パプリカの色価(ASTA値)早見表|米国規格とスペイン・フランスの産地規定

パプリカの色価(ASTA値)早見表|米国規格とスペイン・フランスの産地規定

パプリカの色価(ASTA値)は赤い色素の濃さを表す指標で、米国の調達規格A-A-20001Cはパプリカの下限を110以上と定める[1]。スペインのムルシアDOPは等級で90または120以上[2]、ラ・ベラDOPは挽いた時点で90以上と規定し[3]、エスプレットAOPは数値でなく色の言葉で定める[5]。

この記事の結論
  • パプリカの色価(ASTA値)は、粉にしたときの赤い色の濃さを数値で表す指標だ。
  • 米国農務省の調達規格は色価110以上を下限とし、スペインのラ・ベラ産の産地規定は挽いた時点で90以上とする。
  • これらの数値は規格が定める下限で、手元の一瓶の実測値ではなく、辛さや香りは別の項目だ。

この記事は「世界の単一スパイス完全図鑑|ISO命名で読む香辛料の地図」の各論です。

目次

色価(ASTA値)とは

パプリカの色価とは、粉にしたときの赤い色の濃さを数値で表す指標である。単位には ASTA(American Spice Trade Association、米国スパイス貿易協会)の名が付く。ラ・ベラDOPの仕様書は、挽いた時点の色価を最終製品の品質基準の一つに置いている[3]。

数値で決めるか、言葉で決めるか

4つの文書は、ASTAという単位で色の下限を示すか、単位を使わず言葉で色を示すかのどちらかを取っている[1][2][3][5]。米国の調達規格とスペインの2つのDOPは前者、フランスのAOPは後者である。同じ「色の規定」でも、書き方は文書ごとに異なる。

品種の色が製品の色を左右する

ラ・ベラDOPの仕様書は、乾燥させた果皮(カスカラ)の色の度合いを、パプリカの着色の質を左右する要素として挙げ、品種ごとの色価の幅を記している[4]。

早見表|規定の出どころと値

以下の表は、4つの文書が示す色の規定を一覧にしたものである。行は米国の調達規格1件、ムルシアDOPの2等級、ラ・ベラDOPの製品全体と品種、フランスのAOPの1件で、合計5行に整理した。

出典・文書(発行日)対象色の決め方値
USDA A-A-20001C(2023-08-28)[1]米国の調達規格、パプリカ数値の下限ASTA 110以上
ムルシアDOP 仕様書(2023-02-24)[2]エクストラ等級数値の下限ASTA 120以上
ムルシアDOP 仕様書(2023-02-24)[2]プリメーラ等級数値の下限ASTA 90以上
ラ・ベラDOP 仕様書(2025-04-02施行)[3][4]製品全体(挽いた時点)/品種別(ハランダ・ハリサ・ヘロミン・ボラ)数値の下限と品種ごとの幅全体90以上/ハランダ140〜200・ハリサ130〜200・ヘロミン120〜190・ボラ90〜140
INAO 単一文書(2024-07-18)[5]エスプレットAOP、粉言葉による色相の表現INAOの単一文書(2024-07-18)には数値の下限が書かれていない。粉の色は「オレンジから赤褐色」

米国とスペインの数値による規定

USDAのCommercial Item Description A-A-20001C(2023-08-28)は、表Iの「Color ASTA Unit」列でパプリカの行に「110-Min」と記載し、ASTA110以上を下限とする[1]。同じ表のチリパウダーの行は色の欄が空欄で、辛さの欄だけが埋まっている。同じ調達規格の中でも、パプリカには色の下限があり、チリパウダーには色の要件が無い[1]。ムルシアDOPの仕様書(2023-02-24)は色価を等級ごとに分け、エクストラで120以上、プリメーラで90以上と定める[2]。

ラ・ベラDOPの品種別の幅

ラ・ベラDOPの仕様書(2025-04-02施行)は、最終製品の色価について「挽いた時点で」ASTA90以上という下限を定める[3]。同じ仕様書は品種ごとの色価の幅も示す。オカレス系の3品種はハランダが140〜200、ハリサが130〜200、ヘロミンが120〜190で、これとは別にボラが90〜140である[4]。品種ごとの幅は仕様書が品種の特性として記す範囲で、90以上という製品全体の下限とは別の記述である。

数値で下限を切る規定

米国、ムルシア、ラ・ベラの3つの文書は、いずれも数値で下限を切るが、切り方は一律・等級別・品種の幅つきという3通りに分かれる。

  • 一律の下限:米国の調達規格はパプリカという品目全体に110以上という一つの数値を当てる
  • 等級別の下限:ムルシアDOPはエクストラとプリメーラという2等級に異なる下限を当てる
  • 品種の幅つきの下限:ラ・ベラDOPは製品全体の下限90以上に加え、品種ごとに幅のある数値を併記する

一律の下限(米国)

USDAの調達規格は、パプリカという品目全体に対して110以上という一つの数値を当てる[1]。等級や品種による区別を設けず、規格を満たすかどうかの線を1本だけ引く形になっている。パプリカの行には水分や灰分などの欄も並ぶが、色の欄に書かれているのは110-Minの1つである[1]。

等級別の下限(ムルシアDOP)

ムルシアDOPの仕様書は、同じ産地呼称の中でエクストラとプリメーラという2つの等級を設け、それぞれに異なる下限を当てる[2]。エクストラは120以上、プリメーラは90以上である[2]。同じ表には色価のほかにも項目が並び、エーテル抽出物・灰分・粗繊維は等級で値が分かれる一方、水分とカプサイシンの上限は両等級で同じ値である[2]。等級は色価だけでなく、複数の項目の組み合わせで区分されている。

品種の幅を示す下限(ラ・ベラDOP)

ラ・ベラDOPの仕様書は、製品全体に90以上という下限を置いた上で、品種ごとに数値の幅を併記する[3][4]。この幅は下限だけでなく上限も示す点で、米国の一律基準やムルシアの等級別基準とは書き方が異なる。ハランダやハリサのように上限側が200まで広がる品種もあれば、ボラのように140までにとどまる品種もある[4]。

言葉で決める規定|エスプレットAOP

エスプレットAOPは、これまでの3件と異なり、色を数値ではなく言葉で規定する文書である。

単一文書が示す色の表現

INAOが公開するエスプレットAOPの単一文書(2024-07-18)は、粉の色を「オレンジから赤褐色(orangée à rouge brun)」という言葉で示す[5]。この単一文書には、ASTA値のような数値による下限は書かれていない[5]。文書はあわせて、香りの強さや粒の細かさについても記述しているが、色に関する項目は言葉による表現にとどまっている[5]。

数値が無いことの意味

色の数値の下限が書かれていないのは、INAOの単一文書(2024-07-18)という要約の文書についての事実である[5]。仕様書本体(cahier des charges)は本記事の出典に含めていないので、本体に数値の規定があるかどうかは、ここでは確かめていない。

表の読み方と使い方

早見表に並ぶ数値の性質と、比べる際の注意点を整理する。

下限値と実測値の違い

米国・ムルシア・ラ・ベラ(製品全体)の数値は、規格や仕様書が下限として定めた値であり、手元にある一瓶の中身を測った値ではない[1][2][3]。ラ・ベラDOPの品種ごとの値は、仕様書が示す品種の特性としての幅であって、個々の製品が必ずその範囲に収まっていることを保証する測定結果ではない[4]。表を引くときは、この違いを踏まえておく必要がある。

4つの文書を比べるときの注意

単位はいずれもASTAだが、測定する時点や対象は文書ごとに異なる。ラ・ベラDOPの90以上という数値は「挽いた時点」の値と明記されている[3]。米国とムルシアの値がどの時点のものかは、本記事が引いた箇所には書かれていない。そのため、文書をまたいで数値を並べ、どちらが濃いと言い切ることはできない。

料理での使い分けと関連情報

色価が示すのは色の濃さで、辛さや香りは別の項目である。ムルシアDOPの仕様書も、カプサイシンの上限を色価とは別の項目として定めている[2]。燻製の工程やラ・ベラの産地についてはパプリカとスモークパプリカで、唐辛子粉全体の種類分けは唐辛子粉・チリパウダー図鑑で扱っている。

結論

早見表が示す3つの切り方

本記事で並べた5行の早見表は、米国の調達規格が110以上という一律の下限を[1]、ムルシアDOPがエクストラ120以上・プリメーラ90以上という等級別の下限を[2]、ラ・ベラDOPが挽いた時点で90以上という下限と品種ごとの幅を、それぞれ数値で示していることを整理したものである[3][4]。エスプレットAOPの単一文書(2024-07-18)には数値の下限が書かれておらず、粉の色は「オレンジから赤褐色」という言葉で示されている[5]。

早見表を使うときの確認手順

パプリカ粉やピメントンの容器に DOP・AOP の産地呼称や等級名(ムルシアのエクストラ・プリメーラなど)が書かれていれば、表の該当する行で規格上の色の規定を引ける。数値を比べるときは、測る時点や対象が文書ごとに異なるので、同じ物差しとして扱わない。

参考文献

  1. USDA AMS「Commercial Item Description A-A-20001C: Spices and Spice Blends」
    https://www.ams.usda.gov/sites/default/files/media/CID Spices and Spice Blends.pdf
  2. スペイン農業・漁業・食料省「DOP Pimentón de Murcia 仕様書(Pliego de condiciones)」
    https://www.mapa.gob.es/dam/mapa/contenido/alimentacion/temas/calidad-agroalimentaria/2017-calidad-diferenciada/nuevo_denominaciones/pliegos-de-condiciones/pliego-condiciones-agroalimentarios/pimenton_murcia_2023_02_24.pdf
  3. スペイン農業・漁業・食料省「DOP Pimentón de la Vera 仕様書(Pliego de condiciones)」— 最終製品の色
    https://www.mapa.gob.es/dam/mapa/contenido/alimentacion/temas/calidad-agroalimentaria/2017-calidad-diferenciada/nuevo_denominaciones/pliegos-de-condiciones/pliego-condiciones-agroalimentarios/pimenton_de_la_vera_2025_04_02.pdf
  4. スペイン農業・漁業・食料省「DOP Pimentón de la Vera 仕様書」— 品種ごとの色の幅
    https://www.mapa.gob.es/dam/mapa/contenido/alimentacion/temas/calidad-agroalimentaria/2017-calidad-diferenciada/nuevo_denominaciones/pliegos-de-condiciones/pliego-condiciones-agroalimentarios/pimenton_de_la_vera_2025_04_02.pdf
  5. INAO「AOP Piment d’Espelette 単一文書(Document unique)」
    https://extranet.inao.gouv.fr/fichier/DU-PimentEspelette-18.07.24-avec-modifs.pdf

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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