花椒(ホアジャオ)とは|赤と青の違い、痺れの正体、中国の規格

花椒(ホアジャオ)とは|赤と青の違い、痺れの正体、中国の規格

花椒は中国で2300万亩余りが栽培され、中国は世界第一の生産国で、中国花椒之乡(花椒の郷)の称号を持つ産区が16ある[3]。独特の痺れはヒドロキシ-α-サンショオールという成分が主因とされてきた[7]。青花椒は中国の行業標準でZanthoxylum schinifoliumの果実と定義されており[2]、花椒の国家標準そのものも2024年に新しい版が発布され、2025年4月に実施されている[1]。

この記事の結論
  • 花椒は山椒と同じサンショウ属の中国の香辛料で、唐辛子の辛さとは別のぴりぴりした痺れが持ち味である。
  • 中国全国で審査を経て認められた花椒の品種は計47とされ、赤い紅花椒が30、青い青花椒が17である。
  • 痺れの主因とされる成分は特定されてきたが、感覚神経でどう起きるかは2008年時点で議論が続いていた。

この記事は「世界のスパイスの種類と産地|ISO命名で読む単一スパイス完全図鑑」の各論です。

目次

花椒とは何か

花椒は産量が国内の消費量を上回った中国の花椒主産区の産量を2014年と2022年で比べ、国内の年間市場消費量と並べた棒グラフ。段階花椒は産量が国内の消費量を上回った産量が大きく増え、売り手市場から買い手市場へ転じた。全国の花椒主産区の産量と、国内の年間市場消費量(万トン)2014年の産量28.9万トン2022年の産量57.4万トン国内の年間消費量およそ42万トン主産区の産量国内の年間市場消費量いまの課題各地の栽培熱の高まりで産量が大幅に増えた。課題に挙がるのは、品質の底上げと粗放な栽培管理の改善。出典: 国家林業和草原局政府網「拐点上的花椒」(2023年9月11日・来源 中国緑色時報)図解:ajimuse.com

世界最大の生産国としての中国

国家林業和草原局政府網が2023年9月11日に掲載した記事「拐点上的花椒」(来源は中国緑色時報)は、中国の花椒の栽培面積を2300万亩余りとし、中国は世界第一の花椒生産国であると述べている[3]。同記事はまた、16の産区が中国花椒之乡(花椒の郷)の称号を得ていると記す[3]。花椒は中国で重要な調味料経済林樹種と位置づけられ、生態系の維持や農村の特色産業の育成、貧困脱却の成果の定着にも関わる存在として紹介されている[3]。

生産と消費のバランス

中国経済林協会花椒分会の情報として、同記事は2014年から2022年にかけて全国の花椒主産区の産量が28.9万トンから57.4万トンへと増加したことを紹介する[3]。一方で国内の年間市場消費量はおよそ42万トンとされ、花椒産業は売り手市場から買い手市場へ転じたと記事は指摘する[3]。記事は、各地の栽培熱の高まりで産量が大幅に増えたとしたうえで、品質の底上げと粗放な栽培管理の改善を課題に挙げている[3]。同記事は写真の説明として、陝西省韓城市に55万亩・4000万株の韓城大紅袍花椒の優良生産基地があると記している[3]。

痺れの正体

ヒドロキシ-α-サンショオールという成分

花椒を口にしたときに生じるぴりぴり・じんじんとした感覚は、唐辛子の辛さとは別の感覚として語られる。学術誌Nature Neuroscienceに掲載されたBautistaらの2008年の論文(PMC3072296に収載)は、心理物理学的研究によって、花椒(Szechuan peppercorns)やその他のサンショウ属の調製物が生む独特のぴりぴり・じんじんする感覚に最も関与する化合物としてヒドロキシ-α-サンショオールが特定されてきたと述べる[7]。

感覚神経への作用と残る論点

同論文は、サンショオールが体性感覚ニューロン(somatosensory neurons)を活性化させることで効果を発揮するという点では一般的に合意が得られているとしつつ、その根底にある細胞・分子レベルの機構については議論が続いていたと記す[7]。花椒の痺れは、何が感覚を引き起こすかという成分の水準では特定されていた一方、どのような仕組みでそれが起きるかについては見解が分かれていたことになる[7]。

赤い花椒と青い花椒

この記事が参照した資料は、紅花椒と青花椒を次のように分けて扱っている。

観点紅花椒青花椒
ISO草案(策定中)が適用範囲に挙げる学名[8]Zanthoxylum bungeanum Maxim.Zanthoxylum schinifolium Sieb. et Zucc.
行業標準GH/T 1284-2020の定義[2]対象外(青花椒の標準)Zanthoxylum schinifoliumの果実で、青緑〜灰緑色を呈する
全国審定品種数[4]3017

青花椒の定義(GH/T 1284-2020)

中華全国供銷合作総社が定めた行業標準GH/T 1284-2020『青花椒』は、青花椒を芸香科花椒属植物(Zanthoxylum schinifolium Sieb. et Zucc.)の果実で、青緑から灰緑色を呈するものと定義する[2]。同標準はさらに、果皮が未開裂または完全には開裂しておらず種子が自然には脱出しない状態や、乾燥処理によって種子が完全に自然脱出し果殻が開口した状態など、青花椒の見た目や処理状態を区別する用語を定めている[2]。以下はGH/T 1284-2020が定義する主な用語である。

  • 含籽青花椒:果皮が未開裂または不完全開裂で、椒籽が自然には脱出しない青花椒[2]
  • 開口青花椒:晾晒や烘烤などの乾燥処理により種子が完全に自然脱出し、果殻が開口状になった青花椒[2]
  • 霉粒青花椒:カビの侵入によって変色・カビ発生した青花椒[2]
  • 黒粒青花椒:果色が黒く変化しているが、カビの侵入や変質はない青花椒[2]

同標準は染色青花椒(dyed green pepper)という用語も立てているが、その定義文はこの記事では確認していない[2]。

審定品種は47、紅花椒30・青花椒17

国家林業和草原局の記事は、西北農林科技大学教授で花椒産業国家創新連盟理事長を務める魏安智氏の見解を紹介するなかで、全国で審定された花椒品種は47で、内訳は紅花椒30・青花椒17であるとしている[4]。同氏は紅花椒について、北椒では獅子頭・黄蓋・早紅椒を、南椒では凤选1号・漢源花椒・越西貢椒・隴南無刺梅花椒を推薦している[4]。青花椒については次の4品種を推薦している[4]。

  • 北椒(紅花椒):獅子頭、黄蓋、早紅椒[4]
  • 南椒(紅花椒):凤选1号、漢源花椒、越西貢椒、隴南無刺梅花椒[4]
  • 青花椒:金陽青花椒、藤椒、九葉青、蓬渓青花椒[4]

これらの品種がそれぞれどの種(学名)にあたるかは、この記事が参照した資料には書かれていない。GH/T 1284-2020は青花椒をZanthoxylum schinifoliumの果実と定義しているが[2]、後述するISOの草案は青花椒と竹葉花椒に別の学名を当てて並べており[8]、品種名だけから種を決めることはできない。

中国の規格はいまどうなっているか

現行規格GB/T 30391-2024

花椒に関する中国の国家標準は、2024年9月29日に発布され2025年4月1日に実施されたGB/T 30391-2024『花椒』が現行版である[1]。全国標準信息公共服務平台の公開頁によれば、この規格は従来のGB/T 30391-2013を全部代替するものである[1]。同頁には起草関係者の氏名や分類番号(中国標準分類号B36、国際標準分類号67.220.10)が記載されているが、等級区分や理化指標の具体的な数値については、本記事が参照した公開頁の範囲では確認できない[1]。

2013年版との関係と数値を書かない理由

GB/T 30391-2013はGB/T 30391-2024によって全部代替されており、現時点で花椒の国家標準として有効なのは2024年版のみである[1]。2013年版に含まれていた等級や数値を現行の基準として紹介することは、既に廃止された規格をあたかも現行であるかのように扱うことになるため避ける必要がある。GB/T 30391-2024の本文(等級表や理化指標の数値)そのものを確認できていないため、具体的な数値は示さず、発布日・実施日・代替関係という規格の位置づけのみを事実として記す[1]。

漢源花椒という地理的表示

GB/T 47140-2026の発効

花椒の中でも「漢源花椒」については、地理的表示(地理標志)に関する国家標準GB/T 47140-2026『地理標志産品質量要求 漢源花椒』が2026年1月28日に発布され、2026年5月1日に実施された[5]。全国標準信息公共服務平台の公開頁は、この規格の状態を現行としている[5]。

計画公示段階で示されていた特徴

この規格の制定計画を公示した頁(標準計画20221425-T-463)は、起草単位として漢源県市場監督管理局、中国標準化研究院、四川農業大学、漢源県花椒協会などを挙げていた[6]。同頁は、漢源花椒が中欧地理標志協定の相互承認対象リストに含まれており、外国語版(英語)を同時に制定する必要があるとしている[6]。同公示は感官指標として、漢源花椒の果実に1〜3粒の小さな椒粒が並んで付着する点が他の花椒と明確に異なる特徴だと説明している[6]。さらに同公示は理化指標の案として、揮発性芳香油含有量が8.0%以上であること、総灰分含有量が4.2%以下であること、麻度等級が4級以上であることを挙げているが、これらの数値は規格の制定計画を公示した時点での説明であり、発行されたGB/T 47140-2026本文の確定値として確認したものではない[6]。漢源花椒を具体的な数値で語る際には、計画段階の説明であるという前提を外さないことが必要である。

山椒との違いと国際規格の動き

花椒と山椒は同じ属で、学名は別ISOの委員会草案ISO/CD 25846が適用範囲に挙げる紅花椒、青花椒、竹葉花椒、Chinese pepper、Japanese pepperの5つを、Zanthoxylum属の下に学名とともに並べた系統図。構造花椒と山椒は同じ属で、学名は別策定中のISO草案は、5つを別々の学名で同じ適用範囲に並べる。Zanthoxylum属ISO/CD 25846の適用範囲に挙がる5つ。紅花椒red prickly ashpepperZanthoxylumbungeanum Maxim.青花椒green prickly ashpepperZanthoxylumschinifolium Sieb.et Zucc.竹葉花椒bamboo prickly ashpepperZanthoxylumarmatum DC.Chinese pepperZanthoxylumacanthopodium DC.日本の山椒Japanese pepperZanthoxylumpiperitum DC.文書の段階委員会草案(Committee Draft)の段階で、状態表示は開発中(Under development)。現行の国際規格ではない。出典: ISO/CD 25846 Spices and condiments — Dried Zanthoxyli Pericarpium — Specifications図解:ajimuse.com

ISO/CD 25846の審議状況

花椒を国際標準化する動きとして、ISO(国際標準化機構)ではISO/CD 25846「Spices and condiments — Dried Zanthoxyli Pericarpium — Specifications」が委員会草案(Committee Draft)の段階で審議されている[8]。ISOの公開頁によれば、この文書の適用範囲には紅花椒にあたる red prickly ash pepper(Zanthoxylum bungeanum Maxim.)、青花椒にあたる green prickly ash pepper(Zanthoxylum schinifolium Sieb. et Zucc.)、竹葉花椒にあたる bamboo prickly ash pepper(Zanthoxylum armatum DC.)、Chinese pepper(Zanthoxylum acanthopodium DC.)に加えて、日本の山椒であるJapanese pepper(Zanthoxylum piperitum DC.)が並べて挙げられている[8]。公開頁の状態表示は開発中(Under development)であり、策定中の草案であって現行の国際規格ではない点に注意が必要である[8]。

山椒と花椒は学名が別

ISOの草案は、紅花椒・青花椒・竹葉花椒・Chinese pepper・Japanese pepperにそれぞれ異なる学名を当てて列挙している[8]。Japanese pepperの学名はZanthoxylum piperitumで、紅花椒のZanthoxylum bungeanumや青花椒のZanthoxylum schinifoliumとは別であり、いずれも同じZanthoxylum属に置かれている[8]。山椒そのものの詳しい性質はここでは扱わない。

五香粉・辣油との関係

五香粉の配合は五香粉を扱う記事、ラー油・紅油での花椒の使い方はラー油を扱う記事に委ね、本記事は花椒そのものの種類・規格・痺れの正体に絞って記した。

結論

花椒は中国で2300万亩余りが栽培され、中国は世界第一の生産国で、中国花椒之乡の称号を持つ産区が16ある[3]。全国の審定品種は47で、紅花椒が30、青花椒が17である[4]。痺れの主因とされてきたのはヒドロキシ-α-サンショオールという成分で、心理物理学的研究によって特定されてきた[7]。中国の国家標準は2024年9月29日発布・2025年4月1日実施のGB/T 30391-2024が現行であり、2013年版は全部代替されている[1]。漢源花椒についてはGB/T 47140-2026という地理的表示の国家標準が2026年5月1日に実施されており[5]、国際的にはISO/CD 25846が花椒と山椒を同じ適用範囲に並べた委員会草案として審議されている段階にある[8]。花椒を手に取る際には、紅花椒・青花椒のどちらとして売られているかをまず確認し、産地や規格の表示があれば、それがどの文書に基づく記載なのかを照らし合わせることが手がかりになる。

参考文献

  1. 全国標準信息公共服務平台(国家市場監督管理総局・国家標準化管理委員会)国家標準 GB/T 30391-2024『花椒』
    https://std.samr.gov.cn/gb/search/gbDetailed?id=234D7936AAD3E194E06397BE0A0AA0A9
  2. 中華全国供銷合作総社 行業標準 GH/T 1284-2020『青花椒』(雲南省林業和草原局掲載PDF)
    https://lcj.yn.gov.cn/uploadfile/s37/2025/0514/20250514095639868.pdf
  3. 国家林業和草原局政府網「拐点上的花椒」(2023年9月11日・来源 中国緑色時報)
    https://www.forestry.gov.cn/c/www/yltl/592495.jhtml
  4. 国家林業和草原局政府網「拐点上的花椒」(2023年9月11日)
    https://www.forestry.gov.cn/c/www/yltl/592495.jhtml
  5. 全国標準信息公共服務平台 国家標準 GB/T 47140-2026『地理標志産品質量要求 漢源花椒』
    https://std.samr.gov.cn/gb/search/gbDetailed?id=49FD1852CB24C31FE06397BE0A0A1304
  6. 全国標準信息公共服務平台 国家標準計画 20221425-T-463『地理標志産品質量要求 漢源花椒』
    https://std.samr.gov.cn/gb/search/gbDetailed?id=D55FC9ECB6F49488E05397BE0A0ADE7F
  7. Bautista et al. (2008) Pungent agents from Szechuan peppers excite sensory neurons by inhibiting two-pore potassium channels, Nature Neuroscience(PMC3072296)
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3072296/
  8. ISO/CD 25846 Spices and condiments — Dried Zanthoxyli Pericarpium — Specifications
    https://www.iso.org/standard/91699.html

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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