味付け塩・混合調味塩の読み方|「塩」と名乗っていても中身は違う

味付け塩・混合調味塩の読み方|「塩」と名乗っていても中身は違う

味付け塩は食塩にハーブや香辛料を混ぜた調味塩の総称で、食用塩公正取引協議会の規約対象外のため「しお公正マーク」が付かない[4]。塩化ナトリウムの量は商品ごとに違い、原材料欄の並び順を読めばその設計が分かる。

この記事の結論
  • 味付け塩は食塩にハーブや香辛料などを混ぜた調味料で、塩専用の表示ルールの対象外のため、表示審査に通った塩に付くマークが付かない。
  • 原材料は重量の多い順に並ぶため、先頭が「食塩」なら塩主体、香辛料やエキスが先頭ならそちらが塩より重い配合だ。
  • 「食塩が先頭」でも塩化ナトリウムの比率は商品ごとに変わるため、普通の塩の大さじ換算はそのまま使えない。

この記事は「世界の塩 完全ガイド|製法・規格・産地で塩を読み解く」の各論です。

目次

味付け塩・混合調味塩とは何か——塩の量が製品ごとに違う理由

味付け塩(食塩にハーブ、香辛料、乾燥エキスなどを混ぜた調味料の総称)と混合調味塩は、同じ棚に並んでいても中身の設計思想がまったく異なる商品群である。塩そのものを買っているつもりで、実際には塩を土台にした複合調味料を買っている、という状況が起きやすい。輸入食材店で見かける調味塩の多くはこのカテゴリーに属しており、パッケージの見た目だけでは塩化ナトリウムの含有比率を判断できない。

「塩」と名乗るが塩化ナトリウムだけではない

味付け塩という名称自体には、塩化ナトリウムの含有量を規定する意味は無い。塩に何を混ぜるかは商品ごとの設計であり、香辛料主体の製品もあれば、乾燥野菜やだし成分を主体にした製品もある。名称の共通点は「塩を含む調味料である」という一点にとどまり、それ以上の情報は原材料表示を確認しない限り分からない。

クレイジーソルトに代表される調味塩というカテゴリー

クレイジーソルトのような、輸入食材店の棚でよく見かける調味塩は、塩にハーブとスパイスを合わせた商品カテゴリーの代表例として知られている。こうした製品は料理に振りかけるだけで下味と香りづけを同時に済ませられる手軽さが特徴とされ、家庭では肉や野菜のソテーに使われる場面が多い。ただし手軽さの裏側で、塩化ナトリウム以外の原材料がどの程度の比率を占めているかは製品によって幅がある。

規約の対象外という設計が生む価格・塩分のばらつき

味付け塩・混合調味塩は、食用塩の表示に関する公正競争規約の対象に含まれていない[4]。この規約は塩そのものの原材料と製造方法の表示を定めた業界ルールであり、対象範囲は塩化ナトリウムを主体とする製品に限られる。味付け塩がこの枠の外に置かれているということは、塩専用の厳格な表示ルールではなく、一般食品と同じ食品表示基準の枠組みで語られる商品だということを意味する。

同じ「塩」の文字が使われていても、規約の網がかかる商品とかからない商品が同じ棚に並ぶため、買う側は最初は戸惑いやすい。パッケージの表示を注意深く読む習慣を持つきっかけとして、味付け塩は分かりやすい教材になる。

食用塩公正競争規約が求める「原材料と製造方法」の表示

同じ棚の「塩」でも、かかるルールが違う規約対象の塩と味付け塩・混合調味塩を、従う表示ルール・製造工程の表示・原料の名称・しお公正マークで対比した図。対比同じ棚の「塩」でも、かかるルールが違う味付け塩・混合調味塩は食用塩の公正競争規約の対象外。原材料欄は一般食品と同じ食品表示基準で書かれる。規約対象の塩味付け塩・混合調味塩表示のルール食用塩の表示に関する公正競争規約食品表示基準の一般原則製造工程原材料名とともに表示が義務。由緒来歴を追える規約の表示義務はかからない原料の名称「塩」「岩塩」「湖塩」「温泉水」に限定この限定はかからないしお公正マーク審査に合格した商品に付く審査も付与も行われないマークの読み方マークが無い商品について言えるのは「規約の審査対象ではない」ということまで。出典: 規約の概要(食用塩公正取引協議会)/食用塩の表示に関する公正競争規約および施行規則(全国公正取引協議会連合会)/規約解説(食用塩公正取引協議会)図解:ajimuse.com

食用塩の表示に関する公正競争規約は、店頭で売られる塩に対して原材料名と製造方法の表示を義務づけている[1]。他の食品には無い、塩独自の表示ルールだとされている[1]。この規約に沿った表示を審査し、合格した商品には「しお公正マーク」が付与される仕組みになっている[1]。

しお公正マークが示す安心の範囲

食用塩公正取引協議会は、会員が販売する塩について規約どおりの表示がされているかを審査し、合格した商品にだけ会員証紙である公正マークの使用を認めている[1]。このマークは、規約に従った適正な表示がされていることを示すシンボルであり、消費者が購入時の目印にできるものとされている[1]。裏を返せば、マークが無い商品について「規約の審査対象ではない」という以上の判断はこのマークだけからは下せない。

原材料と製造工程の表示は塩独自のルール

規約が求める表示は、原材料名を並べるだけでなく製造工程まで記載させる点に特徴がある[1]。この表示を見たからといって塩の特性がすべて分かるわけではないが、その塩がどのような原料からどう作られたか、いわゆる由緒来歴(トレーサビリティ)を追える設計になっている[1]。塩の作り方が分かるように原材料と製造工程を記載することが義務づけられている、という説明は、規約が単なる成分表示以上の情報開示を狙っていることを示している。

味付け塩・混合調味塩はこの規約の対象外

一方で、味付け塩や混合調味塩には、この規約に基づく審査もしお公正マークの付与も行われない[4]。塩の由緒来歴を追える表示ルールは、あくまで塩化ナトリウムを主体とする製品に向けて設計されたものであり、味付け塩はその枠組みの外側にある。つまり味付け塩の原材料表示は、塩専用規約ではなく、次の章で扱う一般的な食品表示基準の原則に従って書かれている。

食品表示基準の原則と、並び順から読み取れること

味付け塩の原材料欄を読み解く鍵は、食品表示基準が定める表示順のルールにある。この原則さえ押さえれば、規約対象外の商品であっても中身の主従関係をある程度推測できる。

食品表示基準が定める「重量順」の原則

食品表示基準は、使用した原材料を原材料に占める重量の割合が高いものから順に、最も一般的な名称で表示することを定めている[2]。二種類以上の原材料からなる複合原材料を使う場合も、その複合原材料自体の原材料を重量割合の高い順に括弧書きで示す扱いが定められている[2]。この「重量順」という原則は味付け塩・混合調味塩にもそのまま当てはまる一般原則であり、味付け塩の原材料欄の並びも同じルールで作られている。

食用塩公正競争規約における塩の原料名称

規約対象の塩そのものについては、原料に占める重量の高いものから表示するという原則に加えて、塩化ナトリウムを含む原料の名称を「塩」「岩塩(採鉱塩及び岩塩を含む)」「湖塩(塩湖を含む)」「温泉水」のいずれかに限定するという、塩特有の名称ルールが定められている[3]。原料が天日蒸発によって塩化されたものである場合には「天日塩」と表示できる規定もある[3]。添加物についても、粗塩マグネシウムを添加物として用いる場合は「粗塩マグネシウム(にがり)」という表示が認められている[3]。

原料区分規約上の名称備考
海水由来塩重量割合の高い順に表示[2][3]
岩塩由来岩塩採鉱塩を含む[3]
塩湖由来湖塩塩湖を含む[3]
温泉由来温泉水—

このように、規約対象の塩は名称そのものが限定されているのに対し、味付け塩・混合調味塩の原材料名にはこの限定がかからない。味付け塩の原材料欄に「食塩」の次に何が並ぶかは、規約ではなく食品表示基準の重量順原則だけが支配している。

並び順で分かること——塩が先頭に来ない商品

食品表示基準の重量順原則を踏まえると、味付け塩の原材料欄で塩以外の原材料が先頭に来ている商品は、その原材料の重量が塩化ナトリウムより多い設計だと読める[2]。逆に「食塩」が先頭にある商品は、塩化ナトリウムが主体の配合だと判断できる。原材料欄の並び順は、味の設計図をそのまま数値化はしないが、何が主役かという構造は明示している。

  • 原材料欄の先頭が「食塩」→塩化ナトリウムが最も重量割合の高い原材料
  • 原材料欄の先頭が香辛料やエキス類→その原材料の方が塩より重い配合
  • 複合原材料が括弧書きで展開されている場合、括弧内も重量順に並ぶ[2]

塩分計算の落とし穴

原材料欄で分かるのは主役まで、塩分の量は分からない味付け塩の原材料欄から読み取れることと読み取れないことを、2枚のカードで並べた図。並記原材料欄で分かるのは主役まで、塩分の量は分からない食品表示基準が定めるのは表示の順番であって、含有量の数値ではない。読み取れること先頭が「食塩」なら、塩化ナトリウムが最も重い原材料先頭が香辛料やエキス類なら、それが塩より重い配合括弧内の複合原材料も重量順読み取れないこと塩化ナトリウムが何パーセントか同じ「食塩が先頭」どうしでの塩化ナトリウム比率の差計量スプーン単位の塩分換算(確認した資料の範囲では基準がない)置き換えるときは別の味付け塩へ替えるなら並び順を見比べる。普通の食塩へ替えるなら、香りづけの原材料が丸ごと無くなる前提で分量を見直す。出典: 食品表示基準 — 原材料名の表示(重量の割合の高い順)図解:ajimuse.com

味付け塩を使ってレシピの塩分を管理しようとすると、名称の印象と実際の配合のずれにつまずきやすい。この章では、原材料表示だけでは埋まらない情報の空白を整理する。

「塩」の文字だけで塩分量を推測しない

味付け塩という名称や、原材料欄の先頭に「食塩」とあるという事実は、その商品の塩化ナトリウム含有量が何パーセントかを直接示すものではない。食品表示基準が定めるのは表示順の原則であり[2]、含有量そのものの数値表示を義務づける規定ではない。したがって、同じ「食塩が先頭」の味付け塩でも、二番目以降にどれだけの重量の原材料が続くかによって、実際の塩化ナトリウム比率は商品ごとに変わり得る。

大さじ・小さじ換算がそのまま使えない理由

食用塩公正競争規約は塩化ナトリウムを含む原料の名称や製造工程の表示を定めているが[1][3]、味付け塩に対して計量スプーン単位の塩分量を換算するための基準は、今回確認した資料の範囲では定められていない。塩の種類によって粒の大きさや密度が違えば同じ体積でも重量は変わるため、純粋な食塩を前提にした大さじ・小さじの目安を、味付け塩にそのまま当てはめることはできない。規定が無い以上、家庭で塩分量を管理する際は体積ではなく、可能な範囲で商品ごとの表示情報を都度確認する姿勢が必要になる。

レシピを置き換えるときの注意点

海外のレシピで指定された調味塩を、手元にある別ブランドの味付け塩や普通の食塩に置き換える場面は多い。この置き換えでずれるのは香りだけではなく、原材料の並び順が示す塩化ナトリウムの比率そのものである。置き換え先の原材料欄で食塩が何番目に来ているかを確認し、先頭にあるか後方にあるかだけでも判断材料にする価値がある。

  • レシピ上の調味塩を別の味付け塩に置き換える→原材料欄の並び順を見比べる
  • 味付け塩を普通の食塩に置き換える→香りづけの原材料が丸ごと無くなる前提で分量を見直す
  • 減塩を目的に置き換える→表示された重量順から塩化ナトリウムの比率が高いか低いかを推測する

用途別の選び方

味付け塩・混合調味塩と、規約対象の塩は、そもそも使う目的が異なる道具として棚に並んでいる。原材料表示の読み方が分かれば、目的に合わせた選び方も見えてくる。

純粋な塩化ナトリウムが必要な場面

漬物や発酵食品の仕込みなど、塩化ナトリウムの量そのものをコントロールしたい場面では、香辛料やエキス類が混ざった味付け塩よりも、原材料が「塩」「岩塩」「湖塩」「温泉水」のいずれかに限定される規約対象の塩の方が扱いやすい[3]。しお公正マークの有無は、その商品が規約の審査対象であることの目印であり[1]、原材料構成を確認する際の起点になる。

味付け塩・混合調味塩を使い切る場面

一方で、下味と香りづけを一度に済ませたい料理では、味付け塩や混合調味塩の方が手数を減らせる。肉や魚の下ごしらえ、野菜のソテー、卵料理の仕上げなど、家庭では複数の調味料を順番に加える代わりに、味付け塩一本で済ませやすい場面がある。使い切りを意識するなら、原材料欄の先頭に来ている原材料が何かを確認し、その香りや風味が合う料理から優先的に使う組み立てが現実的である。

風味の作り方は別の論点として切り分ける

ハーブ塩や燻製塩がどのようにして香りを塩に乗せているか、という製法面の話は、原材料表示の読み方を扱う本記事の主題とは別の論点である。今回確認できたのは、塩の表示ルールと味付け塩がその枠外に置かれているという構造までであり、香りの付与方法についてはここでは扱わない。

棚の前で迷ったときは、香りの強さよりも先に原材料欄の並び順を確認しておくと、次に同じ商品を買うかどうかを判断しやすくなる。

結論

味付け塩・混合調味塩は、食用塩公正取引協議会の規約対象外に置かれているために、しお公正マークが付かず、塩専用の原料名称ルールも適用されない商品群である[3][4]。その代わりに原材料欄を支配しているのは、食品表示基準が定める重量割合の高い順という一般原則であり[2]、この原則を知っているかどうかで原材料欄から読み取れる情報量が変わる。

原材料表示から読み取れること

原材料欄の先頭に「食塩」があるかどうかは、その商品が塩化ナトリウム主体の設計か、香辛料やエキス類主体の設計かを見分ける最初の手がかりになる。ただし具体的な含有パーセンテージまでは、今回確認した資料の範囲では表示義務が定められていないため、並び順以上の精度を求めるのは難しい。

次に確認すべきこと

手元の味付け塩・混合調味塩を使う際は、まず原材料欄で食塩が何番目にあるかを確認し、香りづけの原材料が多いのか塩そのものが主体なのかを見極めるところから始めるとよい。減塩や漬物の仕込みなど塩化ナトリウムの量を厳密に管理したい用途では、味付け塩ではなく規約対象の塩を選び、しお公正マークの有無を確認材料に加える方法が現実的である。

参考文献

  1. 規約の概要(食用塩公正取引協議会)
    https://www.salt-fair.jp/action/
  2. 食品表示基準 — 原材料名の表示(重量の割合の高い順)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
  3. 食用塩の表示に関する公正競争規約および施行規則(全国公正取引協議会連合会)
    https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/d07_H_sio.pdf
  4. 規約解説(食用塩公正取引協議会)
    https://www.salt-fair.jp/explain/

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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