オリーブオイル完全ガイド|IOC規格で読む等級のすべて

オリーブオイル完全ガイド|IOC規格で読む等級のすべて

オリーブオイルの等級は国際オリーブ理事会(IOC)が定める基準で、エクストラバージンは遊離酸度0.8%以下かつ官能検査で欠陥ゼロ、バージンは酸度2.0%以下という明確な閾値で区別される[1]。日本のスーパーに並ぶ「ピュア」表示の製品は精製油とバージン油の混合であり、IOC規格では存在しない呼称だ。輸入食材店で複数の等級を見比べたとき、ラベルの「Extra Virgin」と「Pure」が何を意味するか分からず迷った経験は多くの人にあるだろう。IOC規格の等級体系と日本のJAS表示の違い、味の見方までを一次情報で整理する。

オリーブオイルの等級ピラミッド(IOC国際規格) IOC規格の等級を上から順に、エクストラバージン・バージン・オリーブオイル(通称ピュア)・ポマースオイルの4段で示した図。上2段は機械搾油のみのバージン系、下2段は精製油ブレンド系。 オリーブオイルの等級ピラミッド IOC(国際オリーブ理事会)の国際規格。等級は遊離酸度と官能検査で決まる。 機械的搾油のみ(バージン系)— 上ほど高品質・高価格 エクストラバージン 遊離酸度0.8%以下+官能検査で欠陥ゼロ バージン 遊離酸度2.0%以下・軽微な欠陥は許容 ▼ 欠陥が多いランパンテ(食用不可)は化学精製し、バージンを混ぜて下段の製品に オリーブオイル(通称ピュア) 精製オリーブオイルにバージンをブレンド(比率の規格は無い) オリーブポマースオイル 搾りかすを溶剤抽出・精製したブレンド油(用途は規格の定めではない) ※「ピュア」はIOC規格・JASいずれにも無い商業呼称。正式名称は「オリーブオイル」(精製油+バージンのブレンド)。 出典: 国際オリーブ理事会(IOC)オリーブ油貿易規格 図解:ajimuse.com
目次

オリーブオイルの等級体系(IOC国際規格)

国際オリーブ理事会(International Olive Council, IOC)は、オリーブ油の国際規格を定める政府間機関である[1]。加盟国は主に地中海沿岸の生産国で構成され、貿易における品質基準と等級分類を統一している。IOC規格では、オリーブオイルを製法と品質指標によって大きく「バージンオリーブオイル」と「精製オリーブオイル」に分け、さらにバージンを酸度と官能検査の結果で細分化する。

バージンオリーブオイルの定義

バージンオリーブオイルは、オリーブ果実を機械的または物理的手段のみで搾油し、洗浄・デカンテーション・遠心分離・濾過以外の処理を加えていない油脂を指す[1]。化学溶剤による抽出や精製工程を経ていないため、果実由来の香味成分とポリフェノールが保たれる。この定義に該当する油は、遊離酸度と官能評価の組み合わせで次の4等級に分類される。

等級遊離酸度(オレイン酸換算)官能検査の中央値用途
エクストラバージン0.8%以下欠陥ゼロ、フルーティ中央値>0生食・仕上げ
バージン2.0%以下欠陥中央値 0超〜3.5以下、フルーティ中央値>0加熱調理
オーディナリーバージン3.3%以下欠陥中央値 3.5超〜6.0以下そのまま食用可(小売可否は販売国の法令次第。EU・日本には区分が無い)
ランパンテバージン3.3%超または官能不合格欠陥中央値 6.0超精製原料・工業用

精製オリーブオイルと混合油

ランパンテバージンは酸度が高く風味に欠陥があるため、そのままでは食用に適さない。こうしたバージン油を精製して、ほぼ無味無臭の状態にしたものが「精製オリーブオイル(Refined Olive Oil)」である[1]。精製油が単体で小売されることは多くなく、通常はバージンオリーブオイルを一定割合ブレンドして風味を補い、「オリーブオイル(Olive Oil)」または「ピュアオリーブオイル」として流通する。IOC規格上の正式名称は「オリーブオイル」であり、「ピュア」は商業上の通称に過ぎない。

オリーブポマースオイル

搾油後の果肉・種子・皮からなる搾りかす(ポマース)を溶剤抽出し、精製した油を「精製オリーブポマースオイル」と呼ぶ。これにバージンオイルをブレンドしたものが「オリーブポマースオイル(Olive Pomace Oil)」として市場に出る[1]。ポマースオイルは揚げ物など高温調理向けに使われるが、IOC規格では明確に「オリーブオイル」とは区別され、ラベル表記も異なる。

エクストラバージン(酸度0.8%以下+官能検査)

エクストラバージンオリーブオイルは、IOC規格が定める最高等級であり、遊離酸度0.8%以下かつ官能検査で欠陥ゼロという二重の基準を満たす必要がある[1]。酸度は脂肪酸の加水分解によって生じる遊離脂肪酸の割合を示し、果実の鮮度と搾油工程の品質を反映する。官能検査は訓練を受けたパネリストが複数名で行い、カビ・発酵臭・酸敗などの欠陥属性と、フルーティ・苦味・辛味のポジティブ属性を評価する。

酸度0.8%の意味

遊離酸度はオレイン酸換算で表され、100gの油に含まれる遊離脂肪酸をオレイン酸のグラム数で示す。酸度が低いほど果実が新鮮な状態で搾油され、酵素による分解が抑えられたことを意味する。エクストラバージンの閾値0.8%は、果実の収穫から搾油までの時間が短く、温度管理が適切に行われた証である。一方、収穫後に放置された果実や過熟果を使うと酸度は上昇し、バージン等級以下に分類される。

官能検査の欠陥ゼロ基準

IOC規格の官能検査では、パネリストがプロフィールシート上の10 cmの尺度で欠陥属性(カビ臭・発酵臭・酸敗臭など)の強度を評価し、中央値を算出する[4]。エクストラバージンは欠陥中央値がゼロでなければならず、わずかでも異臭が検出されればバージン等級に格下げされる。同時にフルーティ属性の中央値がゼロより大きいことも求められ、オリーブ果実本来の香りが保たれていることを確認する。

コールドプレスとファーストプレス

「コールドプレス」は搾油時の温度を上げない製法を指し、熱による香味の劣化を防ぐ。この表示を数値で縛っているのはIOCの貿易規格ではなくEUの表示規則で、「first cold pressing(一次機械圧搾)」「cold extraction(低温抽出)」とも27℃未満で行うことを条件としている[3]。IOCの貿易規格自体には、この温度に関する規定は置かれていない。「ファーストプレス(First Pressed)」は一度も圧搾されていない果実から得た油を意味するが、現代の遠心分離式搾油機では「プレス」という物理動作が存在しないため、この表記は伝統的な圧搾機を使う小規模生産者に限られる。いずれもエクストラバージンの必須条件ではなく、あくまで酸度と官能検査の結果が等級を決定する。

バージン・精製・ピュアの違い

IOC規格では、バージンオリーブオイルと精製オリーブオイルは製法と品質指標で明確に区別される。バージンは機械的搾油のみで得られ、酸度と官能検査で等級が決まる。精製オリーブオイルは精製工程を経たほぼ無味無臭の油で、多くはバージンオイルとブレンドされて「オリーブオイル」として流通する。ただしIOC規格は、消費者への直接販売を、小売国が認めている場合に限って行えるとしている[1]

バージンオリーブオイルの位置づけ

バージンオリーブオイルは遊離酸度2.0%以下、官能検査で欠陥中央値が3.5以下(かつフルーティ中央値が0より大きい)という基準を満たす[1]。エクストラバージンに次ぐ等級であり、軽度の欠陥(わずかな発酵臭や酸化臭)が許容される。IOC規格上は「そのまま食用に適する」区分に入るが、香味は最高等級に劣るため、加熱調理に回されることが多い。日本の小売店で「バージンオリーブオイル」単体を見かけることは少なく、多くは精製油とのブレンド製品に置き換わっている。

精製オリーブオイルの製造工程

IOC規格は精製オリーブオイルを「バージンオリーブオイルを精製して得た油」と定義しており[1]、原料はランパンテに限られない(実際には食用に適さない等級が主に回される)。一般に脱色・脱臭・脱酸の工程を経るが、具体的な手法まで規格が定めているわけではない。この工程で遊離脂肪酸とポリフェノール、香味成分の大部分が除去され、遊離酸度0.30%以下・淡黄色の油になる[1]。製品にはバージンオイルがブレンドされて風味が補われるが、その比率を定めた規格は無い。IOCが規定しているのは、出来上がった「オリーブオイル」の遊離酸度が1.00%以下であることという結果の値である[1]

「ピュア」表記の実態

「ピュアオリーブオイル」と表示される製品は、精製オリーブオイルとバージンオリーブオイルの混合である。IOC規格では「オリーブオイル(Olive Oil)」が正式名称で、規格の全文に「Pure」という等級名は存在しない[1]。JASにもEUの表示規則にも同じく存在しない[2][3]。つまり「ピュア」は日本独自の呼称ではなく、どの規格にも根拠を持たない任意の商業表示で、米国でも同じ表示の製品が流通している。消費者は「ピュア=純粋」という語感から高品質を連想しがちだが、実際には精製工程を経た混合油であり、エクストラバージンとは製法も風味も異なる。

日本のJAS表示との違い(「ピュア」問題)

IOC国際規格と日本JASの違い オリーブオイルの等級について、IOC国際規格と日本のJAS規格を、EXV基準・ピュア表記・官能検査・枠組みの4項目で比較した表。 IOC国際規格 と 日本JAS の違い 「ピュア」表記や官能検査の扱いが両者で異なる。輸入品を読み解く鍵。 項目 IOC 国際規格 日本 JAS 規格 EXVの基準 酸度0.8%以下+官能検査が必須 JASにEV等級は無い(酸価等で判定) 「ピュア」表記 この名称は無い(正式はOlive Oil) JASにこの名称は無い(市場の慣用呼称) 品質の担保 官能検査で風味の欠陥を排除 等級制度ではなく適合/不適合の判定 枠組み 国際オリーブ理事会が基準を運用 日本はIOC非加盟・独自運用 出典: IOC(国際オリーブ理事会)貿易規格/食用オリーブ油のJAS(農林水産省)。 図解:ajimuse.com

日本では農林水産省が定める食用植物油脂のJAS(日本農林規格)が適用され、オリーブ油の品質基準と表示方法が規定されている[2]。JAS規格はIOC規格と部分的に整合するが、等級名称と表示ルールには独自の解釈が存在する。

JAS規格の等級分類

ここが誤解されやすいところだが、JASの食用オリーブ油の区分は「オリーブ油」(酸価2.0以下)と「精製オリーブ油」(酸価0.60以下)の2つだけである[2]。IOCのような多段の等級体系はJASには存在せず、「エキストラバージン」「バージン」「ピュア」という等級名も規格には出てこない。日本の店頭に並ぶ等級表示は、JASが定めたものではなくIOC規格由来の国際的な呼称である。また指標そのものが異なる。JASの酸価は遊離脂肪酸の中和に要する水酸化カリウムのmg数(mg KOH/g)で、IOCの遊離酸度はオレイン酸換算の重量%である。「酸価2.0」と「酸度2.0%」は同じ数字でも別の量であり、単純には対応しない。

「ピュア」表記の混乱

「ピュアオリーブオイル」はJASにもIOC規格にも存在しない名称で、精製オリーブ油にバージンオイルを混ぜた製品に対して慣用的に使われてきた呼び方である[1][2]。IOC規格では「オリーブオイル(Olive Oil)」が正式名称である。この呼び方は日本に限らず、米国でも「Pure Olive Oil」と表示された製品が流通しており、輸入品のラベルに「Pure」と印刷されていることがあるのはそのためである。いずれの規格でも正式名称は「Olive Oil」であり、「Pure」は等級を表さない。消費者は「ピュア=純度100%」と誤解しやすいが、実際には精製油主体の混合品である。

官能検査の有無

IOC規格ではエクストラバージンの認定に官能検査が必須である[1]。一方JASにはそもそもエクストラバージンという等級がなく、食用オリーブ油の適合判定は酸価などの理化学的な基準と一般状態(香味・清澄度)で行われる[2]。このため、酸価が基準を満たしていても風味に欠陥がある油が「エキストラバージンオリーブオイル」として流通する余地が残る。IOC非加盟国である日本では、輸入業者が独自に官能検査を実施するか、IOC加盟国の認証機関による検査結果を添付する形で品質を担保している。

味の見方(フルーティ・苦味・辛味)

エクストラバージンオリーブオイルの味は、フルーティ(fruity)・苦味(bitter)・辛味(pungent)の三要素で評価される[1]。これらはポリフェノール含量と品種、収穫時期によって変化し、料理への適性を左右する。

フルーティ属性

フルーティは、オリーブ果実由来の香りと風味を指す。青いトマトや草のような「グリーンフルーティ」と、熟した果実やナッツのような「ライプフルーティ」に分かれる[4]。早摘み果実を使ったオイルはグリーンフルーティが強く、完熟果を使ったオイルはライプフルーティが優勢になる。官能検査ではフルーティ中央値がゼロより大きいことがエクストラバージンの条件であり、無臭の油は等級外となる。

苦味と辛味の役割

苦味はオレウロペインなどのポリフェノールに由来する。辛味は喉の奥に感じるピリッとした刺激で、オレオカンタールというポリフェノールが原因とされる。苦味と辛味が強いオイルはポリフェノール含量が高い傾向にあるが、生食では料理の繊細な味を覆い隠す場合がある。逆に苦味・辛味が穏やかなオイルはデザートやマリネに向く。

品種と収穫時期の影響

イタリアのコラティーナ種は苦味と辛味が強く、スペインのアルベキーナ種は穏やかでナッツ様の風味を持つとされる(品種ごとの官能特性を定めた規格はなく、生産者や産地の説明に基づく)。同じ品種でも早摘みすればポリフェノール含量が高くなり、苦味・辛味が増す[1]。完熟収穫すると酸度は上がりやすいが、風味はまろやかになる。料理に合わせてオイルを選ぶ際は、ラベルに記載された品種と収穫時期、テイスティングノートを参考にするとよい。

テイスティングの基本

官能検査では、試料油を試験用グラスに入れて28±2 °Cに保ち、香りを確認したのち約3 mLを口に含んで舌全体に広げ、鼻へ抜ける香り・味・触感を評価する[4]。フルーティ・苦味・辛味の強度と欠陥属性(カビ・発酵・酸敗)の有無は、プロフィールシート上の10 cmの尺度に記入する[4]。家庭でも同様の手順で比較試飲すれば、等級表示と実際の風味の対応を体感できる。

結論

オリーブオイルの等級は、IOC規格が定める酸度と官能検査の二重基準で決まる。エクストラバージンは酸度0.8%以下かつ欠陥ゼロという最高等級であり、バージンは酸度2.0%以下で軽度の欠陥が許容される[1]。日本市場で「ピュア」と表示される製品は精製油とバージン油の混合であり、IOC規格の「オリーブオイル」に相当する[1]。ただしJASの適合判定は酸価などの理化学的な基準と一般状態(香味・清澄度)によるもので、IOCのような訓練パネルによる官能検査は求められない[2]。そのため消費者は原産国の認証マークや品種情報を手がかりに選ぶ必要がある。

フルーティ・苦味・辛味の三要素は、ポリフェノール含量と品種、収穫時期で変化し、料理への適性を左右する[1]。早摘み果実の青々しいオイルはグリルや仕上げに、完熟果のまろやかなオイルはマリネやデザートに向く。輸入食材店で複数の等級を見比べる際は、ラベルの酸度表記と原産地呼称(DOP/IGP)、収穫年を確認し、可能であれば試飲して風味を確かめるとよい。IOC規格と日本のJAS規格の違いを理解すれば、「ピュア」という曖昧な呼称に惑わされず、製法と品質指標に基づいて適切な一本を選べるようになる。

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参考文献

  1. International Olive Council「Trade Standard Applying to Olive Oils and Olive Pomace Oils」(遊離酸度: EV 0.8%以下・バージン2.0%以下・精製0.3%以下)
    https://www.internationaloliveoil.org/wp-content/uploads/2024/11/TRADE-STANDARD-REV-20_EN.pdf
  2. 食用植物油脂の日本農林規格(農林水産省)(食用オリーブ油の区分は「オリーブ油」酸価2.0以下・「精製オリーブ油」酸価0.60以下の2つ)
    https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-386.pdf
  3. Commission Delegated Regulation (EU) 2022/2104(オリーブ油の表示規則。first cold pressing/cold extraction は27℃未満)
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32022R2104
  4. International Olive Council, COI/T.20/Doc. No 15/Rev. 10 (2018) “Sensory analysis of olive oil — Method for the organoleptic assessment of virgin olive oil”(10 cmの尺度・試験温度28±2 °C・約3 mLの試飲)
    https://www.internationaloliveoil.org/wp-content/uploads/2019/11/COI-T20-Doc.-15-REV-10-2018-Eng.pdf

この記事を書いた人

世界の調味料を、現地の一次資料から読み解く編集部です。数字と固有名詞は本国の公的機関や規格で裏を取り、家庭で「あの国の味」を再現したい人に役立つ形にまとめます。

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