食品表示 完全読解|原材料・一括名・スラッシュを全部読む

食品表示 完全読解|原材料・一括名・スラッシュを全部読む

原材料欄の「/」(スラッシュ)は、原材料と添加物を区切る記号として広く使われている。ただし、これは食品表示基準(府令)の条文が定めた記号ではない。 府令は「原材料名」と「添加物」を別々の表示事項として定めているだけで[4]、添加物欄を設けずに原材料名欄へまとめて書くときの「明確に区分する方法」の一例として、記号による区分(表示例に「/」)を示しているのは消費者庁の食品表示基準Q&Aである[5]。スラッシュの手前に並ぶのが原材料、後ろが添加物であり、この境界を読み取れば「調味料(アミノ酸等)」「pH調整剤」といった一括名表示の中身を推測できる。輸入調味料の成分を確認したい人、添加物の有無を判断したい人にとって、スラッシュの位置は最初に見るべき目印となる。スラッシュ・一括名・キャリーオーバー・無添加表示の新ルールを具体例とともに整理し、醤油・だし・ドレッシングの表示を読み解く手順を示す。

目次

原材料と添加物を分ける「スラッシュ」

スラッシュの役割と配置ルール

食品表示基準は、「原材料名」と「添加物」を別の表示事項として定めている[4]。両者の境界を「/」で示すのは、Q&Aが挙げる「①記号で区分して表示する」「②改行して表示する」「③別欄に表示する」という3つの区分方法のうち①にあたり、Q&Aの表示例が「/」を使っている[5]。同じQ&Aは「区切りを入れずに連続して表示することはできません」とも明記している[5]。スラッシュの左側(前半)には、食材そのものや調味料の主原料が重量順に並び、右側(後半)には保存料・着色料・増粘剤など法的に「添加物」と分類される物質が記載される。このルールにより、消費者は一目で「どこまでが食材で、どこからが添加物か」を判別できる。

スラッシュが無い表示も存在する。添加物を一切使用していない製品では、原材料欄に「/」が現れず、すべてが食材名のみで構成される。逆に、添加物しか含まない製品(例:合成着色料のみの食用色素)では、スラッシュの前が空白となり「/○○、△△」と表記される。実際の商品では、醤油や味噌といった伝統的な発酵調味料でスラッシュ無しの表示を見かけることが多い。

スラッシュの前後で読み取れる情報

スラッシュの前に並ぶ原材料は、重量の多い順に記載される。例えば「大豆、小麦、食塩」と書かれていれば、大豆が最も多く使われている。後半の添加物も同様に重量順だが、一括名表示(後述)が使われると個別の物質名が隠れるため、正確な量の比較は難しくなる。

スラッシュの位置を見るだけで、製品の性格をある程度推測できる。原材料欄の大半がスラッシュの前に収まり、後半が「酒精、ビタミンB1」程度なら、添加物の使用は最小限と判断できる。一方、スラッシュの後ろに多くの物質名が並ぶ場合、保存性や食感の調整に多くの添加物が投入されていると分かる。輸入調味料を選ぶ際、スラッシュの前後の比率を見比べれば、伝統製法に近いか工業的に調整されたかの目安になる。

例外:物質名併記と事項名併記

添加物には「物質名」で書く方法と「用途名+物質名」で書く方法がある[1]。甘味料・着色料・保存料・増粘剤(安定剤・ゲル化剤又は糊料)・酸化防止剤・発色剤・漂白剤・防かび剤(防ばい剤)の8用途は食品表示基準の別表第六に列挙されており、「保存料(ソルビン酸)」のように用途を明示する義務がある[4]。この表記もスラッシュの後ろに置かれるため、用途名を見れば添加物の役割を即座に理解できる。

一括名表示(次節で詳述)を採用した場合、物質名は省略され「調味料(アミノ酸等)」のように分類名だけが残る。この場合も、スラッシュの後ろに配置される点は変わらない。スラッシュの位置を起点に、用途名・一括名・物質名のいずれが使われているかを確認すれば、表示の詳しさのレベルを判断できる。

一括名表示(調味料(アミノ酸等)・pH調整剤の中身)

一括名で隠れる物質

一括名表示とは、複数の添加物を個別に列挙せず「調味料(アミノ酸等)」「pH調整剤」といった分類名でまとめて記載する制度である[1]。食品表示基準(消費者庁)の別表第七が挙げる一括名(イーストフード、ガムベース、かんすい、酵素、光沢剤、香料、酸味料、チューインガム軟化剤、調味料、豆腐用凝固剤、苦味料、乳化剤、水素イオン濃度調整剤=pH調整剤、膨張剤の14項目)については、同一用途の添加物を一括名で書くことが認められている[4]。この制度により、表示欄はすっきりするが、消費者は具体的な物質名を知ることができなくなる。

「調味料(アミノ酸等)」の場合、グルタミン酸ナトリウム(MSG)、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなど複数のうま味成分が混合されている可能性がある。括弧内の「アミノ酸等」は、アミノ酸系・核酸系・有機酸系のいずれかまたは複数が含まれることを示す表記であり、正確な組成は製造者にしか分からない。同様に「pH調整剤」は、クエン酸・リン酸・乳酸など数種類の酸を組み合わせた場合に使われ、個別の物質名は表に出ない。

一括名が使われる典型例

次の表に、よく見かける一括名とその用途、隠れている可能性のある物質例を整理する。

一括名用途隠れている可能性のある物質例
調味料(アミノ酸等)うま味の付与グルタミン酸Na、イノシン酸Na、グアニル酸Na
pH調整剤保存性向上・酸味調整クエン酸、リン酸、乳酸、フマル酸
乳化剤油と水の混合グリセリン脂肪酸エステル、レシチン
膨張剤生地の膨らみ炭酸水素ナトリウム、焼ミョウバン
香料香りの付与バニリン、エチルバニリン、各種エステル類

一括名が多用される製品の代表例は、加工食品(レトルトカレー、即席麺、ドレッシング)である。これらの製品では、複数の添加物を組み合わせて味・色・食感・保存性を最適化するため、一括名表示が頻繁に登場する。逆に、伝統的な醸造調味料(本醸造醤油、純米酢)では一括名表示が少なく、原材料と添加物の境界が明瞭になる傾向がある。

一括名を使わない「物質名表示」との比較

製造者は一括名を使わず、すべての添加物を物質名で列挙することも選択できる。例えば「調味料(アミノ酸等)」の代わりに「グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム」と書く方法である。この場合、消費者は正確な物質名を確認できるが、表示欄は長くなる。

一括名と物質名表示のどちらを採用するかは製造者の判断に委ねられており、法的にはどちらも適法である[1]。ただし、アレルギー物質や遺伝子組換え原材料については、一括名に隠すことは許されず、個別に明示する義務がある。輸入調味料を選ぶ際、一括名が少なく物質名が明記された製品は、透明性を重視する製造者の姿勢を反映していると解釈できる。

キャリーオーバーと表示免除

キャリーオーバーの定義

キャリーオーバーとは、原材料の製造時に使用された添加物が、最終製品にも微量残留するものの、その効果が最終製品では発揮されない場合を指す[1]。この場合、当該添加物は最終製品の原材料欄に記載しなくてよいとされる。例えば、醤油の製造に使われた保存料が、醤油を原料とするドレッシングに微量混入しても、ドレッシング中では保存料としての効果を持たなければ、ドレッシングの表示には現れない。

キャリーオーバーが認められる条件は2つある。第一に、最終製品中での添加物の濃度が効果を発揮するレベルを下回っていること。第二に、最終製品の製造者が当該添加物を意図的に使用していないこと。この2条件を満たせば、表示義務は免除される[1]

表示免除がもたらす情報の欠落

キャリーオーバーの免除により、消費者は原材料の製造過程で使われた添加物を知る手段を失う。例えば、輸入ナンプラーを使ったタイ風ドレッシングを作る場合、ナンプラー自体に保存料が含まれていても、ドレッシングの表示には「ナンプラー」とだけ書かれ、保存料の名前は出ない。この仕組みは、表示欄の煩雑さを避ける目的で導入されたが、添加物の完全な把握を望む消費者にとっては情報不足となる。

表示免除のもう一つの類型は「加工助剤」である。製造工程で使用されるが最終製品からは除去される物質(例:油の精製に使う活性炭、ろ過助剤)は、加工助剤として表示義務が無い[1]。この場合も、製造過程の透明性は限定的となる。

キャリーオーバーを避ける方法

キャリーオーバーの影響を最小化したい場合、原材料自体の表示を確認する方法がある。例えば、ドレッシングに使う醤油を選ぶ際、醤油のラベルで「大豆、小麦、食塩」のみが記載され、スラッシュの後ろに何も無い製品を選べば、キャリーオーバーのリスクは減る。輸入調味料の場合、原産国の表示基準が日本と異なるため、キャリーオーバーの範囲も変わる点に注意が必要である。

製造者によっては、法的義務を超えてキャリーオーバー物質を自主的に表示する例もある。こうした製品は、原材料欄の末尾に「原材料の一部に○○由来の△△を含む」といった注記を添える。透明性を重視する消費者にとって、この種の自主表示は選択の判断材料となる。

「無添加」表示の新ルール

2022年のガイドライン改定

消費者庁は2022年に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を公表し、「無添加」「不使用」といった表示の条件を明確化した[2]。改定の背景には、「無添加」を謳いながら実際には他の添加物を使用している製品や、キャリーオーバーで添加物が混入している製品が市場に出回り、消費者の誤認を招いていた問題がある。新ルールでは、次の10類型の表示が不適切とされた。

  • 単なる「無添加」表示(何が無添加かを明示しない)
  • 同じ用途の添加物を使用しているのに、特定の物質だけ「不使用」と表示
  • キャリーオーバーで添加物が含まれるのに「無添加」と表示
  • 過去に使用していたが現在は業界全体で使われていない添加物を「不使用」と強調
  • 健康・安全と関連付けて「無添加」を訴求

適切な無添加表示の条件

新ルールの下で適切とされる表示は、「保存料不使用」「合成着色料不使用」のように、不使用の対象を具体的に明示するものである。さらに、同一用途の他の添加物を使用している場合は、その旨を併記する必要がある。例えば、ソルビン酸を使わずに別の保存料(安息香酸ナトリウム)を使用している場合、「ソルビン酸不使用(安息香酸ナトリウム使用)」と書かなければならない。

キャリーオーバーが存在する場合も、原材料由来の添加物が完全にゼロであるかのような誤認を与えない配慮が求められる[2]。この基準は、輸入調味料にも適用されるため、海外製品を国内で販売する際には、日本のガイドラインに沿ったラベルの貼り替えや追記が必要となる。

無添加表示を読む際の注意点

「無添加」と書かれた製品を見たとき、まずスラッシュの位置と添加物欄を確認する。スラッシュの後ろに何も無ければ、添加物が一切使用されていない可能性が高い。一方、スラッシュの後ろに「酒精」「ビタミンC」など一部の添加物が記載されている場合、「特定の添加物(例:保存料)は不使用だが、他の添加物は使用している」という意味になる。

無添加表示が強調されている製品でも、一括名表示が使われていれば、具体的な物質名は隠れたままである。例えば「保存料不使用」と謳いながら「pH調整剤」が記載されている場合、pH調整剤の中にクエン酸などの保存性を高める物質が含まれている可能性がある。無添加表示を過信せず、スラッシュ・一括名・キャリーオーバーの仕組みを総合的に理解することが、正確な判断につながる。

具体例で読む(醤油・だし・ドレッシング)

本醸造醤油の表示

本醸造醤油の典型的な原材料欄は「大豆、小麦、食塩」の3つだけで構成され、スラッシュが現れない。これは、その製品が添加物を使用していないためである。JAS規格の「本醸造方式」は、アミノ酸液等を用いずにもろみを発酵・熟成させる方式を指し、砂糖類やアルコールを補助的に加えたものも含まれる(原料を大豆・小麦・食塩に限る規定ではない)[3]

混合醸造方式や混合方式の醤油では、スラッシュの前に「アミノ酸液」「調味料(アミノ酸等)」が追加される。例えば「大豆、小麦、食塩、アミノ酸液 / 調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、甘味料(ステビア)」のような表示となる。この場合、スラッシュの前に並ぶ「アミノ酸液」は原材料扱いだが、実際には酸分解や酵素分解で得られた液体であり、伝統的な発酵とは異なる工程を経ている。スラッシュの後ろには、さらにうま味を強化する調味料と、色・甘味を調整する添加物が並ぶ。

顆粒だしの表示

市販の顆粒だし(和風だしの素)の原材料欄を見ると、「食塩、砂糖、風味原料(かつお節粉末、昆布粉末)、でん粉 / 調味料(アミノ酸等)、酵母エキス」といった構成が多い。スラッシュの前半には、食塩が最も多く、次いで砂糖、風味原料、でん粉が続く。この順序から、顆粒だしの主成分は食塩と糖類であり、かつお節や昆布の割合は比較的少ないと分かる。

スラッシュの後ろの「調味料(アミノ酸等)」は、グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウムを指す。これらは、かつお節や昆布に含まれるうま味成分と同じ物質だが、化学合成または微生物発酵で製造されたものである。酵母エキスは、酵母を自己消化させて得られるうま味成分であり、法的には「食品」扱いだがうま味を強化する目的で使われるため、実質的には調味料に近い。顆粒だしの表示を読む際、スラッシュの前後を見比べれば、天然由来の風味と人工的なうま味の比率を推測できる。

ドレッシングの表示

ドレッシングの原材料欄は、油脂・酢・調味料・増粘剤が複雑に組み合わさるため、スラッシュの前後が長くなる傾向がある。例えば、市販のごまドレッシングでは「食用植物油脂、醤油、砂糖、醸造酢、ごま、食塩、卵黄 / 調味料(アミノ酸等)、増粘剤(キサンタンガム)、香料、カラメル色素」といった表示が見られる。

スラッシュの前半で、食用植物油脂が最も多いことが分かる。次いで醤油・砂糖が続き、ごまは中盤に位置する。この順序から、ごまドレッシングの主成分は油と醤油であり、ごまの風味は補助的な役割にとどまると推測できる。スラッシュの後ろには、うま味を補強する調味料、とろみを付ける増粘剤、香りを強化する香料、色を調整するカラメル色素が並ぶ。

輸入ドレッシング(例:イタリア製バルサミコドレッシング)では、原産国の表示基準に従った表記が併記される。日本国内で販売する際には、日本の食品表示基準に沿った和訳ラベルが追加されるため、スラッシュの位置と一括名の有無を確認すれば、日本向けに調整された添加物の使用状況を把握できる。

結論

食品表示のスラッシュは、原材料と添加物の境界を示す最も基本的な目印であり、この記号を起点に一括名・キャリーオーバー・無添加表示の仕組みを理解すれば、表示欄から読み取れる情報量は飛躍的に増える。スラッシュの前後を見比べ、一括名の中身を推測し、キャリーオーバーの可能性を考慮し、無添加表示の限定条件を確認する。この4つの視点を組み合わせれば、輸入調味料や加工食品の成分を正確に評価できる。

実際の買い物では、スラッシュの位置を最初に確認し、添加物の種類と数を数え、一括名が使われているかを見る。この3ステップを習慣化すれば、店頭で数秒のうちに製品の性格をつかめるようになる。伝統製法を重視するなら、スラッシュの後ろが短い製品を選び、透明性を求めるなら、一括名ではなく物質名が列挙された製品を選ぶ。無添加表示に惹かれたときは、スラッシュの後ろが本当に空白か、一括名で隠れていないかを確認する。

食品表示は、製造者と消費者をつなぐ唯一の公式文書である。スラッシュ・一括名・キャリーオーバー・無添加表示の4つの仕組みを理解し、醤油・だし・ドレッシングの具体例で読み方を練習すれば、ラベルは単なる文字の羅列ではなく、製品の設計思想を伝える情報源に変わる。次に調味料を手に取るとき、スラッシュの位置を探すところから始めてほしい。

参考文献

  1. 食品添加物表示に関するマメ知識(消費者庁)
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/food_additive/assets/food_labeling_cms204_210408_01.pdf
  2. 食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(消費者庁、令和4年3月30日)
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf
  3. しょうゆの日本農林規格(農林水産省)
    https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-470.pdf
  4. 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号・消費者庁所管)別表第六・別表第七
    https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010/
  5. 食品表示基準Q&A 第2章 加工食品(平成27年3月30日消食表第140号・消費者庁)
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_260401_18.pdf

この記事を書いた人

世界の調味料を、現地の一次資料から読み解く編集部です。数字と固有名詞は本国の公的機関や規格で裏を取り、家庭で「あの国の味」を再現したい人に役立つ形にまとめます。

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