ガーリックパウダーとは|国際規格の水分上限と米国表示での扱い

ガーリックパウダーとは|国際規格の水分上限と米国表示での扱い

ガーリックパウダーは、にんにくの鱗片や球を乾燥させて得る乾燥にんにく製品で、国際規格CXS 347-2019は粉状の水分上限を7.0%、粉以外を8.0%と定める[1][3]。米国の食品表示では「スパイス」の定義から除外され、garlic powderという一般名での表示が求められる[5][6]。粗い粒のタイプと細かい粉のタイプの違いも、この規格の形状の区分に沿って整理できる[2]。

この記事の結論
  • ガーリックパウダーは、にんにくの鱗片や球を乾燥させ、粉にした乾燥にんにく製品である。
  • 粗く砕いたタイプも細かい粉のタイプも、国際規格では同じ乾燥にんにく製品の枠に入る。
  • 粉とあらびきの粒の大きさは、国際規格では売り手と買い手の契約で決まるため、ラベルの形状表記で見分ける。

この記事は「世界のスパイスの種類と産地|ISO命名で読む単一スパイス完全図鑑」の各論です。

目次

ガーリックパウダーとは

Codex規格CXS 347-2019の適用範囲

ガーリックパウダーを含む乾燥にんにく製品は、国際食品規格委員会(Codex Alimentarius)が2019年に採択した規格CXS 347-2019の対象品目である[1]。この規格は、にんにくを乾燥させた形で「香辛料または料理用ハーブ」として扱う製品を対象とし、直接消費向け、食品加工の原料向け、必要に応じた再包装向けの流通を想定している[1]。一方で、工業加工を目的とした製品はこの規格の適用範囲に含まれない[1]。つまり、そのまま使う用途や食品加工の原料として出回る乾燥にんにくが対象で、工業加工向けとされた製品はこの規格の外に置かれている。

乾燥にんにくの製品定義

CXS 347-2019の2.1項は、乾燥にんにくを、にんにくの鱗片または球、あるいはその両方を乾燥して得られる最終製品と定義している[1]。鱗片(クローブ)と球(バルブ)のどちらを原料にしても、乾燥という工程を経れば同じ製品区分に入るという書き方である。形状の区分は別の条項(2.2項)で扱われている[2]。

形状の種類と粒度

whole・cracked/broken・ground/powderedの区分

CXS 347-2019の2.2項は、乾燥にんにくの形状(スタイル)を次のように分けている[2]。

  • whole:皮をむいた乾燥の一片種、または形の壊れていない鱗片
  • cracked/broken:砕けた、または割れた状態のもの
  • ground/powdered:挽いた、または粉末状にしたもの
  • その他:上記のいずれとも異なる形状で、その旨を表示した場合に限る

この区分からわかるのは、「ガーリックパウダー」はground/powderedに該当するが、規格上は粗く砕いたcracked/brokenタイプも同じ乾燥にんにく製品の枠内に含まれるということである[2]。

粒の大きさは買い手と売り手の契約で決まる

CXS 347-2019は、piecesおよびground/powderedスタイルの粒子サイズについて、買い手と売り手の間の契約によって決定されると述べている[2]。言い換えると、この規格自体は「何メッシュ以下を粉と呼ぶか」といった数値の境界線を定めていない。市場で「ガーリックパウダー」「ガーリックあらびき」「ガーリックグラニュール」のように名称が分かれていても、その境目の粒度をこの規格の数値から読み取ることはできない。

国内メーカーが紹介する「あらびき」タイプ

国内では、エスビー食品が乾燥させたガーリックをあらびき状に加工した製品を紹介している[8]。同社の解説によれば、このタイプはびんから振り出して素材にまぶしたり混ぜ込んだりしやすく、粒感があることで加熱時に香ばしさが立ちやすいという特徴を持つ[8]。この説明は粒の粗いタイプについてのものであり、より細かい粉末状のガーリックパウダーそのものの風味特性を直接述べたものではない。

国際規格と各国基準の数値

粉の水分と総灰分は、インドの上限のほうが低い乾燥にんにくの水分と総灰分の上限値を、CodexのCXS 347-2019とインドFSSAIの2.9.26項で並べた棒の図。段階粉の水分と総灰分は、インドの上限のほうが低い粉以外の水分は両規格とも8.0%。棒は規格が定める上限値の大きさ。上限値(%)水分(粉)Codex 7.0%以下水分(粉)FSSAI 5.0%以下水分(粉以外)Codex 8.0%以下水分(粉以外)FSSAI 8.0%以下総灰分(乾物基準)Codex 6.0%以下総灰分(乾物基準)FSSAI 5.0%以下Codex CXS 347-2019インドFSSAI 2.9.26項読むときの注意酸不溶性灰分(FSSAIは希塩酸に不溶な灰分)は0.5%以下で両規格とも同じ数値。いずれも規格が定める上限値で、流通する製品の実測値を比べた結果ではない。出典: Codex Alimentarius「Standard for dried or dehydrated garlic」CXS 347-2019 — 附属書 I 表A1(化学的特性)/インド食品安全基準局(FSSAI)「Food Product Standards 2.9: Salt, Spices, Condiments and Related Products」Version 4(2025-08-01)—2.9.26 Garlic (Lahsun)図解:ajimuse.com

Codex附属書I 表A1が定める数値

CXS 347-2019の附属書I・表A1は、乾燥にんにくの化学的特性について次の数値を規定している[3]。水分の上限は、粉状のものが7.0%、粉以外のものが8.0%である[3]。総灰分(乾物基準)は6.0%以下、酸不溶性灰分(乾物基準)は0.5%以下と定められている[3]。揮発性有機硫黄化合物の含有量(乾物基準)は0.3%以上という下限値が示されている[3]。なお、これらは附属書Iの表に示された規定値であり、規格中の「分析方法」の節に出てくる手順の記述とは区別して読む必要がある。

インドFSSAIの基準値

インド食品安全基準局(FSSAI)が定める食品規格2.9.26項(Garlic (Lahsun))は、粉状のにんにくの水分を5.0%以下、粉以外のものを8.0%以下と規定している[4]。総灰分(乾物基準)は5.0%以下、希塩酸に不溶な灰分は0.5%以下とされている[4]。冷水可溶性抽出物(乾物基準)については、70.0%以上90.0%以下という範囲が定められている[4]。

両規格を並べて見る

CodexのCXS 347-2019とFSSAIの2.9.26項を並べると、次のような差と一致が見えてくる。

項目Codex CXS 347-2019[3]インドFSSAI 2.9.26項[4]
水分(粉)% 以下7.05.0
水分(粉以外)% 以下8.08.0
総灰分(乾物)% 以下6.05.0
酸不溶性灰分 % 以下(Codexは乾物基準、FSSAIは希塩酸不溶性灰分)0.50.5
揮発性有機硫黄化合物(乾物)% 以上0.3この記事では値を確認していない
冷水可溶性抽出物(乾物)%この記事では値を確認していない70.0〜90.0

粉状の水分上限はCodexが7.0%、FSSAIが5.0%であり、総灰分の上限もCodexが6.0%、FSSAIが5.0%と、いずれもインドの基準値のほうが数値として低い[3][4]。一方、粉以外の水分上限8.0%と酸不溶性灰分0.5%は両規格で同じ数値になっている[3][4]。これらはあくまで規格が定める上限値の違いであり、実際に流通する個々の製品の実測値を比較した結果ではない。冷水可溶性抽出物はCodexの表A1にも、揮発性有機硫黄化合物はFSSAIの2.9.26項にも項目として挙がっているが、この記事ではそれぞれの値を確認していない[3][4]。そのため70.0〜90.0%はFSSAIの値、0.3%以上はCodexの値としてだけ示し、この2項目は両規格の比較に使わない。

米国の食品表示における扱い

スパイスの定義から除かれる品目

米国連邦規則集21 CFR 101.22(a)(2)は、スパイス(spice)を、ホール・割れた状態・粉砕した状態の芳香性の植物性物質と定義したうえで、玉ねぎ・にんにく・セロリなど、伝統的に食品とみなされてきた物質をこの定義から除外している[5]。この条文に沿うと、にんにくを乾燥させたガーリックパウダーは、同条が定義する「スパイス」の枠には入らない扱いになる。

一般名での表示義務

同条の(h)(3)は、果物・野菜・肉・魚・家禽に由来する組織を乾燥などの処理にかけて得た製品について、消費者が香料(flavor)ではなく食品(food)として理解するものと位置づけている[6]。具体例として粉末または顆粒状の玉ねぎ、garlic powder、セロリ粉末が挙げられ、これらは一般名(common or usual name)で表示しなければならないとされている[6]。つまり米国の表示規則の上では、ガーリックパウダーは香料の一種としてではなく、garlic powderという具体的な食品名で原材料表示に記載されることになる。

生にんにくとの化学的な違い

同じ反応でも、引き金は「壊す」と「濡らす」で分かれるアリインとアリイナーゼの反応が起こる条件を、生のにんにくの鱗片とガーリックパウダーで対比した図。対比同じ反応でも、引き金は「壊す」と「濡らす」で分かれるアリインと酵素アリイナーゼの反応が、生と粉では別の条件で起こる。生のにんにくの鱗片ガーリックパウダー反応が起こるとき細胞が壊れたとき濡れたとき(速やかに起こる)引き金になること刻む・つぶすといった物理的な破壊水分を加えることできるものアリシンを代表とするアリルチオスルフィネート類アリシンを代表とするアリルチオスルフィネート類この対比の範囲成分ができる条件についての整理で、健康効果やサプリメントとしての働きを述べたものではない。出典: Lawson LD, Hunsaker SM「Allicin Bioavailability and Bioequivalence from Garlic Supplements and Garlic Foods」Nutrients 2018;10(7):812(PMC6073756)図解:ajimuse.com

アリルチオスルフィネートの生成

生のにんにくとガーリックパウダーの違いを考える手がかりとして、アリインとアリイナーゼという酵素の反応が挙げられる。Lawson and Hunsaker(2018年、Nutrients誌)によれば、アリシンを代表とするアリルチオスルフィネート類は、アリイン(S(+)-allyl-L-cysteine sulfoxide)と酵素アリイナーゼの酵素反応による生成物である[7]。

乾燥・粉末化後の反応という違い

同論文は、この反応が生のにんにくの鱗片では細胞が壊れたときに起こり、乾燥させて粉末化したにんにく(garlic powder)では濡れたときに速やかに起こると記述している[7]。つまり生の状態では刻む・つぶすといった物理的な破壊が反応の引き金になるのに対し、ガーリックパウダーでは水分を加えることが同じ反応を引き起こす条件になるという整理である[7]。この記述は成分ができる条件についてのものであり、健康効果やサプリメントとしての働きを述べたものではない。

使い方と選び方

形状で選ぶ

ここまで見た形状の区分(whole、cracked/broken、ground/powdered、その他)[2]を踏まえると、粒感を残したい場合は粗い粒のタイプ、下味や合わせ調味料に均一に混ぜ込みたい場合はground/powderedタイプという選び分けができる。エスビー食品の解説にあるように、あらびきタイプは肉・魚の下味に使うと加熱時の香ばしさが立ちやすいとされている[8]。

表示名で見分ける

米国の表示規則に沿ったラベルでgarlic powderという一般名が書かれるのは、21 CFR 101.22(h)(3)が香料ではなく食品として一般名表示を求めているためである[6]。表示名から「スパイス(spice)」という総称ではなく「garlic powder」という具体的な品目名が使われている背景には、この条文の整理がある[5][6]。

関連情報への案内

ガーリックパウダー以外のスパイス・ハーブ全般の使い方については、本記事の範囲を超えるため個別の解説記事に委ねる方が実用的である。開封後の保存方法や、原材料表示の読み方についても同様に、それぞれの専門的な解説ページを参照するのが適切である。

結論

ガーリックパウダーは、CXS 347-2019において乾燥にんにくの一形状として位置づけられ、粉状の水分上限7.0%、粉以外8.0%、総灰分6.0%以下、酸不溶性灰分0.5%以下、揮発性有機硫黄化合物0.3%以上という数値で規定される製品である[1][2][3]。インドFSSAIの基準では粉の水分上限が5.0%、総灰分が5.0%とCodexより低い数値になっている一方、粉以外の水分上限と酸不溶性灰分は両規格で同じ値である[3][4]。米国の表示規則では、ガーリックパウダーはスパイスの定義から外れ、garlic powderという一般名での表示対象になっている[5][6]。生にんにくとの違いとしては、アリインとアリイナーゼの反応が起こる条件が、生の鱗片では細胞が壊れたとき、粉では濡れたときだとする論文の記述がある[7]。購入時には、びんのラベルに記載された形状表記(あらびきか、微粉かなど)と原材料表示の品目名を確認し、用途に応じて粒の粗さを選ぶことができる。

参考文献

  1. Codex Alimentarius「Standard for dried or dehydrated garlic」CXS 347-2019 — 1 適用範囲と 2.1 製品定義
    https://openknowledge.fao.org/server/api/core/bitstreams/fd190c60-47ca-4491-a87b-545fbfe1a93d/content
  2. Codex Alimentarius「Standard for dried or dehydrated garlic」CXS 347-2019 — 2.2 形状(Styles)
    https://openknowledge.fao.org/server/api/core/bitstreams/fd190c60-47ca-4491-a87b-545fbfe1a93d/content
  3. Codex Alimentarius「Standard for dried or dehydrated garlic」CXS 347-2019 — 附属書 I 表A1(化学的特性)
    https://openknowledge.fao.org/server/api/core/bitstreams/fd190c60-47ca-4491-a87b-545fbfe1a93d/content
  4. インド食品安全基準局(FSSAI)「Food Product Standards 2.9: Salt, Spices, Condiments and Related Products」Version 4(2025-08-01)— 2.9.26 Garlic (Lahsun)
    https://www.fssai.gov.in/docs/food-law/regulations/compendium/food-products-standards/Chapter 2_9_Salt_Spices_Condiments and related products.pdf
  5. 米国連邦規則集 21 CFR 101.22(a)(2)(スパイスの定義)— eCFR
    https://www.ecfr.gov/api/renderer/v1/content/enhanced/current/title-21?part=101&section=101.22
  6. 米国連邦規則集 21 CFR 101.22(h)(3)(乾燥・粉砕した野菜等の表示)— eCFR
    https://www.ecfr.gov/api/renderer/v1/content/enhanced/current/title-21?part=101&section=101.22
  7. Lawson LD, Hunsaker SM「Allicin Bioavailability and Bioequivalence from Garlic Supplements and Garlic Foods」Nutrients 2018;10(7):812(PMC6073756)
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6073756/
  8. エスビー食品「ガーリックの粒感で、香ばしさやコクを高めて」(ガーリック/にんにくを使いこなそう!)
    https://www.sbfoods.co.jp/recipe/pickup/detail/127.html

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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