日本の食品表示基準は「香味食用油」を、食用植物油脂に香味原料(香辛料、香料又は調味料)等を加えたものであって、調理の際に当該香味原料の香味を付与するものと定義しており[1]、ラー油はこの定義に当てはまる形の食品である。一方、英語の chili oil を定義する一次資料は本記事の参考資料のなかには見当たらない。同じ瓶の中身でも、どの制度・分類体系から見るかによって呼び名の位置づけが変わる。輸入食材店で「Chili Oil」と書かれた瓶を手に取ったとき、それが日本の分類でどこに属するのかを知っておくと、代用や使い分けの判断がしやすくなる。
- ラー油は、食用の植物油に唐辛子などの香辛料を加えて香味を移した油で、日本の表示基準では「香味食用油」にあたる。
- ラー油の分類は、日本の表示基準では油脂、成分表では辛味調味料類、中国の辣椒油の規格では調味品と分かれる。
- チリオイルを材料や製法の違う別物とは言い切れず、日本の成分表ではラー油の英名がChinese chili oilである。
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日本の食品表示基準における「香味食用油」という枠
香味食用油の定義
食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の別表は、食用油脂の分類を細かく定めている。そのなかで「香味食用油」は、中欄に掲げる食用植物油脂に香味原料(香辛料、香料又は調味料)等を加えたものであって、調理の際に当該香味原料の香味を付与するものと定義される[1]。ここでのポイントは、油そのものが主体であり、香辛料は油に香味を移すための材料という位置づけになっている点である。食用調合油が食用植物油脂(香味食用油を除く)を二以上調合したものであるのに対し、香味食用油は香味原料を加え、調理の際にその香味を付与する点で区別される[1]。
ラー油はどこに位置するか
ラー油は、ごま油や菜種油などの食用植物油脂に唐辛子などの香辛料を加えて香味を移した油であり、この香味食用油の定義に当てはまる形の食品である。瓶を手に取ったときは、原材料表示で食用植物油脂と香辛料がどう書かれているかを見ると、この構造を確かめやすい。名称欄に「ラー油」「辣油」とだけ書かれている場合でも、原材料表示を見れば香味食用油としての構造が読み取れる。
ラベルを読むときに見るべき項目
家庭で瓶を選ぶときに確認しやすい項目を整理すると、次のようになる。
- 名称欄:「ラー油」「辣油」「香味油」などの表記があるか
- 原材料名:食用植物油脂が先に来ているか、香辛料や調味料がどう記載されているか
- 添加物欄:着色料や酸化防止剤の有無
これらは食品表示基準の分類そのものを直接示すものではないが、香味食用油という枠組みを踏まえて原材料表示を読むと、油と香辛料のどちらが主材料として扱われているかが把握しやすくなる。日本の制度では香味食用油という定義が先に用意されており、ラー油はその定義に当てはまる形の食品として読むという構造は、ラベルを見るだけでは気づきにくい。
中国の業界規格SB/T 11192-2017が定める「辣椒油」
辣椒油は調味品である
中国商務部の国内貿易行業標準SB/T 11192-2017は、辣椒油を、辣椒(唐辛子)と食用植物油を主要原料として加工した調味品と定義する[2]。日本の食品表示基準が油脂の分類として香味食用油を扱うのに対し、この規格は辣椒油を最初から調味品(調味料)として位置づけている点が異なる。原材料は辣椒と食用植物油が主要原料とされ、食品添加剤やその他の副原料についても、それぞれ関連する規定に適合することが求められる[2]。
感官要求という項目
同規格は感官要求(見た目・香り・味・状態に関する要求)として、次のような項目を定める[2]。
- 色沢:黄色から紅色であること
- 香気:植物油固有の香りと辣油香を持ち、異臭がないこと
- 滋味:辛味があり、異味がないこと
- 体態:油状で澄み、均一であること
これらは数値ではなく状態の記述であり、色味の幅や香り・味の性質を定性的に示したものである。
数値規定については確認できる範囲にとどめる
同規格には理化指標(物理化学的な指標)として辣椒素類物質総量、水分及び揮発物、雑質に関する項目名が存在する[2]。ただし参考文献に挙げた資料は第三者サイトに掲載された印刷版である。したがってこれらの項目が規格上定められていること自体は述べるが、辣椒素含量や水分の許容範囲を示す数字は引かない。規格の存在と項目名は確認できても、数値までは確認できていないという区別を残しておくことが、誤った基準値を広めないために必要である。
制度の入り口が油脂の分類か調味品の定義かによって、同じ種類の製品にも別の分類の言葉が当てられることになる。
日本の食品成分表におけるラー油の分類
調味料及び香辛料類のなかの辛味調味料類
文部科学省の食品成分データベースでは、ラー油は食品番号17006として登録されており、食品群名は「調味料及び香辛料類/<調味料類>/(辛味調味料類)/ラー油」である[3]。栄養成分の観点からラー油を分類すると、香辛料そのものではなく調味料類のなかの辛味調味料類という位置づけになる。これは、油に唐辛子の辛味成分が移された結果として辛味調味料として扱われていることを示している。
英名Chinese chili oilが示す位置づけ
同データベースの英名表記は「SEASONINGS AND SPICES/Hot seasoning/Chinese chili oil」である[3]。ここでラー油は英語でChinese chili oilと表記されている。この英名表記から分かるのは、日本の栄養成分データベースの枠組みのなかでは、ラー油は「中国式のチリオイル」として英訳されているという事実であり、chili oilという語そのものの一次的な定義がここにあるわけではない。
「チリオイル」という呼び名の実像
参考資料が定義している名称
英語の chili oil を定義する一次資料は、本記事の参考資料のなかには見当たらない。中国の規格SB/T 11192-2017が定義するのは「辣椒油」という中国語の名称であり[2]、日本の食品表示基準が定義するのは「香味食用油」という日本語の分類名である[1]。本記事の参考資料で chili oil という英語表記が現れるのは、食品成分データベースがラー油の英名にChinese chili oilを当てている箇所である[3]。
呼称の違いとして扱う姿勢
以上を踏まえると、ラー油とチリオイルの違いを「原材料や製法が異なる別の調味料」として説明するのは、本記事の参考資料の範囲を超える。確認できるのは、ラー油が日本の食品表示基準の香味食用油の定義に当てはまる形の食品であり、食品成分データベース上は辛味調味料類に位置づけられ、その英訳としてChinese chili oilという語が当てられているという事実である[1][3]。中国の辣椒油という調味品の定義と[2]、英語の chili oil という呼び名は、同じ制度上の言葉ではない。
具入りラー油や銘柄選びとの境界
「食べるラー油」は別の話
唐辛子やにんにく、フライドオニオンなどの具材が多く入った「食べるラー油」は、香味食用油としての基本構造に加えて具材の割合が大きく変わる製品群である。本記事で扱った食品表示基準や食品成分データベースの分類は、油と香味原料という構成に基づくものであり、具材の量や種類による銘柄ごとの違いまでは説明していない。
本記事の範囲
個別の銘柄比較や「食べるラー油」の具材構成の違いといった話題は、品目ごとの情報を整理したページの範囲であり、調味料としての制度上の位置づけと呼称の違いに絞って扱った。ラベルを見て香味食用油や辛味調味料類という分類を思い出せれば、具入りタイプかどうかを判断する材料の一つになる。
結論
ラー油とチリオイルの違いは、本記事の参考資料から言える範囲では、原材料や製法の違いとしてではなく、言葉が異なる制度・分類体系のなかでどう位置づけられているかの違いとして整理できる。ラー油は日本の食品表示基準が定める香味食用油の定義に当てはまる形の食品であり[1]、食品成分データベースでは調味料及び香辛料類のなかの辛味調味料類、英名Chinese chili oilとして登録されている[3]。中国の規格SB/T 11192-2017は辣椒油という調味品を色・香り・味・状態の面から定義しているが[2]、chili oilという英語の呼び名そのものを定義した一次資料は本記事の参考資料のなかには見当たらない。瓶を選ぶときは、名称欄の表記よりも原材料表示を確認し、油が主体か具材が主体かを見分けることが、次に取るべき具体的な一歩になる。
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参考文献
- 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第三・別表第四(e-Gov法令API)
https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010 - 中華人民共和国商務部 国内貿易行業標準 SB/T 11192-2017「辣椒油」(第三者サイト掲載の印刷版。規格の存在と現行は全国标准信息公共服务平台で確認)
https://www.shingvip.com/file/upload/201908/01/082915675.pdf - 文部科学省 食品成分データベース「ラー油」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 食品番号17006)
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=17_17006_7
