日本の魚醤図鑑|しょっつる・いしる・いかなご醤油

日本の魚醤図鑑|しょっつる・いしる・いかなご醤油

しょっつるとは、秋田県で魚(主にハタハタ)を塩と共に漬け込み、自己消化酵素と微生物の働きで発酵させた魚醤である。日本には秋田のしょっつる、石川県能登のいしる、香川県のいかなご醤油という三大魚醤があり、それぞれ原料魚と製法が異なる。農林水産省「うちの郷土料理」も、いしるを秋田のしょっつる・香川のいかなご醤油と並ぶ「日本三大魚醤」の一つと紹介しており[9]、地域の気候・漁獲資源・食文化と結びついて発展してきた。魚醤は国際的にはFAO/WHO合同食品規格計画(Codex Alimentarius)で品目規格CXS 302-2011として定義され[2]、世界各地の発酵調味料の一類型として位置づけられる。日本の魚醤は東南アジアのナンプラーやニョクマムと同じ発酵原理を持ちながら、使用魚種と熟成期間に独自性を持つ。

この記事の結論
  • しょっつるは、秋田県で主にハタハタを塩と漬け込み、魚自身の消化酵素と微生物で発酵させた魚醤である。
  • 基本は魚と塩だけで、塩は原料魚に対して30%、常温で2年以上かけて熟成させる。
  • 食塩相当量は成分表で100gあたり24.3gと、こいくち醤油の14.5gより高いので、少量から使う。
日本三大魚醤の産地と原料秋田のしょっつる、能登のいしる、香川のいかなご醤油という日本三大魚醤を、産地・原料魚・郷土料理で整理した図。東南アジアの魚醤との違いも示す。対比日本三大魚醤の産地と原料秋田・能登・香川。土地の魚を塩で発酵させた、郷土色の濃い魚醤たち。しょっつる(塩魚汁)いしる(いしり)いかなご醤油産地秋田県(東北・日本海側)石川県・能登半島香川県・瀬戸内原料魚ハタハタイワシ・イカイカナゴ造り冬に獲れるハタハタを塩で漬け込み発酵・熟成させる。イワシを使う「いしる」と、イカの内臓を使う「いしり」がある。瀬戸内で獲れるイカナゴを原料とする、かつて途絶え復活した魚醤。郷土料理しょっつる鍋(ハタハタと野菜の鍋)いしる貝焼き・干物の味付け。大豆醤油の代わりに使われた。味わい澄んだ塩味とうま味が特徴。濃厚でコクのある味わい。まろやかで上品なうま味。東南アジアの魚醤との違い日本の魚醤は生産量が少なく郷土料理に根ざす「地の調味料」。日常的に大量消費されるナンプラー等とは位置づけが異なる。※「三大魚醤」は代表的な呼び方。ほかにも各地に魚醤が伝わる。出典: 農林水産省「うちの郷土料理」/Codex Alimentarius(FAO/WHO)/日本醸造協会誌 88(2)図解:ajimuse.com

この記事は「世界の魚醤 完全ガイド|ナンプラーからガルムまで、国際規格で読む」の各論です。

この料理、塩分はどれくらい?使った調味料と量から食塩相当量の合計を計算。WHO・厚労省の1日目標と比べられる「塩分計算ツール」。塩分を計算する →
目次

日本三大魚醤の地理的分布と歴史的背景

日本の魚醤は秋田県、石川県能登地方、香川県の三地域で発達した。これらの地域は冬季の厳しい気候と豊富な漁獲資源という共通点を持ち、魚の保存と調味料の確保という実用的な必要から魚醤文化が生まれた。しょっつるは、醤油が高級品だった時代にその代わりの調味料として編み出されたとされ、しょっつる鍋の発祥の地は男鹿と伝えられる[8]。いしるは能登半島の漁村で真イワシやイカの内臓を活用する形で発展し、漁師の家庭で自家製造されてきた歴史を持つ。いかなご醤油は瀬戸内海のイカナゴ漁に依存し、春の漁期に合わせて仕込まれる季節性の強い調味料である。

農林水産省「うちの郷土料理」には秋田県のしょっつる鍋と石川県のいしる鍋が収録され[8][9]、魚醤が土地の鍋料理と一体で記録されている。製造技術は各地で家庭から商業生産へと移行し、現在では地域の中小醸造業者が伝統製法を継承している。しょっつるは昭和に入ったころ25社が造っていたとされるが、2017年の秋田県総合食品研究センターの報告では県内で10社に満たず、製造量は年70トン程度と推定されている[3]。いしるは逆に伸びており、1985年頃に年30トン程度だった製造量が、2016年には約20の事業者で年間約200トンになった[4]。いかなご醤油は1955年ごろを境に家庭で造られなくなって一度姿を消し、のちに小豆島の醤油会社が伝聞をもとに製法を復元した[6]。能登では2017年に13の生産者が「能登のいしり・いしる生産者協議会」を設立し、品質向上とブランド化に動き出した[7]。

各魚醤の地域的特性と製造規模

魚醤名主産地主原料熟成期間仕込みの食塩(原料魚に対する割合)造り手と製造量
しょっつる秋田県ハタハタ常温で2年以上[3]30%[3]10社に満たない・年70トン程度(2017年報告)[3]
いしる石川県能登真イワシ・イカ内臓1年以上(一般に1〜3年)[4][5]20〜22%程度[5]約20事業者・年約200トン(2016年)[4]
いかなご醤油香川県イカナゴ30℃前後で6か月以上[6]約33%(いかなご3に食塩1)[6]一度途絶え、小豆島で復元[6]

地域ごとの製造規模は原料魚の漁獲量に直接影響される。秋田県のハタハタ漁獲量は最盛期の1966年に2万トンを超えたが、1991年にはわずか72トンまで落ち込んだ[12]。秋田県では1992年9月から1995年9月まで、3年間の全面禁漁が行われた[11]。この間、しょっつるの生産量は大幅に減少し、製造業者はイワシやサバを使った製品も手がけた。もともと、ハタハタが足りないときにはイワシもよく使われてきた[6]。能登のいしるは、昭和50年代に20トン程度だった年間生産量が2010年の聞き取りでは250トン程度と、40年あまりで10倍になった[5]。香川県のイカナゴ漁は1月から5月にかけてで、いかなご醤油は春先に獲れた新鮮なものを仕込む[6]。

製造技術の継承と品質管理

日本の魚醤製造は伝統的に木桶や陶器の甕を使用してきたが、現代では衛生管理の観点からステンレス製やFRP製のタンクも導入されている。発酵過程では魚の自己消化酵素(プロテアーゼ)が魚肉のたんぱく質をアミノ酸に分解し、同時に好塩性の乳酸菌や酵母が増殖して風味を形成する。しょっつるの基本は魚と塩だけで、魚自身の消化酵素が分解を進める[3]。ただし、原料の10〜20%にあたる麹を加える造り方もあると報告されている[6]。この点で魚醤は醤油や味噌とは異なる発酵メカニズムを持つ。

造り手が気を配るのは温度よりも塩の行き渡り方である。しょっつるは常温のまま特に温度を制御せず、塩分にむらができて薄い部分から腐敗しないよう定期的にかき混ぜる[3]。秋田では冬の低温で分解がほとんど進まない時期があるとみられ、仕上がりはその年の気候にも左右される[3]。能登のいしるは気温の高すぎない春先や秋口に漬け込み、塩がなじんだあとは夏の暑さを越させて自己消化を進める[5]。

原料魚と製法の違いが生む風味の多様性

味の濃さで見る日本三大魚醤しょっつる・いかなご醤油・いしるを、澄んで軽い味から濃厚・コク深い味までの1本の軸に並べた図。段階味の濃さで見る日本三大魚醤同じ魚醤でも産地ごとに味の方向が分かれる。澄んで軽い濃厚・コク深いしょっつる秋田・ハタハタいかなご醤油香川・まろやかいしる能登・イワシ/イカ出典: 各県の郷土食資料・本文解説に基づきAJIMUSE Lab が整理。位置は味の傾向の目安。図解:ajimuse.com

しょっつる、いしる、いかなご醤油は原料魚の違いにより、風味プロファイルが大きく異なる。しょっつるはハタハタの白身魚特有の淡白なうま味と、やや甘みを帯びた香りを持つ。ハタハタは脂肪含量が少なく、発酵後も透明感のある琥珀色の液体が得られる。いしるは真イワシの青魚特有の濃厚な風味と、イカ内臓由来の複雑なコクを持つ。イワシは脂肪とたんぱく質が豊富で、発酵過程で強いうま味成分(グルタミン酸)が生成される。いかなご醤油はイカナゴの小魚を丸ごと使用するため、内臓由来の苦味と独特の磯の香りが特徴である。

製法の基本は共通しており、魚と塩を重量比で魚100に対し塩20〜30の割合(いしるは20〜22%程度[5]、しょっつるは30%が基本[3])で混合し、密閉容器に入れて常温で発酵させる。発酵初期には魚肉が塩の浸透圧で脱水され、魚の内臓に含まれる消化酵素がたんぱく質を分解し始める。数週間後には液体が分離し、この液体中で乳酸菌や酵母が増殖する。発酵が進むにつれて魚肉は完全に溶解し、アミノ酸濃度が上昇する。最終的に固形物を濾過して得られる液体が魚醤である。

発酵過程の科学的メカニズム

魚醤の発酵では、魚の内臓に含まれるプロテアーゼ(たんぱく質分解酵素)が最も重要な役割を果たす。プロテアーゼは魚肉のたんぱく質をペプチドに、さらにアミノ酸に分解する。この過程で生成されるグルタミン酸はうま味の主成分であり、魚醤の風味の核となる。多くの魚醤は麹菌や種菌を加えず、魚の自己消化酵素を頼りに造られる[3]。このため、発酵環境(温度・湿度・微生物相)が製品の風味に大きく影響する。

発酵中期から後期にかけて、好塩性の乳酸菌が増殖し、乳酸を生成する。乳酸は魚醤に酸味を与え、同時にpHを低下させることで腐敗菌の増殖を抑制する。酵母も増殖し、アルコールやエステル類を生成して香りに複雑さを加える。発酵後期には、これらの微生物の代謝産物が相互作用し、魚醤特有の深い風味が形成される。

製造工程の比較

項目内容
しょっつる原料魚を丸ごと使い、魚に対して30%の食塩をまぶす。常温で2年以上かけて分解・熟成させ、煮沸してから濾布などで濾過する[3]。
いしるイワシは頭も内臓も除かず丸ごと、イカはスルメイカの加工で出る肝臓だけを使い、それぞれ別の魚醤になる。原料に対し20〜22%程度の食塩を加え、熟成は一般に1〜3年。イカの肝臓を原料にする魚醤は世界的にも極めて珍しい[5]。
いかなご醤油復元された製法では、春先のイカナゴ3に対し食塩1を、塩と魚を層に重ねて仕込む。30℃前後で6か月以上熟成させ、食塩濃度は約28〜29%と飽和に近い。色は淡口醤油よりも淡い[6]。

発酵期間の違いは風味の濃淡に直結する。熟成を長くとるほどアミノ酸濃度が高まり、濃厚で複雑な風味になる。短く仕上げれば、原料魚の新鮮な風味が残る。製造業者は市場の需要と原料魚の供給状況に応じて、発酵期間を調整している。

郷土料理における魚醤の役割と調理法

日本の魚醤は地域の郷土料理に不可欠な調味料として使用されてきた。農林水産省「うちの郷土料理」には、秋田県のしょっつる鍋や石川県のいしる鍋が収録されており[8][9]、これらの料理は魚醤の風味を最大限に活用する調理法を示している。しょっつる鍋は秋田県の冬季の代表的な鍋料理で、ハタハタ、白菜、豆腐、ネギなどを出汁で煮て、しょっつるで味付けする。しょっつるの淡白なうま味が魚と野菜の風味を引き立て、塩分濃度が高いため少量で十分な味付けができる。

いしるの貝焼きは能登地方の伝統料理で、ホタテの貝殻を鍋の代わりにして、野菜やイカなどをいしるで煮ながら食べる[4]。なかでもナスや大根との相性がよいとされる[5]。いしるは焼き物だけでなく、煮物や炒め物にも使用され、能登地方では醤油の代替調味料として日常的に使われてきた。いかなご醤油は、香川県では戦後しばらくまで海岸部だけでなく内陸部でも食べられ、大豆醤油が統制されていた戦時中にもっともよく造られた[6]。うどんの出汁に少量加えて風味を補強する用途もある。ただし、しょっつる鍋やいしるの貝焼きにあたる専用の郷土料理は育たず、使い道が大豆醤油の代わりにとどまったことが一度姿を消した原因だと、復元にあたった醤油会社の技術者は書いている[6]。

魚醤を使った調理の実践的なポイント

魚醤は塩分が高く、食塩相当量は100gあたりしょっつる24.3g・いしる21.9gと、こいくち醤油(14.5g)を大きく上回る(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)。このため、調理では少量から加えて味を調整する必要がある。魚醤のうま味成分(グルタミン酸)は加熱により揮発しにくいため、煮物や鍋物では調理の早い段階で加えても風味が保たれる。一方、香りの成分(エステル類やアルコール類)は揮発しやすいため、仕上げに少量追加すると香りが立つ。

魚醤は酸味と塩味が強いため、甘味や油脂と組み合わせるとバランスが取れる。しょっつる鍋では豆腐や白菜の甘味が、いしるの貝焼きではナスや大根の甘味が、魚醤の塩味と酸味を和らげる。家庭で魚醤を使う際は、醤油の半量から試し、味を見ながら追加するとよい。魚醤は開封後も常温で保存できるが、直射日光を避け、冷暗所に置くと風味が長持ちする。

郷土料理以外の応用例

項目内容
炒め物野菜炒めや焼きそばに小さじ1杯加えると、深いうま味が加わる。
ドレッシングオリーブオイル、レモン汁、魚醤を混ぜて、サラダや刺身のドレッシングにする。
スープ味噌汁やラーメンのスープに少量加えると、コクが増す。
漬け物野菜を魚醤と酢で漬けると、発酵風味の漬け物ができる。

これらの応用は、魚醤のうま味成分が多様な食材と相性が良いことを示している。魚醤は和食に限らず、洋食や中華料理にも活用できる汎用性の高い調味料である。

東南アジア魚醤との比較と国際的な位置づけ

塩分は同じ水準、違うのは魚と寝かせ方しょっつる・いしる・ナンプラーを、食塩相当量・原料・熟成で並べた対比図。対比塩分は同じ水準、違うのは魚と寝かせ方日本の魚醤は低塩ではない。差が出るのは原料と、四季の気温を生かした熟成。しょっつるいしるナンプラー食塩相当量(100gあたり)24.3g21.9g22.9g原料ハタハタ。丸ごと使うイワシは丸ごと、イカは肝臓だけ。それぞれ別の魚醤になる主にカタクチイワシ熟成常温で2年以上一般に1〜3年。夏の暑さを越させる魚醤の国際規格では、発酵は一般に6か月以上国際規格と比べるとCodexの規格は発酵期間を「一般に6か月以上」とする。1年、2年と寝かせる日本の魚醤は、この目安よりかなり長い。※出典が裏づけるのは図の一部。ほかは本記事の本文の説明を整理したもの。出典: 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年/秋田県総合食品研究センター報告 Vol.19/日本海水学会誌 70(5)/CXS 302-2011 Standardfor Fish Sauce(FAO/WHO Codex Alimentarius)図解:ajimuse.com

日本の魚醤は東南アジアのナンプラー(タイ)、ニョクマム(ベトナム)、パティス(フィリピン)と同じ発酵原理を持つが、使用魚種と熟成期間に違いがある。ナンプラーとニョクマムは主にカタクチイワシを原料とする。塩分は日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の食塩相当量で100gあたりナンプラー22.9g・しょっつる24.3g・いしる21.9gと、日本の魚醤も東南アジアのものと同じ水準にある。日本の魚醤は原料魚が地域の漁獲資源に応じて多様である。

国際的には、魚醤はFAO/WHO合同食品規格計画(Codex Alimentarius)で品目規格CXS 302-2011として定義されている[2]。この規格では、魚醤を「魚と塩の混合物の発酵により得られる、半透明で濁りのない、塩味と魚の風味を持つ液状の製品」と定義し、化学的な要件として総窒素は原則1リットルあたり10g以上、アミノ酸態窒素は総窒素の40%以上、pHは伝統的な製品で5.0〜6.5、食塩は1リットルあたり200g以上と定め、ヒスタミンは100gあたり40mg以下としている。発酵期間は「一般に6か月以上」とされており、1年、2年と寝かせる日本の魚醤はこの目安よりかなり長い。

風味プロファイルの違い

東南アジアの魚醤は、濃厚で塩辛い風味を持つ。ナンプラーは透明感のある琥珀色で、強いうま味と塩味が特徴である。ニョクマムはやや濁りがあり、ナンプラーよりも複雑な風味を持つ。フィリピンのパティスは、国家規格が発酵の期間を数字で定めておらず、液が望ましい品質になるまで発酵させるとしている[10]。日本の魚醤は塩分こそ同じ水準だが、ハタハタ、イカの肝臓、イカナゴと土地ごとに原料が違い、その個性が風味に出る。しょっつるは淡白で繊細、いしるは濃厚で複雑、いかなご醤油はフレッシュで磯の香りが強い。

これらの違いは、使用する料理のスタイルにも影響する。東南アジアの魚醤は辛味や酸味の強い料理(トムヤムクン、フォー、アドボなど)に使用され、強い塩味と香りが料理全体を引き締める。日本の魚醤は和食の繊細な風味を損なわないよう、控えめに使用される。しょっつる鍋やいしる貝焼きは、魚醤の風味が主役となる料理であり、東南アジアの料理とは異なる調味料の使い方を示している。

製造技術の国際比較

特性日本の魚醤東南アジアの魚醤
主原料ハタハタ、イワシ、イカナゴカタクチイワシ
塩分(食塩相当量・100gあたり)しょっつる24.3g・いしる21.9gナンプラー22.9g
発酵期間6か月以上(いかなご醤油)から2年以上(しょっつる)まで[3][6]12〜18ヶ月
色琥珀色〜茶褐色琥珀色(透明)
風味淡白〜濃厚濃厚・塩辛い

日本の魚醤は地域ごとの原料魚の多様性が特徴であり、東南アジアの魚醤はカタクチイワシに特化した大量生産が主流である。日本の製造業者は小規模で伝統製法を守り、東南アジアでは工業的な大量生産が行われている。この違いは、魚醤の市場規模と消費文化の違いを反映している。東南アジアでは魚醤が日常の基本調味料であり、年間消費量は一人当たり数リットルに達する。日本では魚醤は特定の郷土料理に使用される特殊な調味料であり、消費量は限定的である。

結論

日本の三大魚醤(しょっつる、いしる、いかなご醤油)は、地域の漁獲資源と気候条件に適応して発展した発酵調味料であり、農林水産省「うちの郷土料理」にもしょっつる鍋やいしる鍋として記録される郷土食文化の重要な要素である[1][8][9]。これらは東南アジアの魚醤と同じ発酵原理を共有しながら、原料魚の多様性と、四季の気温を生かした長い熟成により、独自の風味プロファイルを形成している。国際的にはCodex Alimentariusの品目規格が魚醤を定義しており[2]、発酵は魚自身の消化酵素と環境中の微生物によって進む。

魚醤の製造は原料魚の漁獲量に直接依存するため、資源管理と持続可能な漁業が製造業者の存続に不可欠である。秋田のハタハタ漁は3年間の全面禁漁を経て再開されたが、イカナゴやイワシの漁獲量は気候変動や海洋環境の変化により変動している。製造業者は原料魚の安定確保のため、漁協や自治体と連携し、資源管理に協力している。

家庭で魚醤を使う際は、塩分濃度の高さを考慮し、少量から味を調整するとよい。魚醤のうま味成分(グルタミン酸)は多様な食材と相性が良く、郷土料理だけでなく、炒め物、スープ、ドレッシングなど幅広い用途に活用できる。輸入食材店やオンラインショップで入手可能な日本の魚醤を試し、地域ごとの風味の違いを体験することは、日本の発酵文化を理解する具体的な一歩となる。

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参考文献

  1. 農林水産省「うちの郷土料理」
    https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/
  2. CXS 302-2011 Standard for Fish Sauce(FAO/WHO Codex Alimentarius)
    https://www.fao.org/input/download/standards/11796/CXS_302e.pdf
  3. 塚本研一・杉本勇人「しょっつるの製造技術改良と用途開発研究」秋田県総合食品研究センター報告 Vol.19, 49-56(2017)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/arif/2017/19/2017_49/_pdf
  4. 地理的表示産品情報発信サイト「いしり/いしる」(地理的表示 登録番号146・2024年3月27日登録)
    https://pd.jgic.jp/register/entry/146.html
  5. 森真由美・小栁喬「石川県能登の魚醤油『いしる』」日本海水学会誌 70(5), 295-302(2016)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/swsj/70/5/70_295/_pdf
  6. 佐藤正美「魚醤(瀬戸の魚醤油,いかなご醤油について)」日本醸造協会誌 88(2), 135-139(1993)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/88/2/88_2_135/_pdf
  7. 石川県 奥能登農林総合事務所「能登のいしり・いしる生産者協議会が発足」(2017年10月24日更新)
    https://www.pref.ishikawa.lg.jp/wajimanourin/tp171023-1.html
  8. 農林水産省「うちの郷土料理」しょっつる鍋 秋田県
    https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/29_23_akita.html
  9. 農林水産省「うちの郷土料理」いしる鍋 石川県
    https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/ishirunabe_ishikawa.html
  10. Philippine National Standard PNS/FDA 38:2015「Fish sauce (Patis) and fish flavoured sauce – Specifications」(Food and Drug Administration Philippines)
    https://www.fda.gov.ph/wp-content/uploads/2024/02/PNS-FDA-38-2015-Fish-sauce-Patis-and-fish-flavored-sauce.pdf
  11. 秋田県「秋田県のハタハタ漁獲量と漁獲枠」(美の国あきたネット掲載資料)
    https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000008904_00/aHGS2703.pdf
  12. 秋田県 美の国あきたネット「今年も・・・ハタハタきたどぉ~!」(2006-01-12 更新・Wayback Machine 2026-04-16 保存版)
    https://web.archive.org/web/20260416212405/https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/726

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AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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