カルダモンとは|グリーンとブラックは別属の植物、インドの基準で読む

カルダモンとは|グリーンとブラックは別属の植物、インドの基準で読む

カルダモンは単一の植物の名前ではない。インド食品安全基準局(FSSAI)の規格2.9.2は、グリーンの原種Elettaria cardamomumと、ブラックの原種Amomum subulatumを、属名の異なる別の項目として定義する[1][3]。精油の基準値も、資料が挙げる産地や用途も、別々に書かれている。

この記事の結論
  • グリーン(小カルダモン)とブラック(大カルダモン)は、属の異なる別の植物の乾燥した果実である。
  • ブラックカルダモンはインド北東部のヒマラヤ山麓やネパールで育ち、ビリヤニや肉料理の香りづけに使われる。
  • レシピに「カルダモン」とだけ書かれているときは、グリーンとブラックのどちらを指すのか確かめたほうがよい。

この記事は「世界のスパイスの種類と産地|ISO命名で読む単一スパイス完全図鑑」の各論です。

目次

「カルダモン」は1つの植物ではない

グリーンとブラックは、属の違う別の植物グリーンカルダモンとブラックカルダモンを、インドの規格での項目名、学名、ホールの定義の3点で突き合わせた対比図。対比グリーンとブラックは、属の違う別の植物インドの規格2.9.2は、同じ条文の中で二つを別の項目として定義する。グリーンカルダモンブラックカルダモンインドの規格の項目名Cardamom (Chhoti Elaichi)=小カルダモンLarge Cardamom (Badi Elaichi)=大カルダモン学名Elettaria cardamomumAmomum subulatumホールの定義ほぼ熟した果実(さや)を乾燥させたものほぼ熟した果実(さや)を乾燥させたものレシピを読むとき「カルダモン」とだけ書かれていたら、どちらを指すのかを確かめる。色や大きさより先に、学名まで遡ると取り違えを避けやすい。出典: FSSAI(インド食品安全基準局)「Food Safety and Standards (Food Products Standards and Food Additives) Regulations,2011」図解:ajimuse.com

FSSAIの基準が分ける二つの項目

インドの食品安全基準局(FSSAI、Food Safety and Standards Authority of India)が定める規格のうち、香辛料を扱う第2.9節の2.9.2項は、カルダモンを二つの項目に分けて定義している。一つはCardamom (Chhoti Elaichi)で、Elettaria cardamomum L. Maton Var. Minuscula Burkillという植物のほぼ熟した果実(さや)を乾燥させたものを指す[1]。もう一つはLarge Cardamom (Badi Elaichi)で、ホール(whole)はAmomum subulatum Roxb.という別属の植物のほぼ熟した果実(さや)を乾燥させたもの、種子(seeds)はそのさやから取り出したものと定義されている[3]。同じ2.9.2という条文の中に、属の異なる二つの植物が別項目として並ぶ点が、この規格の特徴である。

日本での呼び方との対応

日本の輸入食材店やレシピで「グリーンカルダモン」と呼ばれるものは、FSSAIの区分ではChhoti Elaichi(小カルダモン)に対応し、学名はElettaria cardamomumである[1]。一方「ブラックカルダモン」はBadi Elaichi(大カルダモン)に対応し、学名はAmomum subulatumである[3]。両者は別の植物なので、レシピに「カルダモン」とだけ書かれている場合は、どちらを指すのか確認したほうがよい。色や大きさだけで判別する前に、学名まで遡って確認すると取り違えを避けやすい。

グリーンカルダモン(小カルダモン)

さやの色と漂白

FSSAIの定義によれば、小カルダモンのさやはlight green(薄緑色)からbrown(茶色)の範囲にあるとされる[1]。二酸化硫黄で漂白した場合は、pale cream(淡いクリーム色)からwhite(白色)になると、同じ条文が書き加えている[1]。つまりこの基準は、薄緑から茶色のさやと、漂白した淡いクリーム色から白のさやの両方を、小カルダモンの範囲に含めている[1]。色の濃さだけで品質を判断するのではなく、漂白の有無という工程の違いとして理解したほうが規格の記述に近い。

輸出グレードAGEB・AGB・AGS

インド商工省の香辛料局(Spices Board India)は、インド産カルダモンが国際市場に出るときの等級として、次の三つの名称を挙げている[4]。

  • Alleppey Green Extra Bold(AGEB)
  • Alleppey Green Bold(AGB)
  • Alleppey Green Superior(AGS)

同局は、インドが中東諸国へカルダモンを輸出してきた伝統的な輸出国であり、そこでは主に「ガフワ(Gahwa)」というカルダモン入りのコーヒーの調製に使われるとも説明している[4]。等級ごとの具体的な粒径や重量の基準値は、本記事が参照した範囲では確認できない。

ブラックカルダモン(大カルダモン)

栽培地と気候条件

インド商工省の香辛料局は、大カルダモンの栽培地をインド北東部のヒマラヤ山麓地域、ネパール、ブータンと説明している[5]。栽培は標高800メートルから2000メートルの間で、樹木の木陰となる冷涼で多湿な環境で行われ、平均の降水量は3000ミリメートルから3500ミリメートルで、約200日にわたって降るとされる[5]。気温は摂氏6度から30度の範囲に及ぶとも記されている[5]。

使われる料理

同資料は大カルダモンの用途について、プラオ(Pulavu)やビリヤニ、肉料理の香りづけに使われると説明している[5]。具体的な使用量や調理手順についての記載は、本記事が参照した範囲では見当たらない。

基準値で比べる

小カルダモン(さや)の基準値

FSSAIの2.9.2項は、小カルダモンのさや(Whole)について、複数の数値基準を定めている。異物は重量で1.0%以下、空または奇形のさやは個数比で3.0%以下、未熟でしなびたさやは重量で3.0%以下と規定される[2]。水分は重量で13.0%以下、乾物基準の総灰分は重量で9.5%以下、乾物基準の精油含量は体積重量比(v/w)で3.5%以上と定められている[2]。これらはいずれも「さや(Whole)」という形態に対する基準であり、挽いた粉末や種子だけを取り出した製品に同じ数値がそのまま適用されるとは、この規格からは読み取れない。

大カルダモンの精油含量

大カルダモン(Badi Elaichi)についてFSSAIが定める基準のうち、本記事が確認できた中心は種子の精油含量である。乾物基準で、大カルダモンの種子の精油含量は体積重量比で1.0%以上と規定されている[3]。同じ並びには、乾物基準の総灰分8.0%以下、希塩酸に溶けない灰分2.0%以下、虫害を受けたもの1.0%以下という値も置かれている[3]。小カルダモンのさやの精油基準(3.5%以上)と比べると数値は低いが、大カルダモンのほうは種子の精油と明記されており、書き方が異なるため、単純に同じ尺度で比較できる値ではない。水分など他の項目については、本記事が参照した範囲では確認できていない。

ここまでの基準値を一覧にすると、次のようになる。

項目小カルダモン(さや)大カルダモン
精油含量(乾物基準)3.5%以上[2]種子の精油として1.0%以上[3]
水分13.0%以下[2]—
総灰分(乾物基準)9.5%以下[2]8.0%以下[3]
異物1.0%以下(重量)[2]—
空・奇形のさや3.0%以下(個数比)[2]—
未熟・しなびたさや3.0%以下(重量)[2]—

表中の「—」は、本記事が参照した範囲では該当する基準値を確認できなかった項目を示す。

香りの成分と使い方

1,8-シネオールはグリーンのほうが多いグリーンカルダモン、エチオピア産カルダモン、ブラックカルダモンの精油に占める1,8-シネオールの比率を棒の長さで比べた図。段階1,8-シネオールはグリーンのほうが多い3種の精油を比べた研究では、主成分の比率に差が出た。精油に占める1,8-シネオールの比率グリーンカルダモン55.4%エチオピア産カルダモン51.8%ブラックカルダモン41.7%数値の性格この研究で使われた試料を分析した結果で、規格が定める基準値ではない。出典: Noumi E. ほか「Chemical and Biological Evaluation of Essential Oils from Cardamom Species」Molecules 23(11):2818(2018・PMC6278479)図解:ajimuse.com

1,8-シネオールの比率

学術誌Moleculesに2018年に掲載された研究は、グリーンカルダモン、エチオピア産カルダモン、ブラックカルダモンの精油を比較している[7]。この研究では、精油の主成分である1,8-シネオールの比率が、グリーンカルダモンで55.4%、エチオピア産カルダモンで51.8%、ブラックカルダモンで41.7%だったと報告されている[7]。モノテルペン炭化水素という成分群も、グリーンカルダモンで36.9%、ブラックカルダモンで34.2%を占め、2番目に多い成分群だったとされる[7]。これらはこの研究で使われた試料を分析した結果であり、FSSAIのような規格が定める基準値ではない点に注意が必要である。

家庭での使い方

香辛料メーカーのエスビー食品は、カルダモンに適した料理としてカレー、チャイ、ピクルス、パン、ケーキを挙げている[8]。同社によれば、カルダモンは特に北欧、インド、中東、エジプトで多用される香辛料で、ソースやドレッシング、肉・魚料理、カレー料理、パンや菓子、飲み物の香りづけに使われるという[8]。同社はまた、アラブ諸国ではもてなしの場でカルダモンの香りをつけたコーヒーが欠かせないこと、カルダモンがカレー粉の主原料のひとつであることも説明している[8]。家庭でカルダモンを使う場合も、こうした用途を手がかりに、カレー、チャイ、パンやケーキなどから試すと扱いやすい。

配合や保存は別の記事で扱う範囲

カルダモンは単体で使うだけでなく、ガラムマサラのようなミックススパイスの一成分としても使われる。配合の中でのカルダモンの役割はガラムマサラで扱っている。油で加熱して香りを移す手順はスパイスの使い方に、保存方法はスパイスの保存に整理されている。本記事は、FSSAIやインド商工省香辛料局の資料に基づく、植物としての分類、基準値、産地、単体での用途に絞って扱う。

結論

国際規格の現在地(Codex CCSCH7)

国際的な食品規格を扱うコーデックス委員会の香辛料・料理用ハーブ部会の第7回会合(CCSCH7)について、コーデックスは2024年2月2日付のニュースで、乾燥小カルダモンの規格案をステップ8として総会(CAC47)へ送ることに部会が合意したと発表している[6]。これは、国内規格であるFSSAIとは別に、国際規格としての手続きが進んでいることを示す動きである。この発表から確認できるのは「総会へ送る合意ができた」という段階までであり、その後の総会での採択の有無や最終的な規格番号については、この発表の範囲では確認できない。

確認しておきたいこと

本記事で確認できた内容は、次の通りである。

  • 小カルダモン(グリーン)はElettaria cardamomumの果実で、FSSAIの基準ではさやの精油含量が3.5%以上、水分13.0%以下と定められている[1][2]。
  • 大カルダモン(ブラック)はAmomum subulatumの果実で、種子の精油含量は1.0%以上と定められている[3]。
  • 精油の主成分である1,8-シネオールの比率は、ある研究の試料でグリーン55.4%、ブラック41.7%だったと報告されているが、これは規格値ではない[7]。
  • 乾燥小カルダモンの国際規格案は、2024年2月2日付の発表の時点で、ステップ8として総会への送付が部会で合意された段階にあり、その後の採択の有無は本記事では確認していない[6]。

輸入食材店でグリーンとブラックの両方を見かけたときは、どちらも「カルダモン」と表示されていても、属の異なる別の植物でありうることを踏まえて、パッケージの表記や学名を確認したほうがよい。カレーやチャイ、ピクルス、パンや菓子に使うという用途は[8]に挙げられている内容であり、ビリヤニのような米料理や肉料理の香りづけは大カルダモンの用途として[5]に挙げられている。どちらのカルダモンを使うレシピなのかを料理の系統からも確認すると、買ってきた袋の使い分けがしやすくなる。

参考文献

  1. FSSAI(インド食品安全基準局)「Food Safety and Standards (Food Products Standards and Food Additives) Regulations, 2011」コンペンディウム 第2章 2.9 Salt, Spices, Condiments and Related Products — 2.9.2 Cardamom (Chhoti Elaichi) Whole の定義(Version 4・2025-08-01)
    https://www.fssai.gov.in/docs/food-law/regulations/compendium/food-products-standards/Chapter 2_9_Salt_Spices_Condiments and related products.pdf
  2. FSSAI(インド食品安全基準局)「Food Safety and Standards (Food Products Standards and Food Additives) Regulations, 2011」コンペンディウム 第2章 2.9 Salt, Spices, Condiments and Related Products — 2.9.2 Cardamom (Chhoti Elaichi) Whole の基準値(Version 4・2025-08-01)
    https://www.fssai.gov.in/docs/food-law/regulations/compendium/food-products-standards/Chapter 2_9_Salt_Spices_Condiments and related products.pdf
  3. FSSAI(インド食品安全基準局)「Food Safety and Standards (Food Products Standards and Food Additives) Regulations, 2011」コンペンディウム 第2章 2.9 Salt, Spices, Condiments and Related Products — 2.9.2 Large Cardamom (Badi Elaichi) の種子の精油と学名(Version 4・2025-08-01)
    https://www.fssai.gov.in/docs/food-law/regulations/compendium/food-products-standards/Chapter 2_9_Salt_Spices_Condiments and related products.pdf
  4. Spices Board India(インド商工省 香辛料局)「Spice Catalogue: Cardamom (small)」
    https://www.indianspices.com/spice-catalog/cardamom-small-1.html
  5. Spices Board India(インド商工省 香辛料局)「Spice Catalogue: Cardamom (large)」
    https://www.indianspices.com/spice-catalog/cardamom-large.html
  6. Codex Alimentarius(FAO/WHO)ニュース「CCSCH7 concludes first Codex meeting of the year and forwards three new standards for adoption」(2024-02-02)
    https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/news-and-events/news-details/en/c/1676662/
  7. Noumi E. ほか「Chemical and Biological Evaluation of Essential Oils from Cardamom Species」Molecules 23(11):2818(2018・PMC6278479)
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6278479/
  8. エスビー食品「スパイス&ハーブ検索:カルダモン/Cardamom」
    https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/search/detail/00009.html

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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