スマックは、ウルシ科植物Rhus coriaria L.の果実を乾燥させた赤紫色の酸味スパイスで、トルコの香辛料告示2022/7は食塩を重量比最大6%加えて挽いた形も定義に含む[1][3]。酸味を担う成分としてはリンゴ酸が挙げられており、肉・魚の下味からヨーグルトソースの酸味づけまで幅広く使われる[3][4]。
- スマックはウルシ科の植物の果実を乾燥させた赤紫色の酸味スパイスで、酸味のもとはリンゴ酸とされる。
- トルコの食品規則は食塩を重量比で最大6%加えて挽いた形もスマックと定め、日本の業務用製品にも食塩配合のものがある。
- カシューナッツと同じウルシ科なので、その食品にアレルギーがある人は使う前に注意したほうがよい。
この記事は「世界のスパイスの種類と産地|ISO命名で読む単一スパイス完全図鑑」の各論です。
スマックとは何の実か
トルコ香辛料告示2022/7第4条の定義
トルコ農業森林省が定める食品法典香辛料告示(Tebliğ No: 2022/7、官報2022年4月19日第31814号)の第4条43項は、スマック(Sumak)を、Rhus coriaria L.(Anacardiaceae)種に属する植物の熟した果実を収穫し、技術に従って乾燥させたのちの全形、もしくは食塩(重量比で最大6%)を加えて挽いた全形、または挽いた果皮と定義している[1]。この条文には、丸ごとの乾燥果実、食塩入りで挽いたもの、果皮を挽いたものという三つの形がひとつの条項に並んでおり、どれも「スマック」という同じ名称で扱われる。学名Rhus coriaria L.と科名Anacardiaceae(ウルシ科)が条文内に明記されている点は、他の資料と対照する際の基準になる。
ISO 24052:2022が対象とする「rubbed form」
国際標準化機構(ISO)が2022年5月に発行したISO 24052:2022「Spices and condiments — Dried sumac — Specification」は、第1版(Edition 1)として公開済み(Status: Published)の規格である[2]。この規格が対象とするのは、ウルシ科(family Anacardiaceae)のRhus coriariaのrubbed form(擦り砕いた形状)の乾燥スマックであり、保管・輸送条件に関する推奨事項は附属書Aに置かれている[2]。規格本文は有償であり、公開されている頁から確認できるのは対象範囲(scope)と発行状況までで、水分含量や灰分といった具体的な規定値は、本記事が参考にした資料の範囲では確認できない。
ウルシ科という学名のつながり
トルコの告示とISO規格は、どちらもRhus coriaria L.、ウルシ科という同じ学名・科名でスマックを指定している[1][2]。名称や挽き方の規定は国・規格によって書き分けられているが、原料となる植物種そのものについては両者が同一のものを指していると読める。この学名の一致は、後述するアレルギーの注意点(カシューナッツと同じ科であること)を理解するうえでも基礎になる。
名前の由来と酸味の正体
シリア語「赤」説という一つの見方
スマックという名前の由来について、Alsamriらの総説(Molecules 2022、PMC9414570)は、シリア語で「赤」を意味する「Sumaga」に由来すると考える人がいると紹介している[3]。この語源は複数の説のうちの一つとして紹介されているものであり、同論文もこれを唯一の正解として断定しているわけではない。語源そのものよりも、実の色が赤いという特徴が名称と結びついているという点が、この説から読み取れる共通項である。
生の実と乾燥させた赤紫の粉
同論文によれば、スマックの実は食べられる酸味のある果実で、生の実を茶にして飲む利用法もあるが、多くの場合は乾燥させて砕き、赤紫色の細かい粉にして調味料として使われる[3]。
酸味を担うリンゴ酸
スマックの酸味を担う成分として資料が挙げるのは、リンゴ酸(malic acid)である。PMC9414570は、スマックの実には、りんごにも含まれるリンゴ酸が含まれていると述べており[3]、Sakhr・El Khatibによるレバノンのスマックについての研究(Heliyon 2020、PMC7002821)も、Bahar and Altug(2009)の研究を引用し、Rhus coriariaの三つの抽出物をGC/MSとフレーバープロファイル分析で調べたその研究で、スマックの実の酸味を担う成分であるリンゴ酸が有意なレベルで検出されたと紹介している[4]。同論文は、リンゴ酸が酸味調整剤(acidity regulator)として一般に利用される成分であるとも述べている[4]。
売られている形と「塩入り」の表示
2022年告示が挙げる三つの形
トルコの香辛料告示2022/7第4条43項が定義として挙げるスマックの形は、次の三つである[1]。
- 熟した果実を収穫し乾燥させたあとの全形(丸ごと)
- 食塩を重量比で最大6%加えて挽いた全形
- 挽いた果皮
同じ条項のなかに「塩を加えたもの」と「加えないもの」の両方が並んでいる点が特徴で、どちらも等しく「スマック」という名称で扱われている。
2000年告示との比較で見える変化
トルコには2022/7より前に、2000年7月31日の官報第24126号で公布されたTebliğ No: 2000/16という香辛料告示があった。この旧告示は、スマックを、Rhus coriaria L.種に属する植物の果実を技術に従って乾燥させたのちに、一定割合の食卓塩(sofra tuzu)を加えて挽いたものと定義しており、食卓塩を加えて挽いた形だけを定義として挙げていた[5]。これに対して2022年の告示は、丸ごとの形と果皮を挽いた形を加え、食塩の扱いも、一定割合(belirli oranda)という書き方から、重量比で最大6%(ağırlıkça en fazla %6)という上限値つきの書き方に変わっている[1][5]。
| 告示 | 公布年 | 定義される形 | 食塩の扱い |
|---|---|---|---|
| Tebliğ No: 2000/16 | 2000年 | 挽いたもの(食卓塩入り) | 一定割合の食卓塩を加えると規定[5] |
| Tebliğ No: 2022/7 | 2022年 | 丸ごと/挽いたもの(食塩入り)/果皮を挽いたもの | 食塩は重量比最大6%、加えない形も定義に含む[1] |
日本の業務用製品に見る食塩配合の表示
日本国内では、ハウスギャバン株式会社が業務用スマックパウダーの商品情報頁で、商品の特徴として「食塩配合あり」と明記している[6]。同社の頁には、原産国の表記やトルコの香辛料告示への言及は見当たらず、食塩配合の理由についての説明もない。トルコの告示が食塩入りの形を定義に含めていること[1]と、日本で販売される製品の一部に食塩配合のものが実際にあること[6]は、それぞれ別の出典に基づく別の事実であり、スマックを購入する際には、原材料表示や商品説明で食塩の有無を確認することが実務上の確認点になる。
スマックの使い方
肉・魚・卵料理への利用
PMC9414570は、スマックの使われ方として次のような用途を挙げている[3]。
- 地中海地域全域で、塩や玉ねぎと合わせて焼いた肉の調味に使う
- 北アフリカでは、肉・鶏肉・魚にすり込んで使うことが多い
- マリネの材料に加える
- 卵料理やサラダに加えて風味を引き立てる
- 赤い色を生かして使う
ヨーグルトソースとヴィネグレット
同論文は、スマックがヨーグルトソースやヴィネグレット(油と酢を基本とするドレッシング)の風味と酸味を高めるためにも使われると述べている[3]。
日本国内メーカーが挙げる使用例
ハウスギャバン株式会社は、スマックパウダーの使用例として、料理中に加える用途として豆や玉ねぎのサラダ・魚のマリネを、仕上げに使う用途としてドレッシング・ヨーグルトソース・フムス・サラダ・肉や魚料理のトッピングを挙げている[6]。同社はまた、スマックの酸味を「赤しそに似た酸味」と説明している[6]。PMC9414570が挙げる用途[3]と、国内メーカーが挙げる使用例[6]は、ヨーグルトソースやサラダ、マリネといった場面で重なりが見られる。
気をつけること
ウルシ科アレルギーへの注意
PMC9414570は、スマックがカシューナッツと同じウルシ科(Anacardiaceae)に属することから、そうした食品にアレルギーがある人は、アレルギー反応を避けるためにスマックの利用に注意したほうがよいだろうと述べている[3]。ウルシ科という分類は、トルコの告示とISO規格の両方がスマックの学名とともに明記している点でもある[1][2]。
poison sumacとの違い
同論文は、poison sumac(Toxicodendron vernix)もウルシ科に属するが、白い実をつける点で、赤い実をつける食用スマック(Rhus coriaria)とは別の植物であると説明している[3]。名前に「スマック」を含む植物が複数あるという事実は、果実の色という見分け方と合わせて押さえておく価値がある区別である。
結論
ISO 24052:2022の公開範囲
ISO 24052:2022は2022年5月に発行された第1版の国際規格で、現在の状態はPublished(発行済み)である[2]。公開頁で確認できるのは、rubbed formの乾燥スマック(ウルシ科Rhus coriaria)を対象とすること、および保管・輸送条件の推奨事項が附属書Aに置かれていることまでで、水分や灰分といった数値規定は本記事が参考にした資料の範囲では確認できない。トルコの香辛料告示についても、食塩の配合上限(重量比最大6%)以外の附属書の数値表は、本記事が参考にした資料では確認できていない。
記事の射程(ザータルとの違い)
ザータルと呼ばれるスパイスブレンドの配合や地域差、料理への使い方は、スマック単体の定義・形状・注意点を扱う本記事の範囲を超える。本記事が扱ったのは、トルコの告示とISO規格に基づくスマックそのものの定義、酸味の成分、食塩入りの形の扱い、そしてアレルギーに関する注意点である。
スマックを選ぶときに確認する点
スマックを購入する際に確認できる点は、トルコの告示とISO規格、国内メーカーの商品情報という異なる出典から次のようにまとめられる。
- 原材料表示に食塩が含まれているかどうか(トルコの告示は食塩入り・食塩なしの両方を定義に含む[1])
- 粉末か、果皮を挽いたものか、丸ごとの形かという製品の形状[1]
- ウルシ科の食品(カシューナッツなど)にアレルギーがある場合は使用前に注意すること[3]
関連記事
参考文献
- トルコ農業森林省 Türk Gıda Kodeksi Baharat Tebliği(Tebliğ No: 2022/7)
https://www.resmigazete.gov.tr/eskiler/2022/04/20220419-4.htm - ISO 24052:2022 Spices and condiments — Dried sumac — Specification
https://www.iso.org/standard/77637.html - Alsamri et al., Rhus coriaria L. (Sumac), a Versatile and Resourceful Food Spice(Molecules 2022・PMC9414570)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9414570/ - Sakhr・El Khatib, Physiochemical properties and medicinal, nutritional and industrial applications of Lebanese Sumac(Heliyon 2020・PMC7002821)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7002821/ - トルコ Baharat Tebliği(Tebliğ No: 2000/16)
https://faolex.fao.org/docs/pdf/tur110083.pdf - ハウスギャバン株式会社 商品情報 スマックパウダー
https://www.housegaban.com/products/spice/spicy/50
