁は、学名をCinnamomum tamalaとし、科名をクスノキ科(Lauraceae)と記す[3]。同じ香辛料局の品目頁が別々に立てられていること自体が、2種が別の植物として扱われている根拠になる。

両者の違いは次のように整理できる。

項目Bay LeafTejpat
学名Laurus nobilis L.[1][6]Cinnamomum tamala[3]
科名—Lauraceae(クスノキ科)[3]
原産地地中海[6]—
インドでの商業栽培栽培されていない[6]—
味・香りの特徴繊細で芳香性、苦味あり[7]クローブに似た味、かすかに胡椒に似た香り[3]

テジパットは「インディアン・カシア」とも呼ばれる

Spices BoardのTejpatの頁は、この香辛料を「Indian Cassia」とも呼ぶと記し、葉の味をクローブに似た味、香りをかすかに胡椒に似た香りと説明する[3]。USDA ARSのGRIN-GlobalでCinnamomum tamalaの頁を確認すると、英名としてIndian-barkとIndian-cassiaが、インドでの呼び名としてtejpatが載っている[4]。Cinnamomum(ニッケイ属)の樹皮であるシナモン・カシアについては別記事で扱う。

Codex情報文書の品目一覧でも別番号で並ぶ

Codex Alimentarius(国際食品規格委員会)の香辛料・料理用ハーブ部会(CCSCH)が公開する情報文書は、規格の標準的な書式を定めるための文書であり、付録には、網羅的ではないと断ったうえでの品目の一覧が付く[5]。この一覧の乾燥葉の群には、69番にBay Leaf(Laurus nobilis)、73番にTejpat (Indian Bay)(Cinnamomum tamala)が、別の番号で記載されている[5]。この文書自体はCodex規格そのものではなく書式の参考情報にとどまるが、BayとTejpatが別の品目として扱われている点は、インドの香辛料局の分類と一致する。

葉の見た目と香りの見分け方

手にした葉は、色・脈・寸法・香りの順に確かめるベイリーフの葉を見分ける手がかりを、表と裏の色、中央の脈、大きさと形、砕いた葉の香りと味の順に並べた図。着眼点手にした葉は、色・脈・寸法・香りの順に確かめるインドの香辛料局がBay Leaf(Laurus nobilis L.)の葉について記す特徴。01表と裏の色表面はつやのあるオリーブグリーン。裏面はくすんだオリーブ色から茶色02中央の脈中央の脈が目立つ03大きさと形長さ2.5〜7.5cm・幅1.6〜2.5cm。両端が細くなる楕円形04砕いた葉の香りと味香りは繊細で芳香性、味は香り高く苦味があるテジパットの葉はクローブに似た味、かすかに胡椒に似た香りと記される。同じ香辛料局がTejpat(Cinnamomum tamala)の頁に記す、別の言葉である。出典: Spices Board India「Bay Leaf」品目頁(葉の外見と香り)/Spices Board India「Tejpat」品目頁図解:ajimuse.com

ベイリーフの葉の外見

Spices BoardのBay Leafの頁は、葉の表面をつやのあるオリーブグリーン、裏面をくすんだオリーブ色から茶色で、中央の脈が目立つと記す[7]。葉の大きさは長さ2.5〜7.5cm・幅1.6〜2.5cmで、形は両端が細くなる楕円形とされる[7]。輸入食材店で手にした葉がこの寸法と色の範囲に収まるかどうかは、植物を見分ける手がかりの一つになる。

香りと味の記述

同じ頁は、砕いた葉の香りをdelicate(繊細)でfragrant(芳香性)、味をaromatic(香り高い)でbitter(苦味がある)と記す[7]。この記述は砕いた葉についてのものである。

テジパットの味と香り

Tejpatの頁は葉の味をクローブに似た味(clove like taste)、香りをかすかに胡椒に似た香り(faintly pepper like odour)と記す[3]。Bay Leafの頁の「delicate & fragrant」とは異なる言葉で表現されている[7]。ただし両者を実際に並べて比較した出典は確認できていないため、各頁の記述を並べて示すにとどめる。

乾燥ローリエの国際規格と調達規格

ローレルの国際規格は、1984年の版から2004年の版に替わったローレルの国際規格ISO 6576が、1984年5月発行の第1版から2004年7月発行のISO 6576:2004へ替わったことを2期で示した年表。年表ローレルの国際規格は、1984年の版から2004年の版に替わった題名の語は「pounded」から「ground」に変わっている。1984年5月ISO 6576 第1版題名は「Whole and pounded leaves」。現在は Withdrawn(撤回済み)2004年7月ISO 6576:2004題名は「Whole and ground leaves」。状態は Published、段階は International Standard confirmed新しい版規格の対象卸売り向けのローレル(全形および粉砕した葉)についての要件を定める。保管・輸送条件についての勧告も含む。出典: ISO 6576:2004「Laurel (Laurus nobilis L.) — Whole and ground leaves — Specification」/ISO 6576:1984「Laurel (Laurusnobilis Linnaeus) — Whole and pounded leaves — Specification」図解:ajimuse.com

ISO 6576:2004が定める全形と粉砕の葉

国際標準化機構(ISO)が定めるISO 6576:2004「Laurel (Laurus nobilis L.) — Whole and ground leaves — Specification」は、卸売り向けのローレル(全形および粉砕した葉)についての要件を定める規格である[8]。発行日は2004年7月で、頁の状態は「Published」、段階は「International Standard confirmed」と記されている[8]。保管・輸送条件についての勧告も含まれるが、具体的な数値は今回確認した範囲には現れない。

1984年版からの変遷

ISO 6576には1984年5月発行の第1版があり、題名は「Whole and pounded leaves」だった[9]。この第1版は現在「Withdrawn(撤回済み)」とされ、新しい版としてISO 6576:2004が案内されている[9]。題名の語がpoundedからgroundに変わった経緯について、規格の頁には理由の記載がないため、本記事でも理由には触れない。

米国調達規格A-A-20001Cの表Iの数値

米国農務省農業販売サービス局(USDA AMS)が定める商業品目記述A-A-20001C「Spices and Spice Blends」は、政府調達向けの仕様書である[10]。表Iのうち「Bay Leaves」の行には次の数値が並ぶ。

  • 水分(Moisture)上限:9.0%
  • 精油(Volatile Oil)下限:1.0%
  • 総灰分(Total Ash)上限:4.5%
  • 酸不溶性灰分(Acid Insoluble Ash)上限:1.0%
  • ふるい通過(Pass Through Particle Size)下限:95%(30番ふるい)[10]

同じ表にはAllspice・Anise Seed・Basilなど他の香辛料の行も並ぶが、本記事で扱うのはBay Leavesの行の数値だけであり、隣接する行の値は混同しない[10]。これは米国政府の調達仕様に定められた数値であって、市販品一般に適用される法定基準ではない。

香りの成分と料理での使い方

査読論文が同定した55成分

2017年に発表された査読論文は、ローリエの葉から得た精油をガスクロマトグラフィー(GC)とGC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)で分析し、55種類の成分を同定したと報告する[11]。これらの成分は精油全体の91.6%を占め、主成分として1,8-シネオールが31.9%、サビネンが12.2%、リナロールが10.2%を占めると報告されている[11]。これらの数値はこの研究で使用した試料についての値であり、市販のローリエすべてに当てはまる一般的な比率として読むべきではない。

この論文は精油の抗菌・抗真菌活性や細胞への影響についても検討しているが[11]、本記事は成分の組成にとどめ、薬効や健康効果についての記述は扱わない。

Spices Boardが示す料理での使い方

Spices BoardのBay Leafの頁は、この香辛料がスープ・シチュー・肉・魚・ソース、菓子の香り付けに使われると記す[6]。煮込みに使う具体的な枚数や取り出すタイミングについての数値は、この頁には記載がない。

乾燥ローリエを扱う際の目安は別記事で

乾燥した葉を煮込み料理に使う際の具体的な目安や、ブーケガルニとして他のハーブと組み合わせる方法については、乾燥ハーブを扱う記事に委ねる。ニッケイ属の樹皮であるシナモン・カシアについては、シナモンとカシアを扱う記事に委ねる。

結論

学名と産地表示で確かめる

連邦規則のBay、GRINが載せるlaurel・sweet bay・laurier・月桂は、いずれも学名Laurus nobilis L.で示される同じ植物の呼び名である[1][2]。一方、輸入食材のパッケージに書かれた「ベイリーフ」が学名Cinnamomum tamalaのテジパットを指している場合、それは属の異なる別の植物である[3][4]。パッケージに学名の表示がある場合は、そこがLaurus nobilisかCinnamomum tamalaかを確認することが、最も確実な見分け方になる。

輸入食材店で確認したい点

乾燥した葉を購入する際は、表面のつやのあるオリーブグリーンと裏面のくすんだ色合い、中央の脈の目立ち方、長さ2.5〜7.5cmという寸法を手がかりにできる[7]。インドの香辛料局は、Laurus nobilisがインドでは商業作物として栽培されていないと明記している[6]。ただし、インド料理のレシピに書かれたbay leafが常にテジパットを指すとまでは、今回確認した出典からは言えず、学名や産地の表示を一つずつ確かめる以外に確実な方法はない。

参考文献

  1. 米国連邦規則集 21 CFR 182.10「Spices and other natural seasonings and flavorings」
    https://www.ecfr.gov/current/title-21/section-182.10
  2. USDA ARS GRIN-Global「Laurus nobilis L.」
    https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxon/taxonomydetail?id=21664
  3. Spices Board India「Tejpat」品目頁
    https://www.indianspices.com/spice-catalog/tejpat.html
  4. USDA ARS GRIN-Global「Cinnamomum tamala (Buch.-Ham.) T. Nees & Eberm.」
    https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxon/taxonomydetail?id=400140
  5. Codex 香辛料・料理用ハーブ部会(CCSCH)情報文書「規格の標準レイアウト」付録 I
    https://www.fao.org/fileadmin/user_upload/codexalimentarius/committee/docs/CCSCH_InfDoc_ST_e.pdf
  6. Spices Board India「Bay Leaf」品目頁(原産・栽培と用途)
    https://www.indianspices.com/spice-catalog/bay-leaf.html
  7. Spices Board India「Bay Leaf」品目頁(葉の外見と香り)
    https://www.indianspices.com/spice-catalog/bay-leaf.html
  8. ISO 6576:2004「Laurel (Laurus nobilis L.) — Whole and ground leaves — Specification」
    https://www.iso.org/standard/39016.html
  9. ISO 6576:1984「Laurel (Laurus nobilis Linnaeus) — Whole and pounded leaves — Specification」
    https://www.iso.org/standard/12980.html
  10. USDA AMS「Commercial Item Description A-A-20001C: Spices and Spice Blends」
    https://www.ams.usda.gov/sites/default/files/media/CID Spices and Spice Blends.pdf
  11. 査読論文「Laurus nobilis: Composition of Essential Oil and Its Biological Activities」(PMC6152719)
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6152719/

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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