パセリの種類|カーリーとイタリアン、学名と規格で読む違い

パセリの種類|カーリーとイタリアン、学名と規格で読む違い

イタリアンパセリは、米国農務省GRINではパセリの学名 Petroselinum crispum の下に並ぶ区分の一つ(var. neapolitanum)であり、別の種としては置かれていない[2][3]。一方でCodexの品目一覧はcurly型とflat型に別の学名を当てており[4]、呼び方は資料によって揺れる。選ぶときは葉の形とこの学名表記の違いを知っておくと戸惑いにくい。

この記事の結論
  • 米国農務省の分類では、イタリアンパセリはパセリと同じ種に含まれる一つのタイプで、別の種ではない。
  • パセリはセリ科の植物で、葉の部分を料理用のハーブに使い、根は野菜として使うこともある。
  • 米国農務省の生パセリの等級規格は、カーリー型(縮れ葉)とフラット型(平らな葉)を混ぜてはいけない別の型として書いている。

この記事は「世界のスパイスの種類と産地|ISO命名で読む単一スパイス完全図鑑」の各論です。

目次

パセリとは

植物としての位置づけと原産地

パセリはセリ科(Apiaceae)の植物で、parsley あるいは garden parsley と呼ばれる[1]。EFSAのFEEDAPパネルが2023年にまとめた意見書によれば、原産地は地中海の中部から東部の地域であり、その後ヨーロッパをはじめとする各地に帰化したと記されている[1]。学名は Petroselinum crispum (Mill.) Fuss であり、この学名が以降のGRINやISOの記述とも共通する起点になる[1][2]。

料理での使われ方

同じ意見書は、植物の上部(apical parts)を料理用のハーブとして使い、根(parsley roots)は野菜として利用すると述べている[1]。つまりパセリという一つの植物の中に、葉を使う使い方と根を使う使い方の両方が存在する[1]。

カーリーとイタリアンは別の種か

GRINが示す一種の下の区分

米国農務省ARSのGRIN Taxonomyは、Petroselinum crispum (Mill.) Fuss という一つの種の下に、var. crispum・var. neapolitanum・var. radicosum・var. tuberosum という四つの区分(conspecific taxa、同じ種に属する分類群)を並べている[2]。次項で見るとおり、イタリアンパセリにあたるのはこのうちの var. neapolitanum であり、別の種ではなく同じ種の中の区分として置かれている[2][3]。ここで注意したいのは、var. neapolitanum には「nom. inval.」という注記が付いている点で、これは正式に発表された名ではないことを示す記号であり、この区分を「正式な変種名」と呼ぶのは正確ではない[2]。

var. neapolitanumという呼称の位置づけ

var. neapolitanum のページでは、英名が Italian parsley、フランス語名が persil grand de Naples、ドイツ語名が italienische Petersilie と記録されている[3]。つまりイタリアンパセリという呼び名は、GRINの分類体系のなかでは Petroselinum crispum var. neapolitanum という同じ種の区分に対応する英名として扱われている。一方で、var. crispum がカーリー型に対応するかどうかは、この記事が確認したGRINの記載の範囲では確かめられておらず、この対応をGRINを根拠に断定することはできない。カーリーという呼び名そのものの根拠は、後述するCodexの品目一覧の Parsley(curly) と、米国農務省の等級規格に書かれているcurly leaf typeという表現にある[4][6]。

var. radicosum と var. tuberosum

GRINの分類には var. radicosum と var. tuberosum も並んでいる[2]。この二つについては、英名や具体的な特徴をこの記事では確認していないため、同じ種の下に名前が並んでいることだけを書く。

GRINが一つの種の下に並べる区分は次の四つである。

  • var. crispum
  • var. neapolitanum(nom. inval. の注記付き、英名 Italian parsley)[2][3]
  • var. radicosum
  • var. tuberosum

文書によって学名の当て方が違う

同じ学名が、資料によって別の品目にも異名にもなるパセリの型と学名の当て方を、米国農務省のGRIN、Codexの部会の情報文書、ISO 20377:2018の概要頁の3つで並べた表。表同じ学名が、資料によって別の品目にも異名にもなるイタリアンパセリやflat型にどの名前を当てるかは、3つの資料で扱いが違う。資料当てている名前扱いGRIN(米国農務省ARS)Italian parsley=Petroselinum crispum var.neapolitanum一つの種の下に並ぶ区分。別の種ではないCodexの部会の情報文書(curly型)Parsley(curly)=Petroselinum crispum (Mill.)A.W.Hill品目一覧でcurly型に当てる学名Codexの部会の情報文書(flat型)Parsley (flat)=Petroselinum sativum Hook. &Gilliescurly型とは異なる学名を当てるISO 20377:2018の概要頁Petroselinum sativum は Petroselinumcrispum の synonym(異名)異名の一つとして扱う読み方Petroselinum sativum は、Codexの一覧ではflat型の学名、ISOの概要頁では異名。GRINの var. neapolitanum には「nom. inval.」(正式に発表された名ではない)の注記が付く。出典: USDA ARS, “GRIN Taxonomy: Petroselinum crispum (Mill.) Fuss var. neapolitanum Danert, nom. inval.”/Codex 香辛料・料理用ハーブ部会(CCSCH), “Information document – Standard template”/ISO, “ISO 20377:2018 Dried parsley (Petroselinumcrispum) — Specification”図解:ajimuse.com

Codexの情報文書が示す品目一覧

Codexの香辛料・料理用ハーブ部会(CCSCH)がまとめた情報文書は、規格(CXS)そのものではなく、部会が規格を作る際の雛形と品目一覧を整理した文書である[4]。この情報文書の一覧では、Parsley(curly) に Petroselinum crispum (Mill.) A.W.Hill、Parsley (flat) に Petroselinum sativum Hook. & Gillies という異なる学名が当てられている[4]。カーリー型とフラット型(平らな葉の型)に別の学名が割り当てられている点は、一つの種の下に区分を並べる前章のGRINの整理とは異なる扱いである[2][4]。なお、パセリの個別のCodex規格は、本記事が調べた範囲では見当たらなかった。

ISOが示すシノニムの扱い

ISO 20377:2018「Dried parsley (Petroselinum crispum) — Specification」の概要頁は、Petroselinum hortense・Petroselinum sativum・Apium petroselinum の三つを Petroselinum crispum の synonym(異名)として記載している[5]。つまりISOの概要頁では、Codexの一覧でflat型に当てられていた Petroselinum sativum という学名も、Petroselinum crispum の異名の一つとして扱われていることになる[4][5]。同じ学名が、ある文書ではcurly型とは別の品目の学名として、別の文書では異名として扱われている以上、「パセリの学名はこれ一つ」と単純化せずに、どの文書がどう書いているかを分けて見る必要がある。

生のパセリの取引では型を混ぜない

等級規格の用語の定義

米国農務省AMSが定める「United States Standards for Grades of Parsley」(2007年7月20日発効)の§51.4003は、similar varietal characteristics(類似の品種特性)という用語を、パセリが同じ一般的な型であることと定義している[6]。この規定の例として挙げられているのが、curly leaf type(カーリー型)をflat leaf type(フラット型)と混在させてはならないという取り扱いである[6]。つまりこの等級規格は、カーリー型とフラット型を、混ぜてはいけない別の型として書いている[6]。この用語が等級の要件のどこで使われているかまでは、この記事では確認していない。

乾燥パセリの規格

ISOが示す形状区分

ISO 20377:2018は、乾燥パセリの形状を whole(全形)・cut leaves(カットした葉)・rubbed (ground)(揉み砕いた形)の三つとして規定の対象にしている(概要頁で確認できる範囲)[5]。また概要頁は「dried parsley」という語に、人工的に乾燥させた dehydrated parsley を含むと説明している[5]。この記事が概要頁で確認できたのは対象と形状の区分までであり、具体的な数値基準は確認できていない。

米国の調達規格が定める水分基準

米国農務省AMSの調達規格 A-A-20001C(2023年8月28日付)の表Iは、Parsleyの水分(Moisture)上限を4.0%と定めている[7]。同じ表の精油(Volatile Oil)・灰分(Total Ash)・酸不溶性灰分(Acid Insoluble Ash)の列は横線(—)で値が置かれておらず、この四つの項目のうちParsleyに数値が置かれているのは水分の上限だけである[7]。

欧州業界規格ESAの基準値

European Spice Association(ESA)がまとめたQuality Minima Document(2015年10月27日採択、2018年3月26日確認)は、PARSLEYについて灰分14%以下、酸不溶性灰分1.5%以下、水分7.5%以下、精油Tracesという基準を示している[8]。同じ行には「English origin is not covered」(English origin のものは対象に含まれない)という注記が付いている[8]。米国の調達規格が示す水分4.0%とESAが示す水分7.5%は、数値だけを並べると差があるように見えるが、前者は政府調達の仕様、後者は業界団体がまとめた最低基準であり、目的の異なる文書を単純に優劣で比べることはできない[7][8]。

以上の三つの資料を整理すると、乾燥パセリの規格は次のようになる。

資料対象形状水分灰分酸不溶性灰分精油
ISO 20377:2018[5]whole/cut leaves/rubbed(ground)————
A-A-20001C(米国調達規格)[7]Parsley4.0%以下———
ESA Quality Minima Document[8]PARSLEY7.5%以下14%以下1.5%以下Traces
  • ISOの概要頁で確認できたのは対象と形状の区分までで、数値基準は確認できていない[5]
  • A-A-20001Cは水分・精油・灰分・酸不溶性灰分のうち水分の上限だけに数値を置き、精油・灰分・酸不溶性灰分の列は横線(—)で値が無い[7]
  • ESAは灰分・酸不溶性灰分・水分の三項目に数値を示し、精油は Traces とする。English origin は対象に含まれないと注記している[8]

使い方の入口

ソースとして使う場合

パセリを主役にするソースの作り方や保存については、チミチュリの記事にまとめがある。型・学名・規格の整理に絞り、調理手順は扱わない。

乾燥ハーブとして使う場合

乾燥ハーブ全体の使いどころや、ESAが示す精油の基準を他のハーブと比較する内容は、乾燥ハーブの記事で扱われている。パセリ単体の型・学名・規格を知った上で、乾燥ハーブとしての使い分けを知りたい場合はそちらを参照できる。

結論

イタリアンパセリは、GRINの分類ではパセリの学名 Petroselinum crispum の下に並ぶ区分の一つであり、別の種として切り分けられているわけではない[2][3]。ただしCodexの部会の情報文書の品目一覧はcurly型とflat型に異なる学名を当てており、ISOの概要頁はflat型に当てられた Petroselinum sativum を Petroselinum crispum の異名として挙げているため、どの文書を見ているかによって学名の表記は変わる[4][5]。生の状態で選ぶときは、米国農務省の等級規格がカーリー型とフラット型を混ぜてはいけない別の型として書いていることが目安になり、乾燥品を選ぶときは、水分や灰分の基準が資料ごとに異なる目的で定められている点を踏まえて表示を確認するとよい[6][7][8]。

参考文献

  1. EFSA FEEDAP Panel, “Safety and efficacy of a feed additive consisting of a tincture derived from the fruit of Petroselinum crispum (Mill.) Fuss (parsley tincture) for use in all animal species (FEFANA asbl)”
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9810835/
  2. USDA ARS, “GRIN Taxonomy: Petroselinum crispum (Mill.) Fuss”
    https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxon/taxonomydetail?id=27448
  3. USDA ARS, “GRIN Taxonomy: Petroselinum crispum (Mill.) Fuss var. neapolitanum Danert, nom. inval.”
    https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxon/taxonomydetail?id=409749
  4. Codex 香辛料・料理用ハーブ部会(CCSCH), “Information document – Standard template”
    https://www.fao.org/fileadmin/user_upload/codexalimentarius/committee/docs/CCSCH_InfDoc_ST_e.pdf
  5. ISO, “ISO 20377:2018 Dried parsley (Petroselinum crispum) — Specification”
    https://www.iso.org/standard/67852.html
  6. USDA AMS, “United States Standards for Grades of Parsley”
    https://www.ams.usda.gov/sites/default/files/media/Parsley_Standard[1].pdf
  7. USDA AMS, “Commercial Item Description A-A-20001C: Spices and Spice Blends”
    https://www.ams.usda.gov/sites/default/files/media/CID Spices and Spice Blends.pdf
  8. European Spice Association, “Quality Minima Document Rev. 5”
    https://www.esa-spices.org/media/attachments/2026/02/11/esa-quality-minima-document.pdf

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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