柚子胡椒とかんずりの違い|米糀と雪さらし、分かれ目は仕込みにある

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柚子胡椒とかんずりの違いは、唐辛子・柚子・塩という共通の原料に米糀を加えて発酵させるかどうかにある。かんずりは唐辛子を雪にさらしたのち米糀を加えて熟成・発酵させる新潟県の郷土調味料であり[2][3]、柚子胡椒は青唐辛子と柚子に塩を合わせる九州の郷土調味料で、その紹介資料には熟成や発酵についての記述がない[1]。同じ唐辛子系の調味料に見えても、仕込みの工程を比べると別系統の調味料だとわかる。

この記事の結論
  • 柚子胡椒は唐辛子・柚子・塩を合わせたもので、かんずりはこれに米糀を加えて熟成・発酵させる点が違う。
  • かんずりは大寒ごろ、塩漬けの唐辛子を雪にさらすところから始め、3年間熟成・発酵させる新潟の郷土調味料である。
  • 柚子胡椒の「胡椒」は唐辛子を指す九州の方言で、コショウ科の胡椒は入っていない。

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目次

名前と産地の違い-「こしょう」は唐辛子を指す九州方言

洋胡椒とは別物、唐辛子を指す「こしょう」

柚子胡椒という名前には「胡椒」という字が入っているが、実際に使われているのは唐辛子であって、一般に胡椒として売られているコショウ科の香辛料ではない[1]。九州地方では唐辛子のことを「こしょう」と呼ぶ方言があり、区別が必要な場合は一般的な胡椒のほうを「洋胡椒」と呼び分ける[1]。つまり柚子胡椒は「柚子と唐辛子を合わせた調味料」という意味の名前であり、香辛料としての胡椒は原料に含まれていない。名前の字面だけで、洋胡椒を使った調味料だと受け取らないようにしたい。

発祥は諸説-英彦山の山伏の逸話

柚子胡椒の発祥については、福岡県の英彦山にまつわる逸話が伝わっている。英彦山は修験山として知られ、山伏たちが山に多く自生していた柚子を薬として用いたことが始まりの一つといわれている[1]。ただしこの記述は「はじまりともいわれている」という表現であり、確定した起源として書かれているわけではない[1]。年代や人物名までは資料に現れないため、本記事でも「諸説の一つ」として扱う。

かんずりは新潟県の郷土調味料

対してかんずりは、新潟県に伝わる郷土調味料として紹介されている[2]。仕込みの起点となるのが大寒(1月20日前後)の雪であり、これは新潟の積雪という土地の条件と直結した製法である[2][3]。柚子胡椒が九州の唐辛子文化から生まれた名前であるのに対し、かんずりは雪国の気候そのものを工程に取り込んでいる点が対照的である。

両方の郷土料理ページを読み比べると、同じ「唐辛子と柚子と塩」という原料から出発しても、名前の付き方も工程の起点もまったく違う土地の事情を映していることが分かる。

原料の違い-唐辛子・柚子・塩は共通、米糀はかんずりだけ

柚子胡椒の原料と青唐辛子・青柚子の組み合わせ

柚子胡椒の資料には、唐辛子(こしょう)と柚子に塩を合わせるという構成が示されている[1]。唐辛子は青唐辛子を使うのが一般的とされ、赤唐辛子を使う場合もあると書かれている[1]。緑色のものは辛味が強く、赤色のものは香りが強いため、好みによって使い分けるという記述もある[1]。

かんずりに加わる米糀という一手

かんずりでは唐辛子・柚子・塩に加えて米糀が使われ、この米糀を使う点が柚子胡椒との明確な違いである[2][3]。かんずりの米糀は、唐辛子・柚子・塩と一緒に混ぜられたのちに長期の熟成・発酵に入る[2][3]。この米糀の有無が、後述する製法の違いにそのままつながっている。

原料の対応関係を整理すると次のようになる。

原料柚子胡椒かんずり
唐辛子使用(青が一般的、赤の場合もある)[1]使用(地場産の唐辛子)[2]
柚子使用(青柚子)[1]使用[2][3]
塩使用[1]使用[2][3]
米糀—使用[2][3]

表からわかるとおり、唐辛子・柚子・塩の三点は両方の資料に現れるが、米糀はかんずりの資料にだけ現れる原料である。柚子胡椒 代用を考える際も、まずこの米糀の有無が味の系統を分ける一番の目印になる。

製法の違い-雪さらしと三年の熟成、柚子胡椒の記録にない工程

かんずりは大寒の雪から始まり、足掛け4年で仕上がるかんずりの製造を、大寒の寒ざらし、洗浄・粉砕、元仕込み、丸3年の熟成発酵、完成までの5段で示した流れ図。流れかんずりは大寒の雪から始まり、足掛け4年で仕上がる雪さらしと米糀による長期の熟成発酵。柚子胡椒の資料には無い工程が続く。01寒ざらし大寒に塩漬けした唐辛子を雪の上にさらす。3日から4日ほど02洗浄・粉砕雪から回収した唐辛子を洗って砕く03元仕込み2月から3月に糀・柚子・塩を加える04熟成発酵丸3年。2年目・3年目に年1回の手返し05完成仕込みから足掛け4年柚子胡椒は紹介資料に熟成や発酵の記述が見当たらない。旬の青唐辛子と青柚子で仕込み、小分けにして冷凍保存する。※熟成期間は、農林水産省の資料は「三年間」、製造元の資料は「丸3年」と書く。出典: 有限会社かんずり「かんずりができるまで」/農林水産省「うちの郷土料理」かんずり 新潟県/農林水産省「うちの郷土料理」ゆずごしょう福岡県図解:ajimuse.com

かんずりの「寒ざらし(雪さらし)」

かんずりの仕込みは、大寒(1月20日前後)に塩漬けした唐辛子を雪の上にさらして天日干しにする「寒ざらし」、別名「雪さらし」から始まる[2]。雪質にもよるが、この工程は3日から4日ほど行われる[2][3]。雪にさらされることで唐辛子の強いアクが抜け、旨みが増すとされている[2][3]。製造元の資料には、雪と唐辛子がサンドイッチ状になった状態を、時には1メートル近く掘り起こして回収する作業だと具体的に記されている[3]。

元仕込みから丸3年の熟成発酵、手返しという作業

雪さらしを終えた唐辛子は洗浄・粉砕されたのち、2月から3月にかけて糀・柚子・塩を加える「元仕込み」の工程に入る[3]。ここから長い熟成・発酵期間が始まる。農林水産省の資料はこの期間を「三年間熟成・発酵させる」と説明する[2]。一方、製造元の資料は「丸3年の間」熟成発酵させ、仕込みから完成まで足掛け4年間かけると説明しており、2年目・3年目には年に1回「手返し」という、樽に空気を入れて発酵を促す作業を行うとしている[3]。三年間という表現と丸3年という表現は出典によって言い回しが異なるため、本記事でもどちらの資料の言葉かを区別して書いている。

柚子胡椒の製法に熟成・発酵の記述がない点

柚子胡椒については、福岡県の郷土料理として紹介する資料に熟成や発酵という工程の記述が見当たらない[1]。書かれているのは、青唐辛子と青柚子を旬の時期に合わせて仕込み、小分けにして冷凍保存するという内容であり、寒ざらしや糀による発酵に相当する工程は出てこない[1]。したがって柚子胡椒を発酵調味料とは書かず、唐辛子と柚子に塩を合わせた薬味・調味料として扱う。かんずりが雪さらしと三年(丸3年)の熟成発酵を経る調味料であるのに対し、柚子胡椒は資料の範囲では発酵を経由しない調味料という違いになる。

この工程の違いを知っておくと、瓶を手に取ったときに、原材料表示に米糀が入っているかを確かめる手がかりになる。同じ唐辛子系の調味料でも、仕込みに丸3年をかけるものと、その年の青唐辛子・青柚子で仕込むものがあるという対比が、この二品の違いを端的に表している。

青と赤-柚子胡椒が青唐辛子と青柚子の旬に作られる理由

柚子胡椒は、青唐辛子と青柚子の時期が重なるときに仕込む青唐辛子の旬と青柚子の時期が重なる7月から9月頃に仕込み、秋冬に柚子が熟していく一方で、冷凍した柚子胡椒を年間を通して使うことを示した年表。年表柚子胡椒は、青唐辛子と青柚子の時期が重なるときに仕込む柚子が黄色く熟す前の青い時期と、青唐辛子の旬が重なる。7月から9月頃青唐辛子の旬青柚子の時期と重なり、この時期に仕込む秋冬柚子が黄色く熟す柚子胡椒に使うのは、その前の青柚子年間冷凍で使い続ける旬にとれたものを小分けにして冷凍保存仕込み青と赤緑色(青)の唐辛子は辛味が強く、赤色は香りが強い。かんずりの資料に出てくる唐辛子は「あざやかな赤色」と表現される。出典: 農林水産省「うちの郷土料理」ゆずごしょう 福岡県/農林水産省「うちの郷土料理」かんずり 新潟県図解:ajimuse.com

青唐辛子は辛く、赤唐辛子は香り高い

柚子胡椒の資料では、緑色(青)の唐辛子は辛味が強く、赤色の唐辛子は香りが強いという特徴の違いが説明されている[1]。このため青唐辛子を使うか赤唐辛子を使うかは、辛さを立てたいか香りを立てたいかという好みで使い分けられるとされている[1]。かんずりの資料に登場する唐辛子は、雪さらしの工程で「あざやかな赤色」と表現されており、こちらは熟した赤唐辛子が使われている点も柚子胡椒との違いになる[2]。

旬の重なりと冷凍保存の工夫

柚子は秋冬にかけて徐々に黄色く熟していくため、柚子胡椒にはその前の青い状態の柚子(青柚子)が使われる[1]。青唐辛子の旬は7月から9月頃までとされ、これがちょうど青柚子の時期と重なることが、柚子胡椒が青唐辛子と青柚子で作られる理由になっている[1]。旬の時期にとれたものを小分けにして冷凍保存し、年間を通して使うという保存の工夫も資料に記されている[1]。家庭で柚子胡椒を仕込む場合も、この旬の重なりに合わせて材料をそろえ、使う分だけ小分けに冷凍しておくと年間を通して使いやすい。

使い分け-飲食方法から見る柚子胡椒とかんずりの違い

柚子胡椒が合う料理

柚子胡椒の資料には、鍋やうどん・そうめん、刺身の薬味として、また多様な料理のアクセントとして使われると書かれている[1]。具体的には次のような使われ方が挙げられている。

  • 鍋料理の薬味として、汁に溶かしたり具材に添えたりする
  • うどんやそうめんの薬味として、麺つゆに少量加える
  • 刺身に添えて、醤油の代わりに辛味と柚子の香りを利かせる

かんずりが合う料理と季節の使われ方

かんずりの資料では、鍋・ラーメン・パスタなどの「隠し味」として加えたり、刺身に添えたりする使い方が紹介されている[2]。季節による使われ方の違いにも触れられており、夏はスタミナ料理や食欲増進に、冬は体を温める食卓の名脇役として、新潟の家庭や店で利用されているとされる[2]。柚子胡椒の資料が薬味やアクセントという位置づけで書かれているのに対し、かんずりの資料は「隠し味」という位置づけで書かれている点も、使い方の記述としては違いになる。

  • 鍋やラーメン、パスタに少量加えて味の奥行きを足す
  • 刺身に添えて、発酵由来の風味を辛味とともに利かせる
  • 夏は食欲増進、冬は体を温める目的で食卓に置く

柚子胡椒 代用としてかんずりを使う、あるいは反対にかんずりの代わりに柚子胡椒を使う場面を考えるときは、この薬味やアクセントか「隠し味」かという資料上の位置づけの違いを目安にするとよい。米糀による発酵の風味を求めているならかんずりでしか出せない部分があり、青唐辛子と青柚子のはっきりした辛味と香りを求めているなら柚子胡椒でしか出せない部分がある。どちらも詳しい歴史や銘柄、具体的な仕込み方に踏み込みたい場合は、唐辛子調味料の図鑑で個別に確認できる。

結論-仕込みの有無が分かれ目、選ぶ基準

柚子胡椒とかんずりの違いを一言でまとめるなら、米糀を加えて雪さらしから丸3年の熟成発酵を経るかどうかという仕込みの違いに尽きる[2][3]。柚子胡椒は青唐辛子と青柚子の旬に合わせて仕込み、資料の範囲では発酵の工程を経由しない調味料であり、九州で唐辛子を「こしょう」と呼ぶ方言に由来する名前を持つ[1]。かんずりは新潟の大寒の雪を使う寒ざらしと、米糀による長期の熟成発酵を経て作られる調味料である[2][3]。

この二品は「唐辛子系の似た調味料」で片づけずに、雪さらしという工程の有無、米糀という原料の有無という具体的な差分で覚えておくと、輸入食材店や物産展で瓶を手に取ったときに迷わずに済む。買った調味料を使い切りたい場合は、柚子胡椒なら鍋やうどん・刺身の薬味として少量ずつ、かんずりならラーメンやパスタの隠し味として少量ずつ試してみるのが、資料に書かれている使い方の範囲での確実な一歩になる。

参考文献

  1. 農林水産省「うちの郷土料理」ゆずごしょう 福岡県
    https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/yuzu_gosyo_fukuoka.html
  2. 農林水産省「うちの郷土料理」かんずり 新潟県
    https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/kanzuri_niigata.html
  3. 有限会社かんずり「かんずりができるまで」
    https://kanzuri.com/process/

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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