白醤油とは何か|小麦主体のこうじが生む淡色醤油

白醤油とは何か|小麦主体のこうじが生む淡色醤油

白醤油は、小麦を主体としたこうじを食塩水で仕込み、極度に淡い色に仕上げるしょうゆである[2]。しょうゆ全体に占める割合は2005年時点で0.8%にとどまるが[2]、食材本来の色を活かせる特性から白だしなど業務・加工用の需要が伸びている[2]。輸入食材店や地方の調味料店で「しろしょうゆ」の瓶を見かけて用途に迷う人にとって、淡口醤油や味りんとの違いを知ることが選び方の手がかりになる。

この記事の結論
  • 白醤油は、小麦を主体としたこうじを食塩水で仕込み、極度に淡い色に仕上げるしょうゆである。
  • 食品表示基準では、しろは少量の大豆に麦を加えて色の濃化を強く抑え、うすくちは大豆とほぼ等量の麦で色の濃化を抑える。
  • 白だしは白醤油をだし汁などと合わせた加工調味料として扱われるのが一般的で、白醤油そのものとは区別される。

この記事は「「醤(ひしお・ジャン)」とは何か|東アジア調味料の母体を知る」の各論です。

目次

白醤油はしょうゆの一分類であり、たまりの対極に位置する

しょうゆは仕込みの配合や色合いによっていくつかの種類に分けられ、白醤油はその中でも色の薄さを軸にした種類である。しろしょうゆという読み方が示すとおり、透明感のある淡い色が最大の特徴とされる。濃い色と強い風味を特徴とするたまり醤油と並べると、白醤油は対照的な位置にある調味料として理解しやすい。愛知県は白醤油の代表的な産地として言及されることが多く、「白醤油 愛知」という検索語が目立つのも、この土地との結びつきへの関心の高さを反映していると考えられる。

色の薄さが分類の軸になる

白醤油は、しょうゆの中でも色の薄さがそのまま品目の呼び名になっている珍しい例である。一般的なしょうゆは熟成の過程で褐色を強めていくが、白醤油は仕込みや熟成の設計そのものが淡い色を保つ方向に振られている。この色の薄さは料理の見た目を左右する実用的な価値でもあり、卵料理や吸い物など素材の色を残したい場面で重宝される。家庭で使う場合も、色の薄さそのものが選ぶ理由になっている点を覚えておくと使い道が見えやすい。

たまり醤油との対照

たまり醤油は濃厚な色ととろみのある質感を特徴とする種類として知られ、白醤油とはしょうゆの中でも対極に位置すると整理できる。両者の仕込み配合や熟成期間を細部まで比較することは本記事の射程を超えるため、ここでは色という軸だけを取り上げる。白醤油を選ぶ場面では、たまり醤油の対極にあるという位置関係を覚えておくと、味の濃淡や色の強弱を判断する目安になる。

食品表示基準における「しろしょうゆ」の定義

しろとたまりは、大豆と麦のどちらを「少量」にするかが逆食品表示基準の別表にある、たまりしょうゆ・うすくちしょうゆ・しろしょうゆの定義を、こうじの原料と色沢の条項で並べた対比図。対比しろとたまりは、大豆と麦のどちらを「少量」にするかが逆食品表示基準の別表は、こうじの原料の組み立てと色の抑え方で書き分けている。たまりしょうゆうすくちしょうゆしろしょうゆこうじの原料大豆、若しくは大豆に少量の麦大豆にほぼ等量の麦少量の大豆に麦(又は小麦グルテンを加えたもの)色沢の条項本記事では取り上げていない色沢の濃化を抑制色沢の濃化を「強く」抑制読みどころうすくちとしろの色の条項の違いは「強く」の一語だけ。ただし原料の大豆と麦の比重も違い、差は色の抑え方と原料の組み立ての二つにある。出典: 食品表示基準 — しろしょうゆの定義(別表)図解:ajimuse.com

食品表示基準の別表は、しょうゆについて、こうじに米や麦を蒸したものやこうじ菌による糖化物を加え、そこに食塩水または生揚げを加えたものを「もろみ」と呼び、これを発酵・熟成させて得られる清澄な液体調味料と定めている[1]。しろしょうゆもこの枠組みの中に位置づけられ、もろみを発酵・熟成させる工程を経て仕上げられる点は他のしょうゆと変わらない。製造工程でセルラーゼ等の酵素(繊維質を分解する酵素の一種とされる)を補助的に使用したものも、この定義上は「本醸造方式によるもの」として扱われる[1]。

もろみを発酵・熟成させて得る清澄な液体調味料

条文の書き方を見ると、しょうゆという品目全体が「もろみを発酵させ、及び熟成させて得られた清澄な液体調味料」という一つの定義の中に収められていることが分かる[1]。白醤油もこの定義から外れるものではなく、あくまでしょうゆという大きな枠組みの内側にある一種として規定されている。もろみにアミノ酸液や酵素分解調味液、発酵分解調味液を加える方式は別項で扱われており、本醸造方式とは区別されている点も読み取れる[1]。

小麦主体のこうじと極度な淡色

別表は、しろしょうゆを、少量の大豆に麦を加えたもの又はこれに小麦グルテンを加えたものをしょうゆこうじの原料とし、かつ、製造工程において色沢の濃化を強く抑制したものと定めている[1]。ここで効いているのは「強く」という一語である。同じ別表のうすくちしょうゆは、製造工程において色沢の濃化を抑制したもの、と書かれている[1]。色を抑えるという方向は共通していて、色沢の条項に限れば、違いは程度を表すこの副詞にある。ただし両者の定義が分かれているのは色沢の条項だけではない。うすくちしょうゆがこうじの原料を大豆にほぼ等量の麦を加えたものとしているのに対し[1]、しろしょうゆは少量の大豆に麦を加えたものとしており[1]、大豆と麦の比重そのものが違う。淡い色という共通点の下に、色の抑え方と原料の組み立ての二つの差が置かれている。

原料の側も対照的である。たまりしょうゆが大豆若しくは大豆に少量の麦を加えたものをこうじの原料とするのに対し[1]、しろしょうゆは少量の大豆に麦を加えたものを原料とする[1]。大豆と麦のどちらを少量にするかが逆向きになっており、五分類の中で両者が対極に置かれることは、色の印象だけでなく原料の書かれ方からも読み取れる。

白醤油の仕込みについては、味りんが米麹をアルコールで仕込むのに対し、白醤油は小麦を主体としたこうじを食塩水で仕込むと説明されている[2]。この仕込みの違いが、白醤油の色の薄さと風味の輪郭を形づくっていると整理できる。色そのものについても、白醤油は極度に淡色であり、食材の持つ本来の色を活かすことができる調味料と位置づけられている[2]。この淡色という特性が、後述する業務・加工用途での需要の広がりにもつながっている。

混濁を防ぐための酵素使用という例外条項

たんぱく質分解酵素だけは、しろしょうゆの濁り止めに限られる食品表示基準の別表が定めるしょうゆ製造での酵素使用を、補助的に広く認めるセルラーゼ等と、しろしょうゆの混濁防止に限るたんぱく質分解酵素の2つに分けて示した構造図。構造たんぱく質分解酵素だけは、しろしょうゆの濁り止めに限られる酵素の使用は本醸造方式の枠の内側。品目名を挙げて目的まで絞るのは、しろしょうゆの項だけ。本醸造方式によるものもろみを発酵・熟成させて得る清澄な液体調味料。その製造工程で使える酵素セルラーゼ等補助的な使用として広く認める使っても本醸造方式として扱われるたんぱく質分解酵素使用条件を個別に絞り込むしろしょうゆのたんぱく質を主成分とする物質による混濁を防止する目的で、生揚げの加熱処理時に使用されるものに限るなぜ白だけか色が淡いぶん、わずかな濁りも目に付きやすい。生揚げを加熱処理するときの混濁を抑える、実務上の目的に対応したものと読み取れる。出典: 食品表示基準 — しろしょうゆの定義(別表)図解:ajimuse.com

食品表示基準の別表は、しょうゆの製造工程で使用できる酵素について、セルラーゼ等は補助的な使用として広く認めつつ、たんぱく質分解酵素に限っては使用条件を個別に絞り込んでいる[1]。その条件として名指しされているのが、しろしょうゆのたんぱく質を主成分とする物質による混濁を防止する目的で、生揚げの加熱処理時に使用されるものに限るという一文である[1]。しょうゆの分類を定める条文の中で、個別の品目名を挙げて酵素使用の目的まで限定する書き方は珍しい。

たんぱく質分解酵素はなぜ例外的に認められるのか

白醤油は色が淡いぶん、わずかな濁りも目に付きやすい調味料である。条文がたんぱく質分解酵素の使用範囲をしろしょうゆに絞って限定しているのは、生揚げ(もろみを搾って得られる加熱前の液体を指す語として使われる)を加熱処理する際に生じる混濁を抑えるという、実務上の目的に対応したものと読み取れる[1]。他のしょうゆの項目にはこうした個別の限定が見当たらず、白醤油だけが名指しで扱われている点は条文の構成として目立つ。

本醸造方式の枠内に置かれた特例

この酵素使用の条件は、もろみを発酵・熟成させて得る「本醸造方式によるもの」という定義の内側に組み込まれている[1]。白醤油は、本醸造方式というしょうゆ全体の枠組みに従いながら、混濁を防ぐという理由から酵素使用の範囲だけを個別に定められている調味料だと整理できる。透明感のある淡い色を保つという白醤油の特徴が、条文の書き方そのものに反映されている例だと言える。

食品表示基準の条文を読むと、色の薄さという白醤油の個性が、単なる見た目の特徴ではなく規定の書き分けにまで及んでいることが分かる。

生産量に占める割合と業務・加工用需要の広がり

しょうゆ全体に占める白醤油の割合は、1974年には0.5%であったが、2005年には0.8%まで増加している[2]。量としてはなお少数派だが、着実に増加してきたと説明されている[2]。

1974年から2005年への変化

1974年から2005年にかけてのこの変化は、しょうゆ全体の生産量と比べればわずかな数字に見えるかもしれない。しかし0.5%から0.8%への増加は、ニッチな存在だった白醤油が業務・加工用の分野で確実に地位を築いてきたことを示す指標として読める。淡色という特性が製菓・製パンや加工食品にとって扱いやすい要素だったことが、この伸びの背景にあると推測できる。

白だしなど業務・加工用への広がり

白醤油は極度に淡色であるため、食材が持つ本来の色を損なわずに仕上げられる調味料として位置づけられており、この特性が業務・加工用、特に白だしなどへの需要の伸びにつながっていると説明されている[2]。家庭向けの小瓶よりも、飲食店や加工食品メーカーが色を残したい用途で選ぶ場面が多いと考えられる。愛知県など中部地方で古くから作られてきた土地の調味料が、こうした加工用途の広がりとともに広く知られるようになった側面もある。

味りんと淡口醤油の中間に位置する調味料

白醤油の仕込みを理解する手がかりとして、味りんとの比較が分かりやすい。味りんは米麹をアルコールで仕込むのに対し、白醤油は小麦主体のこうじを食塩水で仕込む調味料であり、この違いから白醤油は味りんと淡口醤油の融合したものとも言える存在として説明されている[2]。

仕込みの構造を比較する

項目白醤油味りん
こうじの主な原料小麦主体[2]米[2]
仕込みに使う液体食塩水[2]アルコール[2]

表からも分かるように、白醤油と味りんは仕込みに使う麹の原料も液体もそれぞれ異なっている。それでも両者を並べて語られるのは、白醤油の甘みや香りの輪郭が、米麹を使う味りんの領域に近づく側面を持つためだと考えられる。両者の性質を併せ持つ存在として白醤油を捉えると、淡口醤油とは別の角度からその立ち位置を理解しやすくなる。

白だしと白醤油の違い

「白だし 白醤油 違い」という検索語に見られるとおり、両者は混同されやすい。白だしは、白醤油をだし汁や他の調味料と合わせて仕上げた加工調味料として扱われることが一般的で、白醤油そのものとは区別される。白醤油は単体のしょうゆであり、白だしはそれをベースにした二次加工品という位置関係にあると理解すると、買い物の際の使い分けがしやすくなる。

家庭での使いどころ

白醤油は、極度に淡色であるという特性を活かし、卵料理や茶碗蒸し、吸い物、炊き込みご飯など、素材の色を残したい料理で使うと効果が分かりやすい。濃口のしょうゆを使うと汁や具材が茶色く染まってしまう料理でも、白醤油であれば塩味とうま味を加えながら色の変化を抑えられる。

色を残したい料理での効き方

白醤油が向く料理の例として、次のようなものが挙げられる。

  • 茶碗蒸しやお吸い物など、だしの澄んだ色を活かしたい料理
  • 卵料理や白身魚の煮物など、素材そのものの色を残したい料理
  • 炊き込みご飯や酢の物など、仕上がりの色合いを揃えたい料理

いずれも、しょうゆの塩味やうま味は欲しいが色までは付けたくないという場面である。淡口醤油でも色は抑えられるが、白醤油はさらに淡い仕上がりを狙える点で使い分けの選択肢になる。

保存と使い切りの工夫

白醤油は色が淡い分、保存中の変化も目に付きやすい調味料である。開封後は冷蔵保存を基本にし、香りや色の変化を確認しながら早めに使い切ることが望ましい。使い切りのポイントとしては、次のような点に注意すると扱いやすい。

  • 少量ずつ使い切れる小瓶を選ぶ
  • 開封後は冷蔵庫で保存し、直射日光を避ける
  • 色や香りの変化を感じたら、加熱調理を要する料理に先に使う

一度使い切れずに戸棚に置きっぱなしにしてしまう調味料でもあるため、買う前にどの料理で使うかを一つ決めておくと無駄なく使い切りやすい。

結論

白醤油は、小麦主体のこうじを食塩水で仕込み、極度に淡色に仕上げるという仕込みの設計そのものが名前になった調味料である[2]。食品表示基準の条文では、混濁を防ぐための酵素使用がしろしょうゆという品目名を挙げて限定されており、しょうゆの分類の中でも個別の扱いを受けていることが分かる[1]。しょうゆ全体に占める割合はまだ0.8%程度と少数派だが[2]、色を活かす特性が業務・加工用の需要を後押ししてきた経緯もうかがえる[2]。使い始めるなら、卵料理や吸い物など色を残したい一品からにすると、白醤油の特徴が生きやすい。

参考文献

  1. 食品表示基準 — しろしょうゆの定義(別表)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
  2. 白醤油について(日本醸造協会誌)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/102/1/102_1_24/_article/-char/ja

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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