セージとは|ダルメシアンセージの名前と、ツヨンをめぐる規格の読み方

セージとは|ダルメシアンセージの名前と、ツヨンをめぐる規格の読み方

セージは、米国の連邦規則21 CFR 182.10の一覧がSageの行にSalvia officinalis L.という学名を載せるハーブで、同じ一覧は「Sage, Greek」という別の行にSalvia triloba L.という別の学名を載せている[1]。乾燥葉にはISO 11165:1995[4]、精油にはISO 9909:1997[3]という国際規格があり、精油の組成は産地や収穫期などによって大きく変わるとされる[7]。

この記事の結論
  • セージは地中海地域原産のハーブで、肉料理や魚料理の香り付け、家禽の詰め物に使われる。
  • 名前に「セージ」とあっても同じ植物とは限らず、米国の香辛料の一覧ではセージと別属の植物にもMexican sageの別名が載る。
  • 「ダルメシアンセージ」のダルマチアは、セージが野生する土地として挙げられる地方で、現在のクロアチアにある。

この記事は「世界のスパイスの種類と産地|ISO命名で読む単一スパイス完全図鑑」の各論です。

目次

セージという名前が指すもの

「セージ」と付く名前は、3つの別の学名を指す米国連邦規則21 CFR 182.10の一覧で、Sage、Sage, Greek、Mexican sageという3つの名前がそれぞれ別の学名に対応することを並べた図。並記「セージ」と付く名前は、3つの別の学名を指す米国の連邦規則21 CFR 182.10の一覧では、名前ごとに違う学名が載っている。SageSalvia officinalis L.一覧のSageの行に載る学名。Sage, GreekSalvia triloba L.別の行に、別の学名で載る。Mexican sageLippia spp.オレガノの項目に別名として挙がる。Salvia属ではなくLippia属。買うときは商品名にセージという語があっても、学名を確認しない限りSalvia officinalis L.と同じ植物とは限らない。出典: 米国連邦規則集 21 CFR 182.10「Spices and other natural seasonings and flavorings」(eCFR 現行版)図解:ajimuse.com

連邦規則が分ける「セージ」と「ギリシャセージ」

米国の連邦規則集21 CFR 182.10「Spices and other natural seasonings and flavorings」は、香辛料などの天然調味料・香料を学名つきで列挙する条文である。この一覧はSageの行にSalvia officinalis L.を、Sage, Greekの行にSalvia triloba L.を載せており、2つは別の学名を持つ別の行として扱われている[1]。ここで確認できるのは名称と学名の対応であり、味や香りの品質についての記述ではない。

名前に「セージ」が付く別の植物

同じ条文のオレガノの項目には、別名として「oreganum, Mexican oregano, Mexican sage, origan」が挙げられ、学名はLippia属(Lippia spp.)とされている[2]。つまりこの一覧では、Salvia属ではなくLippia属の植物にも「sage」という語を含む呼び名が当てられている。商品名にセージという語があっても、学名を確認しない限りSalvia officinalis L.と同じ植物とは限らない。

「ダルメシアンセージ」という呼び名とダルマチア地方

インド商工省香辛料局(Spices Board India)の品目頁(2015年11月18日更新)は、セージを地中海地域原産とし、ユーゴスラビア(Yugoslavia)のダルマチア地方に野生すると記す[11]。この国名は同頁の原文表記のままであり、現在の国名とは一致しない点に留意が必要である。査読論文は、クロアチアのダルマチア地方に自生する25集団のセージの精油組成を調べた先行研究を紹介している[9]。

ISO 9909:1997という精油の規格名

ISOには精油を対象とした規格ISO 9909:1997「Oil of Dalmatian sage (Salvia officinalis L.)」があり、1997年5月に発行された第1版で、状態は「Published」とされている[3]。公開されているISOの頁で読めるのは規格の題名・概要・発行状態までであり、精油の純度や成分比率といった数値基準そのものは、この頁からは確認できない。ここで確認できるのは、国際規格の題名に「Dalmatian sage」という語が入っているという点までである。

乾燥セージの規格

ISO 11165:1995が対象とする形状

ISO 11165:1995「Dried sage (Salvia officinalis L.) — Specification」は、全形またはカットの葉の形をした乾燥セージを対象とする規格である[4]。公開されている規格頁の情報は、発行日1995年10月、状態「Published」、段階「International Standard confirmed」、全3ページというところまでで、水分や灰分といった具体的な数値基準はこの頁からは読み取れない[4]。したがってISO 11165:1995については「対象の形状を定める規格である」とだけ言え、数値面の規定内容をISOに帰属させることはできない。

米国調達規格A-A-20001Cの表の数値

米国農務省農業販売サービス局(USDA AMS)の商品説明書A-A-20001C(2023年8月28日付)の表Iには、各香辛料ごとの数値基準が並ぶ。Sageの行に示された数値は「10.0 1.5 10.0 1.0 95 (20)」であり、表の列は左から水分の上限%・精油(Volatile Oil)の下限%・総灰分の上限%・酸不溶性灰分の上限%・ふるい通過の下限%(かっこ内はふるいの番号)の順に並ぶ[5]。この基準は連邦政府の調達仕様であり、市販される一般のセージ製品に適用される法定基準ではない。

項目Sageの基準値
水分 上限10.0%
精油(Volatile Oil) 下限1.5%
総灰分 上限10.0%
酸不溶性灰分 上限1.0%
ふるい通過(20番ふるい) 下限95%

出典: USDA AMS A-A-20001C 表I、Sageの行[5]。表中の数値は精油の単位も含め表の見出しどおり「%」で示し、ml/100gなど別単位には読み替えていない。隣接するローズマリーなど他の行の数値はここには含めない。

精油の成分とツヨンの化学型

欧州薬局方が定めるセージ葉の精油量

欧州医薬品庁(EMA)のハーブ製品委員会(HMPC)がまとめた評価報告(EMA/HMPC/150801/2015、2016年9月20日付)は、欧州薬局方のセージ葉をSalvia officinalis L.の全形またはカットの乾燥葉とし、無水生薬換算で全形は精油12 ml/kg以上、カットは10 ml/kg以上を含むと記している[6]。この数値は医薬品としての生薬の定義に基づくものであり、食品としてのセージの規格値ではない。香辛料として流通する乾燥セージに、同じ精油量が保証されているとは言えない。

主成分の比率とツヨンに富む精油

同じ評価報告は、セージの精油がツヨンに富み、組成は産地や収穫期など複数の要因で大きく変わるとし、ツヨン以外の主成分として1,8-シネオールとカンファーを挙げている[7]。査読論文(Craft, Satyal, Setzerによる2017年のMedicines誌掲載論文)は、3試料の分析結果としてα-ツヨン17.2〜27.4%、1,8-シネオール11.9〜26.9%、カンファー12.8〜21.4%という幅のある数値を報告した[8]。同論文のクラスター分析はセージの精油を5つの主要な化学型に分け、最も一般的なのはα-ツヨン>カンファー>1,8-シネオールという順の化学型で、分析された3試料もこの型に属していた[8]。ツヨンの比率は試料や化学型によって異なり、単一の数値に代表させられるものではない。

ダルマチア産自生集団に見られる化学型

前述の査読論文は、クロアチアのダルマチア地方に自生する25個体群について、先行研究がα-ツヨン・カンファー・β-ツヨン・1,8-シネオールなど8つの成分に基づく階層クラスター分析を行い、ダルマチアの集団を3つの化学型に分けたことを紹介している[9]。それぞれの化学型がどの成分構成を持つかまでは、この記事が確認した範囲では分からない。ダルマチア地方の自生集団が単一の成分組成にまとまるわけではないという点だけが、ここで言える事実である。

ツヨンの規制をどう読むか

ツヨンの上限値は、飲料の区分ごとに置かれているEU規則(EC) No 1334/2008附属書IIIパートBのツヨンの行に示された、飲料の区分ごとの上限値を棒の長さで比べた図。段階ツヨンの上限値は、飲料の区分ごとに置かれているEUの香料規則 附属書IIIパートBの、ツヨン(αおよびβ)の行に挙がる区分と数値。ツヨンの上限値(mg/kg)ヨモギ属由来のアルコール飲料35 mg/kgアルコール飲料(ヨモギ属由来を除く)10 mg/kgヨモギ属由来の非アルコール飲料0.5 mg/kg読み替えない料理にセージの葉を使うことへの上限とは読めない。逆に、セージは規制の対象外である、安全であると言うこともできない。出典: EU 規則 (EC) No 1334/2008(香料規則・2026-02-16 時点の統合版)附属書 III パート B — ツヨン図解:ajimuse.com

EU規則が定める飲料区分別の上限値

EU規則(EC) No 1334/2008(香料規則。2026年2月16日時点の統合版)の附属書IIIパートBには、ツヨン(αおよびβ)の行があり、アルコール飲料(ヨモギ属由来を除く)10 mg/kg、ヨモギ属由来のアルコール飲料35 mg/kg、ヨモギ属由来の非アルコール飲料0.5 mg/kgという上限値が食品区分ごとに示されている[10]。この記事が確認した範囲では、この行に挙げられている食品区分はいずれも飲料である。

この数値が示す範囲と示さない範囲

この上限値を、料理にセージの葉を使うことへの上限と読み替えることはできない。この記事が確認した範囲で、附属書IIIパートBのツヨンの行に挙がっているのは、アルコール飲料とヨモギ属由来の飲料という食品区分だからである。逆に、そこからセージは規制の対象外である、安全であると言うこともできない。読み取れるのは、ツヨンという成分に上限が置かれている食品区分の名称と、その区分ごとの数値だけである。そのまま食品に加えてはならない物質を列挙した附属書IIIパートAの内容は、この記事が参照した範囲には含まれていない。

料理での使い方

肉・魚料理と詰め物への使い方

Spices Board Indiaの品目頁は、セージが肉料理と魚料理の香り付け、および家禽の詰め物に使われると記している[12]。

生の葉の使い方と味の表現

同じ頁は、生の葉がサラダやサンドイッチに使われるとも記し、セージの味をfragrant(芳香がある)、spicy、warm、astringent(渋みがある)、そして少し苦い(a little bitter)という言葉で表現している[12]。これらは同局による味の記述であり、具体的な分量や調理法についての基準を示すものではない。生と乾燥の換算比、保存方法、他の乾燥ハーブとの比較については、乾燥ハーブの保存と使い方を扱う記事に別途まとめられている。

結論

名前が指すものの整理

「セージ」という名前は、米国の連邦規則の一覧ではSalvia officinalis L.を指すが、同じ一覧の中でSalvia triloba L.にも「Sage, Greek」という名前が与えられ、さらに別属のLippia属の行にも「Mexican sage」という別名が載っている[1][2]。「ダルメシアンセージ」という呼び名にあるダルマチアは、Spices Board Indiaがセージの野生する土地として挙げ、査読論文が自生集団の研究を紹介する地方であり[9][11]、精油の国際規格ISO 9909:1997の題名にも「Dalmatian sage」の語が入っている[3]。

規格と規制が示す範囲の整理

乾燥セージの規格ISO 11165:1995は全形またはカットの葉という形状を対象とすると定めるが、公開されている頁から具体的な数値基準までは確認できない[4]。米国の調達仕様A-A-20001Cが示す水分10.0%・精油1.5%などの数値は政府調達向けの仕様であり、市販品一般の法定基準ではない[5]。EUの香料規則のツヨンの行に挙がる上限値は、アルコール飲料とヨモギ属由来の飲料という食品区分に対するものであり、料理にセージの葉を使うことへの上限としても、セージが対象外・安全であることの根拠としても読めない[10]。購入したセージ製品の素性を確かめたいときは、パッケージに記された学名がSalvia officinalis L.であるかどうかを確認する方法が、この記事で示した区分と対応する。

参考文献

  1. 米国連邦規則集 21 CFR 182.10「Spices and other natural seasonings and flavorings」(eCFR 現行版)
    https://www.ecfr.gov/current/title-21/section-182.10
  2. 米国連邦規則集 21 CFR 182.10(eCFR 現行版)— オレガノの行の別名 Mexican sage
    https://www.ecfr.gov/current/title-21/section-182.10
  3. ISO 9909:1997「Oil of Dalmatian sage (Salvia officinalis L.)」規格頁
    https://www.iso.org/standard/17791.html
  4. ISO 11165:1995「Dried sage (Salvia officinalis L.) — Specification」規格頁
    https://www.iso.org/standard/19175.html
  5. USDA AMS「Commercial Item Description A-A-20001C: Spices and Spice Blends」(2023-08-28)
    https://www.ams.usda.gov/sites/default/files/media/CID Spices and Spice Blends.pdf
  6. EMA HMPC「Assessment report on Salvia officinalis L., folium and Salvia officinalis L., aetheroleum」(EMA/HMPC/150801/2015・2016-09-20)
    https://www.ema.europa.eu/en/documents/herbal-report/final-assessment-report-salvia-officinalis-l-folium-and-salvia-officinalis-l-aetheroleum-revision-1_en.pdf
  7. EMA HMPC「Assessment report on Salvia officinalis L., folium …」(2016-09-20)— 精油の組成
    https://www.ema.europa.eu/en/documents/herbal-report/final-assessment-report-salvia-officinalis-l-folium-and-salvia-officinalis-l-aetheroleum-revision-1_en.pdf
  8. Craft, Satyal, Setzer「The Chemotaxonomy of Common Sage (Salvia officinalis) Based on the Volatile Constituents」Medicines 2017(PMC5622382)
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5622382/
  9. Craft, Satyal, Setzer「The Chemotaxonomy of Common Sage …」Medicines 2017(PMC5622382)— ダルマチア産の化学型
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5622382/
  10. EU 規則 (EC) No 1334/2008(香料規則・2026-02-16 時点の統合版)附属書 III パート B — ツヨン
    https://publications.europa.eu/resource/celex/02008R1334-20260216
  11. Spices Board India「Sage」品目頁(2015-11-18 更新)— 原産と栽培
    https://www.indianspices.com/spice-catalog/sage.html
  12. Spices Board India「Sage」品目頁(2015-11-18 更新)— 用途と味
    https://www.indianspices.com/spice-catalog/sage.html

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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