山椒はミカン科サンショウ属(学名Zanthoxylum piperitum[7])で、兵庫県養父郡八鹿町朝倉(現在の養父市)を原産とする朝倉山椒と和歌山県発祥のぶどう山椒が二つの主要な品種とされ[1]、使う形も季節ごとに木の芽・花山椒・実山椒・粉山椒と変わる[2]。和歌山県の収穫量は531tで全国の6割近くを占める(平成30年の調査結果として近畿農政局が示す値)[3]。
- 山椒はミカン科の一つの種で、主要な品種は兵庫の朝倉山椒と和歌山発祥のぶどう山椒、使う形は木の芽・花・実・粉である。
- 和歌山では木の芽が4月上旬、花山椒が4月中旬、実山椒が5月から6月、粉山椒が8月下旬以降の時期とされる。
- 山椒と四川の花椒は英語の呼び名が重なる場面があり、英語表記だけでは見分けがつかない。
この記事は「世界のスパイスの種類と産地|ISO命名で読む単一スパイス完全図鑑」の各論です。
山椒とは何か
分類と学名
山椒は、ミカン科サンショウ属に分類される植物で、学名はZanthoxylum piperitumである[6][7]。兵庫県養父市の資料も、植物学上の分類を「ミカン科サンショウ属サンショウ」と記している[5]。日本を含む東アジア地域で栽培されている[6]。
香りと辛味の成分
学術論文の序論によれば、山椒は植物全体に、サンショオール類など、柑橘類に特有の揮発性成分や辛味成分を含んでいる[6]。
よく食べられる部位
同じ論文は、早春に収穫する若葉(木の芽)、春に収穫する未熟な青い実、秋に収穫する熟した赤い実を、もっともよく食べられる部位として挙げている[6]。これに加えて、完熟した実を乾燥させ、果皮を粉にしたものも香辛料として使われており、部位と加工の段階によって呼び名と用途が変わる[2][4]。
部位と季節の使い分け
木の芽と花山椒
和歌山県の資料によれば、芽(木の芽)は4月上旬が時期で、吸い物や芽の和え物などに使われる[2]。続く4月中旬には、雄木に咲く小さな黄色い花を使う花山椒の時期になり、吸い物や佃煮などに利用される[2]。
実山椒と粉山椒
同じ資料は、5月から6月を生の青い実を使う実山椒の時期とし、用途にちりめん山椒(ちりめんじゃこと合わせたもの)や佃煮を挙げる[2]。8月下旬以降は、乾山椒を挽いた粉山椒の時期で、調味に使われるとしている[2]。和歌山県海草振興局の資料は、未熟な実である実山椒は主に佃煮などに、完熟した実を乾燥させた乾山椒は果皮を粉末にして香辛料や生薬などに利用されると説明している[4]。
部位と時期の一覧
出典を整理すると表のようになる。
| 部位 | 時期 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 木の芽 | 4月上旬 | 吸い物、芽の和え物など[2] |
| 花山椒 | 4月中旬 | 吸い物、佃煮(雄木の花)[2] |
| 実山椒 | 5月〜6月 | ちりめん山椒、佃煮[2][4] |
| 粉山椒 | 8月下旬以降 | 調味(乾山椒を挽いたもの)[2] |
同じ山椒でも、収穫する時期と部位が変わると呼び名も用途も変わる。
朝倉山椒とぶどう山椒、そして産地
朝倉山椒の由来
和歌山県の資料は、山椒の二つの主要な品種として、兵庫県養父郡八鹿町朝倉(現在の養父市)を原産地とする朝倉山椒と、和歌山県を発祥とするぶどう山椒を挙げている[1]。養父市教育委員会の資料によれば、現在全国で栽培されている山椒の多くは、朝倉山椒の中から大きな実のなる苗木を交配して改良したものであり、枝にトゲが無く実が多く香りが良いことが特徴とされる[5]。同資料は、1912年(明治45年)に植物学者の牧野富太郎がこの山椒を新品種と認定し、アサクラザンショウの名称で登録したこと、朝倉山椒の名称が古文書に初めて現れるのは1611年(慶長16年)9月26日に駿府城の徳川家康へ但馬生野奉行の間宮新左衛門が献上した記録であることを記している[5]。
ぶどう山椒の由来
和歌山県の資料は、ぶどう山椒を和歌山県が発祥の品種とし、その名は文字どおりにはぶどうの山椒を意味すると説明している[1]。近畿農政局の資料は、ぶどう山椒はサンショウの中でも粒が大きく、実が葡萄の房のように実ることからこう呼ばれているとしている[3]。
和歌山県の収穫量と有田川町の収穫期間
近畿農政局が平成30年の特産果樹生産動態等調査結果として示す数値によれば、和歌山県のサンショウの収穫量は531tで、全国収穫量の6割近くを占める[3]。同局の資料(令和3年5月)は、ぶどう山椒発祥の地として知られる有田川町では、生サンショウの収穫適期が約10日間と短く、家族総出での手作業の摘み取りになると伝えている[3]。JAありだでは荷受け時に重量計測・品質確認を行っているという[3]。
紀美野町など地域別の栽培面積
和歌山県海草振興局の資料は、和歌山市・海南市・紀美野町それぞれの栽培面積を示し、産地を紀美野町としたうえで生産量を約244トン(平成24年度)としている[4]。これは県全体の値ではなく、前述した和歌山県全体の531t(平成30年の調査結果)とは年次も対象地域も異なるため、混同しないよう注意が必要である[3][4]。
- 和歌山市: 2.0ヘクタール[4]
- 海南市: 5.5ヘクタール[4]
- 紀美野町: 46.0ヘクタール[4]
同資料によれば、46ヘクタールにブドウ種と呼ばれる実取り山椒が栽培されており、出荷時期は5月初旬のまだ果実が緑色の生果から始まり、完熟した実を乾燥してから出荷する8月下旬まで続く[4]。
花椒との違い
英名の重なりと学名での区別
Codexの香辛料・料理用ハーブ部会が示す香辛料の分類一覧では、Zanthoxylum piperitumに対して「Sichuan pepper / Japanese pepper」という英名が当てられている[7]。つまりこの一覧の英語の呼び名の上では、四川の花椒を指す名と日本の山椒を指す名が同じ行に並んでおり、呼び名だけでは区別がつかない[7]。手元のものが何であるかは、英名ではなく学名で確かめるほうが確かである。
一覧表は品質の基準ではない
このCodexの文書は香辛料を部位別に分類した一覧の情報文書であり、品質の基準を示すものではない[7]。したがって、この一覧に現れる番号や項目を、含有量や等級の規定として読み替えることはできない。
花椒の詳細は別の記事で
花椒の側にどの種があるか(赤い花椒・青花椒)と痺れの成分については、花椒を単独で扱う記事に委ね、ここでは山椒の学名がZanthoxylum piperitumであることの確認にとどめる[6][7]。
産地づくりの新しい動き
ハウス食品グループの事例
農林水産省の産地連携フォーラムが紹介する事例によれば、ハウス食品グループ本社は「スパイス系バリューチェーン」の一環として山椒に着目し、グループ会社で香辛料や香辛野菜に強みを持つ株式会社ヴォークス・トレーディングに相談した上で、干し椎茸の産地である宮崎県高千穂郷・熊本県奥阿蘇を産地化の候補に選んだ[8]。決め手となったのは、この地域が山椒の主産地である和歌山県と気候が似ていること、そして椎茸の乾燥機が実山椒の乾燥に使えることだったという[8]。
用途の広がり
同じ資料は、山椒の用途としてうなぎの蒲焼きの薬味、七味、佃煮を挙げたうえで、近年は果汁ドリンクや酒、スイーツにも利用され、国内外でニーズが広がっていると説明している[8]。七味唐辛子の配合における山椒の位置づけは七味唐辛子を扱う記事に譲り、本記事は山椒単品の部位・系統・産地の整理に絞る。
結論
部位と系統を確認する
山椒は、ミカン科サンショウ属サンショウ(学名Zanthoxylum piperitum)という一つの種でありながら、木の芽・花山椒・実山椒・粉山椒という収穫時期の違いによる呼び名の広がりと、朝倉山椒・ぶどう山椒という系統の違いによる広がりの両方を持つ[1][2][5][6]。和歌山県が平成30年の調査結果で収穫量の全国の6割近くを占め[3]、朝倉山椒の名が古文書に初めて現れるのは1611年の献上記録だと養父市の資料が記しているという背景を知っておくと[5]、店頭で「実山椒」「粉山椒」「朝倉」「ぶどう」といった表記を見かけたときに、どの部位・どの系統の山椒かを区別しやすくなる。
花椒との呼び名の重なりに注意する
花椒と山椒は英語の呼び名で重なる場面があるため、パッケージの英語表記だけで判断せず、学名を確認する習慣をつけておくことが、買い間違いを避ける具体的な手がかりになる[7]。
関連記事
参考文献
- 和歌山県 農林水産部 食品流通課「Wakayama Budo Sansho Pepper」
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071700/an_nai/d00213509_d/fil/BudoSansho.pdf - 和歌山県「Wakayama Budo Sansho Pepper」(部位と季節)
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071700/an_nai/d00213509_d/fil/BudoSansho.pdf - 農林水産省 近畿農政局 フォトレポート「『日本一のぶどう山椒』産地は収穫最盛期!」
https://www.maff.go.jp/kinki/tiiki/wakayama/photo/img/202105budousansyou/JAarida.html - 和歌山県 海草振興局「サンショウ」
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/130100/shokuzai-kaisou/sannsyou.html - 養父市 教育委員会 歴史文化財課「まちの文化財(86) 徳川家康と朝倉山椒」
https://www.city.yabu.hyogo.jp/soshiki/kyoikuiinkai/shakaikyoiku/1/1/1993.html - Yamasaki et al. (2022) Classification of Japanese Pepper (Zanthoxylum piperitum DC.) from Different Growing Regions Based on Analysis of Volatile Compounds and Sensory Evaluation, Molecules(PMC9370631)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9370631/ - Codex 香辛料・料理用ハーブ部会(CCSCH)Information document – Standard template 付録I 香辛料の分類
https://www.fao.org/fileadmin/user_upload/codexalimentarius/committee/docs/CCSCH_InfDoc_ST_e.pdf - 農林水産省 産地連携フォーラム モデル事例「山椒×ハウス食品グループ本社」
https://agriculture-foodindustry-regionalsourcing.maff.go.jp/case_study/case_study01
