食品添加物の基礎|指定・既存・用途別の考え方

食品添加物の基礎|指定・既存・用途別の考え方

食品添加物は食品衛生法により指定添加物・既存添加物・天然香料・一般飲食物添加物の4分類に整理されている[2]。厚生労働省が公表する「食品添加物に関する規制の概要」は、2020年6月18日現在の品目数として指定添加物466品目・既存添加物357品目・天然香料約600品目・一般飲食物添加物約100品目を挙げ、同省のQ&Aは香料を含めた日本の食品添加物の総数を令和4年10月26日現在で831品目としている[1][2]。これらは保存料・酸化防止剤・調味料・着色料など用途別に分類され、食品安全委員会やJECFAが設定するADI(一日摂取許容量)という安全性の指標をもとに、厚生労働省が使用基準を定めている[3][4][6]。輸入調味料のラベルに並ぶ「増粘剤(キサンタンガム)」や「酸化防止剤(アスコルビン酸)」といった表示は、この法体系に基づいて記載されたものだ。

この記事では、2つの制度を分けて扱う。 どの添加物を使ってよいか(指定・使用基準)を決めるのは厚生労働省が所管する食品衛生法であり[2]、ラベルにどう書くか(用途名・一括名・表示免除)を決めるのは消費者庁が所管する食品表示基準である[7]。品目数や使用量の上限を調べるときは厚労省の側を、表示の書き方を調べるときは消費者庁の側を見る——この振り分けを覚えておくと、調味料を選ぶ際に添加物の種類と役割を過度に恐れることなく判断できるようになる。

目次

添加物とは——食品衛生法の定義と4分類

食品添加物は、食品衛生法第4条第2項で「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するもの」と定義される[2]。使用できるのは、原則として厚生労働大臣が指定したものだけであり、これは天然物であるかどうかに関わらない。例外的に指定を受けずに使用できるのは、既存添加物・天然香料・一般飲食物添加物の3つに限られる[2]。この構造から、添加物は指定添加物・既存添加物・天然香料・一般飲食物添加物の4つに分類される。

指定添加物と既存添加物の違い

指定添加物は、食品衛生法第12条に基づき厚生労働大臣が定めたもので、安全性について食品安全委員会の評価を受けて個別に指定される[2]。厚労省が例として挙げているのはソルビン酸とキシリトールである。厚労省の「食品添加物に関する規制の概要」では、2020年6月18日現在で466品目とされている[1]。合成品・天然物を問わず、科学的に安全性が確認されたものが含まれ、保存料の安息香酸ナトリウム、酸化防止剤のアスコルビン酸(ビタミンC)、甘味料のアスパルテームなども指定添加物である。

既存添加物は、平成7年(1995年)の食品衛生法改正で指定の範囲が化学的合成品のみから天然物を含むすべての添加物へ拡大された際、法改正当時すでに我が国で広く使用されており長い食経験があるものについて、例外的に使用・販売等が認められることとなったものである[2]。厚労省が挙げる例はクチナシ色素とタンニンで、品目数は357品目とされている[1]。指定添加物との違いは、既存添加物が法改正時点の使用実績を根拠に名簿へ収載された点にある。なお、使用実態のないことが判明した既存添加物は名簿から消除される仕組みになっており[1]、品目数は固定ではない。

天然香料と一般飲食物添加物

天然香料は、動植物から得られる天然の物質で、食品に香りを付ける目的で使用されるものを指し、基本的にその使用量はごく僅かであると考えられている[2]。厚労省が挙げる例はバニラ香料とカニ香料で、品目数は約600品目とされている[1]

一般飲食物添加物は、一般に飲食に供されているもので添加物として使用されるものである。厚労省が例として挙げているのはイチゴジュースと寒天で、品目数は約100品目とされている[1][2]。つまり寒天は既存添加物ではなく一般飲食物添加物の例として原本に置かれている。日常的に食べている食材そのものであるため、安全性の懸念は低い。

家庭で輸入調味料を手に取ると、ラベルに「香料」とだけ書かれていることがある。これは天然香料または合成香料を指すが[2]、香料は一括名での表示が認められているため、具体的な物質名までは書かれない[7]。内容を詳しく知りたい場合はメーカーに問い合わせるしかない。透明性を重視する人にとっては、やや不便な部分だ。

用途別の分類——保存料・酸化防止剤・調味料・着色料

添加物は、食品中で果たす役割によって用途別に分類される。ここからは表示の話なので、根拠は消費者庁の食品表示基準に移る。 同基準の別表第六は、甘味料・着色料・保存料・増粘剤(安定剤・ゲル化剤又は糊料)・酸化防止剤・発色剤・漂白剤・防かび剤(防ばい剤)の8用途を挙げ、これらの目的で使用される添加物には用途名と物質名を併記すると定めている[7]

保存料と酸化防止剤

保存料は、微生物の増殖を抑えて食品の腐敗を防ぐ添加物である。ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウムなどが代表例で、告示370号の使用基準では、それぞれ使用できる食品と上限が個別に定められている[3]。ソルビン酸カリウムは、みそやみそ漬の漬物などに使われる場合があり、開封後の保存性を高める。

酸化防止剤は、油脂や色素の酸化を防ぎ、風味の劣化を抑える。アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)、エリソルビン酸ナトリウムなどが該当する。オリーブオイルやごま油のボトルに「酸化防止剤(ビタミンE)」と記載されているのは、不飽和脂肪酸の酸化を遅らせ、香りと栄養価を保つためだ。なお告示370号は、エリソルビン酸について「魚肉ねり製品(魚肉すり身を除く。)及びパンにあっては、栄養の目的に使用してはならない。その他の食品にあっては、酸化防止の目的以外に使用してはならない」と、目的まで縛っている[3]

調味料と甘味料

調味料は、食品にうま味・甘味・酸味などを付与する添加物で、L-グルタミン酸ナトリウム(MSG)、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなどが代表例である。これらはうま味成分として、昆布や鰹節に含まれるグルタミン酸やイノシン酸に相当する物質で、家庭用のうま味調味料や風味調味料にも使われている。ラベルでは「調味料(アミノ酸等)」のような一括名で書かれる[7]

甘味料は、砂糖の代替として甘味を付与する添加物で、アスパルテーム、スクラロース、ステビアなどがある。カロリーゼロの調味料や低糖質のドレッシングに使われ、糖質制限を意識する人には便利だ。ただし、甘味料ごとに甘さの質が異なるため、砂糖と完全に同じ味わいを求めるのは難しい。

着色料と増粘剤

着色料は、食品に色をつける添加物で、合成着色料と天然着色料に大別される。合成着色料には食用赤色2号(アマランス)、食用黄色4号(タートラジン)などがあり、天然着色料にはクチナシ色素、カラメル色素、ベニコウジ色素などがある。輸入調味料のラベルに「着色料(カラメル)」と書かれている場合、砂糖などを加熱して作ったカラメル色素が使われていることを示す。

増粘剤は、食品にとろみや粘りを与える添加物で、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナンなどが代表例だ。ドレッシングやソースの分離を防ぎ、滑らかな食感を実現する。家庭で手作りドレッシングを作ると油と酢が分離しやすいが、市販品が均一なのは増粘剤の働きによる。

表示区分表示例主な物質名主な役割
用途名併記(別表第六)保存料ソルビン酸K、安息香酸Na微生物の増殖抑制
用途名併記(別表第六)酸化防止剤アスコルビン酸、トコフェロール油脂・色素の酸化防止
用途名併記(別表第六)甘味料アスパルテーム、スクラロース甘味の付与
用途名併記(別表第六)着色料カラメル色素、クチナシ色素色の付与
用途名併記(別表第六)増粘剤キサンタンガム、グアーガムとろみ・粘りの付与
一括名(別表第七)調味料(アミノ酸等)L-グルタミン酸Na、イノシン酸Naうま味の付与

用途名を併記する8用途と一括名で書ける用途の別は、いずれも食品表示基準の別表第六・別表第七が定めている[7]

安全性評価——ADI・JECFA・食品安全委員会

添加物の安全性は、国際機関と国内機関の二段階で評価される。FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が国際的な安全性評価を行い[6]、日本では食品安全委員会がリスク評価(食品健康影響評価)を担い、その結果を受けて厚生労働省が指定や使用基準の設定というリスク管理を行う[1][4]

ADI(一日摂取許容量)とは

ADI(Acceptable Daily Intake)は、食品安全委員会の定義では「ヒトが一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響がないと考えられる1日当たりの物質の摂取量」であり、体重1キログラムあたりの量(mg/kg体重/日)で表される[4]。算出方法も食品安全委員会が公開しており、各種動物試験から得られた無毒性量(NOAEL)のうち最も小さい値からADIが導かれる[5]

> ADI = NOAEL ÷ 安全係数(SF)

安全係数は「動物と人間との差や、子供などの影響を受けやすい人と、そうでない人との個人差を考慮して設定」されるもので、通常は100である[5]。アスパルテームのADIは0〜40 mg/kg体重/日で、JECFAは1981年の評価で設定したこの値を、2023年の第96回会合でも変更する理由はないと確認している[4]

摂取量は実測されている

ADIは「これを超えると危険」という線ではなく、生涯にわたる毎日の摂取を前提に置いた余裕のある目安である。実際の摂取量がどの程度かは推計されており、食品安全委員会のQ&Aは、JECFAによる世界各国の推定値として平均的な摂取量が大人で5 mg/kg体重以下、子どもで10 mg/kg体重以下多食者でも大人12 mg/kg体重以下、子ども20 mg/kg体重以下であったと記している[4]。いずれもADIの40 mg/kg体重/日を下回る[4]

日本国内についても、厚生労働省がマーケットバスケット方式で摂取量を推計している。同Q&Aによれば、アスパルテームの一日推定摂取量は2019年度で0.055 mg/人/日(対ADI比0.002%)、生産量統計に基づく令和4年度の研究では6.58 mg/人/日(対ADI比0.3%)であった[4]「◯本飲むとADIを超える」といった換算ではなく、この実測ベースの推計が、添加物の摂取量を判断するうえで最も確かな材料になる。

使用基準と表示義務

厚生労働省は、リスク評価の結果をもとに各添加物の使用基準を定める。使用基準には、使用できる食品の種類、使用量の上限、使用方法などが細かく規定されており、その本体が告示370号の第2 添加物 F.使用基準である[3]。たとえばソルビン酸については、原文で次のように定められている。

> ソルビン酸の使用量は、ソルビン酸として、チーズにあってはその1kgにつき3.0g(プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム又はプロピオン酸ナトリウムを併用する場合には、ソルビン酸としての使用量及びプロピオン酸としての使用量の合計量が3.0g)以下、うに、魚肉ねり製品、鯨肉製品及び食肉製品にあってはその1kgにつき2.0g以下……[3]

同じ告示は、ソルビン酸を使ってよい食品自体も「甘酒……あん類、うに、果実酒、かす漬……チーズ、つくだ煮、つゆ、煮豆……マーガリン並びにみそ以外の食品に使用してはならない」と限定列挙している[3]上限値だけでなく「どの食品に使えるか」まで決まっているのがこの制度の骨格である。

表示義務については、消費者庁の食品表示基準で詳細が定められている。保存料・酸化防止剤・着色料など8つの用途については、「保存料(ソルビン酸K)」のように用途名と物質名を併記しなければならない[7]。一方、調味料や香料は「調味料(アミノ酸等)」「香料」のように、一括名での表示が認められている[7]

輸入調味料を選ぶ際、ラベルの添加物表示を見て不安になることがある。しかし、表示されている添加物は使用基準の範囲内で使われており、推計された摂取量はADIを大きく下回っている[4]。過度に恐れるよりも、どの添加物がどんな役割を果たしているかを理解する方が、納得のいく選択につながる。

賢い付き合い方——過度に恐れず、知って選ぶ

添加物をめぐる情報は、「絶対安全」と「絶対危険」の両極端に振れやすい。科学的根拠に基づいた冷静な判断が求められる。

過度に恐れない理由

日本で使用が認められている添加物は、食品安全委員会のリスク評価を経て厚生労働大臣が指定したものである[1][2]。ADIは動物試験の無毒性量を安全係数(通常100)で割った値であり[5]、日本国内の推定摂取量はADIの1%にも満たない水準で推移している[4]

また、「天然=安全、合成=危険」という単純な図式も誤りだ。厚労省が明記しているとおり、指定の対象は天然物であるかどうかに関わらない[2]。天然由来の既存添加物であっても使用基準が定められているものがあり、合成添加物の中にはビタミンCやビタミンEのように栄養素として有益なものも多い。物質の由来ではなく、科学的な安全性評価に基づいて判断すべきだ。

避けたい人のための指針

それでも添加物を減らしたいと考える人には、次のような選択肢がある。

項目内容
表示をよく読む食品表示基準に基づき、使用した添加物は原則としてすべて表示されている[2][7]。原材料名欄の後半に記載されるため、購入前に確認する習慣をつける
無添加表示を読み解く「保存料不使用」などの表示は、消費者庁の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が対象とする領域で、同ガイドラインは消費者を誤認させるおそれのある不使用表示の類型を整理している[8]。「無添加」の一語が全ての添加物を使っていないことを意味するとは限らない
手作りを増やすドレッシングやタレは、家庭で油・酢・醤油・スパイスを混ぜれば添加物なしで作れる。ただし、保存性は市販品より劣るため、冷蔵庫で早めに使い切る
信頼できるブランドを選ぶオーガニック認証や原産地呼称(DOP・AOP・IGP)を取得している調味料は、添加物の使用が制限されていることが多い

一方で、添加物を完全に排除しようとすると、食品の選択肢が極端に狭まり、栄養バランスを崩すリスクもある。保存料のおかげで食中毒を防げている側面もあり、添加物の恩恵を認識することも大切だ。

家庭での実践例

輸入調味料を使い切るために、添加物の役割を理解しておくと便利だ。たとえば、保存料が使われている製品は微生物の増殖が抑えられているぶん、開封後の余裕が生まれる。一方、無添加をうたう調味料は開封後に冷蔵庫で保管し、早めに使い切る必要がある。

オリーブオイルに「酸化防止剤(ビタミンE)」が入っていれば、開封後も酸化が遅く、香りが長持ちする。無添加のものは、開封後は早めに使い切るか、小瓶を選んで酸化を最小限に抑える工夫が要る。

ドレッシングの「増粘剤(キサンタンガム)」は、振らずに注いでも均一な味が出るようにする役割を果たす。手作りドレッシングで同じ食感を出したい場合は、使う直前によく振るか、少量のマスタードを加えて乳化させる方法がある。

結論

食品添加物は、指定添加物・既存添加物・天然香料・一般飲食物添加物の4分類に整理され、保存料・酸化防止剤・調味料・着色料など用途別に役割が定められている[1][2]。使えるかどうかと使用量の上限を決めるのは厚生労働省の告示370号[3]、ラベルにどう書くかを決めるのは消費者庁の食品表示基準[7]——この2つを分けて見ることが、添加物の情報にたどり着く最短経路である。

安全性については、JECFAと食品安全委員会がADIを設定し[4][5][6]、厚生労働省がそれをもとに告示370号で使用基準を定めている[3]。推計された日本国内の摂取量はADIを大きく下回っており[4]、通常の食生活で健康被害が出る可能性は極めて低い。

輸入調味料のラベルに並ぶ添加物の名前は、一見すると不安を煽るが、それぞれが保存性・風味・食感を保つために選ばれたものだ。過度に恐れるのではなく、どの添加物がどんな役割を果たしているかを理解し、自分の価値観に合った選択をすることが、賢い付き合い方と言える。調味料を選ぶ際は、添加物の有無だけでなく、原材料の質・製法・原産地・価格など、総合的に判断することが、家庭のキッチンで世界の味を再現する第一歩になる。

参考文献

  1. 厚生労働省「食品添加物に関する規制の概要」(食品添加物の種類と品目数・2020年6月18日現在)
    https://www.mhlw.go.jp/content/000798511.pdf
  2. 厚生労働省「食品添加物 よくある質問(消費者向け)」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/qa_shohisya.html
  3. 食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第2 添加物 F.使用基準(厚生労働省)
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000186616.pdf
  4. 食品安全委員会「アスパルテームに関するQ&A」
    https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/aspartame.html
  5. 食品安全委員会「一日摂取許容量(ADI)とは?」
    https://www.fsc.go.jp/emerg/adi.pdf
  6. FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)
    https://www.who.int/groups/joint-fao-who-expert-committee-on-food-additives-(jecfa)
  7. 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号・消費者庁所管)別表第六・別表第七
    https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010/
  8. 食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(消費者庁・令和4年3月30日)
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf

この記事を書いた人

世界の調味料を、現地の一次資料から読み解く編集部です。数字と固有名詞は本国の公的機関や規格で裏を取り、家庭で「あの国の味」を再現したい人に役立つ形にまとめます。

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