サラダ油とキャノーラ油の違い|等級名と原材料表示で読み分ける

サラダ油とキャノーラ油の違い|等級名と原材料表示で読み分ける

サラダ油とキャノーラ油は優劣を競う対の関係ではない。日本農林規格(JAS)が定める油の区分名は「なたね油」であり、キャノーラ油という規格区分は存在しない[1]。サラダ油は原料名ではなく、低温でも清澄さを保つ等級側の呼び名であるため[1]、なたね油がその等級を満たせば両者は同じ油を指す。輸入食材店やスーパーの油売場で棚を見比べるとき、この二つの軸を分けて読めるかどうかで、ラベルの意味の取り方が変わってくる。

この記事の結論
  • サラダ油は原料名でなく低温でも澄む油の等級名で、キャノーラ油は規格の区分になく、原料の区分名は「なたね油」である。
  • ラベルの原材料名欄に出るのは重量順の原料名だけで、その油がサラダ油の等級かどうかは読み取れない。
  • サラダ油とキャノーラ油は、なたね油が低温でも澄む等級を満たせば同じ油を指すので、「同じ」とも「別物」とも言い切れない。

この記事は「世界の食用油脂図鑑|圧搾・精製・発煙点で油を読む」の各論です。

目次

サラダ油は原料名ではなく等級の呼び名

JAS規格が並べる油種の一覧

日本農林規格「食用植物油脂の日本農林規格」は、食用サフラワー油、食用ぶどう油、食用大豆油、食用ひまわり油、食用とうもろこし油、食用綿実油、食用ごま油、食用なたね油、食用こめ油、食用落花生油、食用オリーブ油、食用パーム油、食用パームオレイン、食用パームステアリン、食用パーム核油、食用やし油、食用調合油という単位で目次を並べている[1]。この規格は一般社団法人日本植物油協会からの申出を受け、日本農林規格調査会の審議を経て農林水産大臣が改正したものである[1]。目次を見て分かるのは、区分の軸が原料(なたね、大豆、ごまなど)に沿って組まれている点であり、「サラダ油」という原料はどこにも登場しない。

品質の欄に現れる「等級」という考え方

規格の中身は、油種ごとに「品質」の節を置き、続けて表示や試験方法の節が並ぶ構成になっている[1]。試験方法の欄には一般状態、色、水分、きょう雑物、比重、屈折率、上昇融点、冷却試験、酸価、けん化価、よう素価、不けん化物、脂肪酸に占めるオレイン酸の割合、過酸化物価という項目名が並ぶ[1]。この項目に対応する具体的な数値基準は規格書の原本にあり、今回参照した範囲では項目名までしか確認できなかったため、数値そのものは示さない。冷却試験という項目名がある通り、低温でも清澄さを保てるかどうかが等級を分ける観点の一つになっている。

規格の目次では、油の名前が原料の種類ごとに並んでいる。日常の買い物の場面では、この構造にはなかなか気づきにくい。

JASの区分名は「なたね油」、「キャノーラ油」という規格区分はない

目次に「キャノーラ」という文字は出てこない

規格の目次に並ぶのは食用なたね油という名称であり、キャノーラ油という区分名は目次のどこにも現れない[1]。キャノーラという呼び方は、なたね(西洋アブラナ)の品種や搾油方式を指す商品名・業界呼称として市場で使われている言葉であり、JASという法制度の区分名とは別の軸にある言葉である。両者を同じ棚で語ると、「規格の話」と「商品名の話」がすり替わってしまう。

規格の格付は表示のためだけの制度ではない

日本農林規格等に関する法律第10条は、事業者が登録認証機関の認証を受けたうえで農林物資について日本農林規格による格付を行い、格付をしたことを示す特別な表示を付けることができると定めている[4]。つまり「サラダ油」や「なたね油」という名称そのものと、JASの格付表示(認証を受けて初めて使える表示)は別のレイヤーにある。市販の油に「なたね油」と書かれていても、それがJASの格付表示付きで出荷されたものかどうかは、また別に確認する事柄である。

条文の語尾に注意したい。第10条は格付の表示を「付することができる」と書いており[4]、付けなければならないとはしていない。格付は、認証を受けた事業者が自ら選んで行う制度である。したがって、店頭の油に格付の表示が見当たらないことは、その油が規格に適合していないことを意味しない。単に、その事業者が格付という手続を経ていないか、経ていても表示を付けていないだけかもしれない。

一方で、表示の側には歯止めがある。同法第37条は「何人も、次に掲げる場合を除き、農林物資又はその包装、容器若しくは送り状に格付の表示を付し」てはならないと定め、除外される場合として、認証を受けた品質取扱業者・生産行程管理者・流通行程管理者・小分け業者・輸入業者などが第10条等に基づいて付す場合を列挙している[4]。認証を受けずに格付の表示を付けることは禁じられているが、認証を受けた者が付けないことは禁じられていない、という非対称な作りである。格付の表示が在れば認証を経た証拠になるが、無いことは何の証拠にもならない。この向きを取り違えないことが、店頭で油を比べるときの実際の役に立つ。

「サラダ油=キャノーラ油」でも「別物」でもない:軸が交差する

サラダ油は等級、キャノーラは呼び名。なたね油で重なるサラダ油とキャノーラ油を、どの軸の言葉か、JASでの扱いの2点で対比し、なたね油がサラダ油の等級を満たすときに両者が重なることを示した図。対比サラダ油は等級、キャノーラは呼び名。なたね油で重なる原料の軸と等級の軸は別々に動く。両者は優劣を競う対ではない。サラダ油キャノーラ油どの軸の言葉か等級の呼び名。低温でも清澄さを保つ商品名・業界呼称。なたねの品種や搾油方式を指すJASでの扱い等級表に「〇〇サラダ油」の区分がある区分名は「食用なたね油」。キャノーラの区分は無い重なる地点なたね由来の油が清澄さの等級を満たせば、両者は同じ油を指す。満たさない油は、サラダ油という等級を名乗らない。出典: 食用植物油脂の日本農林規格(農林水産省)図解:ajimuse.com

縦軸は原料、横軸は等級

原料の軸(なたね、大豆、ごま、とうもろこし、ひまわりなど)と、清澄さの等級の軸は別々に動く二つの軸である。なたね油はその軸の交点のひとつであり、なたね由来の油が清澄さの等級を満たせばサラダ油に類する呼び方が成立し、満たさない油はサラダ油という等級を名乗らない。だから「サラダ油とキャノーラ油はイコールだ」と言い切るのも、「まったく別の油だ」と言い切るのも、どちらも二本の軸を一本に潰した簡略化である。

サラダ油の等級を名乗れる原料は限られる

サラダ油の等級を満たせるかどうかは油種によっても分かれる。規格本文の等級表を1つずつ見ていくと、「〇〇サラダ油」という区分が置かれているのは、サフラワー・ぶどう・大豆・ひまわり・とうもろこし・綿実・ごま・なたね・こめ、そして複数原料を混ぜた調合油である[1]。一方、食用オリーブ油・食用落花生油・食用パーム油・食用やし油などの等級表には「精製〇〇油」は並ぶが、サラダ油の区分そのものが置かれていない[1]。区分名の有無で線が引かれているので、「この油はサラダ油になれるのか」は規格の等級表を見れば分かる。

  • サラダ油の区分が置かれている油種:サフラワー、ぶどう、大豆、ひまわり、とうもろこし、綿実、ごま、なたね、こめ、調合[1]
  • 等級表に「精製〇〇油」はあるがサラダ油の区分が置かれていない油種の例:オリーブ、落花生、パーム、やし[1]

「オリーブサラダ油」のような名前が規格の等級に出てこないのは、品質が劣るからではなく、そもそも等級側の枠組みに入っていない原料だからである。同じことは落花生油にも当てはまる。

複数の原料を混ぜた「食用調合油」という区分

調合油もJASの目次に載っている

JASの目次には食用調合油という区分もある[1]。これは、なたね油や大豆油など複数の原料油を混ぜて作る油を指す区分名であり、単一原料の油と並んで規格の対象になっている。家庭で「調合油」や「サラダ油(調合)」と書かれた製品を見かけたら、複数の原料を混ぜて作られた油だと読み替えてよい。

混ぜた原料の内訳はラベルのどこに出るか

調合油そのものの区分は規格側の話だが、実際にどの原料をどれだけ混ぜているかは、商品のラベルにある原材料名の欄に表れる。食品表示基準は、使用した原材料を重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称で表示すると定めている[2]。したがって調合油の原材料名欄を見れば、なたね油と大豆油のどちらが多く使われているかという順序は分かるが、その油がJASのどの等級を満たしているかまでは、この欄からは分からない。

原材料表示は重量順の原料名だけ、等級は載らない

油のラベルには3つの層があり、根拠も粒度も違う食用油のラベル情報を、JASの等級の軸、食品表示基準の重量順の軸、同じく食品表示基準の総称の軸という3層に分けて並べた図。並記油のラベルには3つの層があり、根拠も粒度も違う「サラダ油」と「キャノーラ」は、この3層のうち別の層から来た言葉。等級の軸JAS低温でも清澄さを保つかなど。原材料名欄には載らない重量順の軸食品表示基準原料名を重量の割合の高い順に。どれが多いかは分かる名称の軸食品表示基準「植物油脂」など総称でまとめてよい。油種が読めないことがある格付表示は任意JASの格付表示は、認証を受けた事業者が「付することができる」もの。表示が在れば認証を経た証拠になるが、無いことは何の証拠にもならない。出典: 食用植物油脂の日本農林規格(農林水産省)/食品表示基準 — 原材料名の表示(重量の割合の高い順)/日本農林規格等に関する法律 — 格付と格付の表示(第10条)図解:ajimuse.com

原材料名欄が開示しているのは「重量順」だけ

食品表示基準が定めるのは、原材料に占める重量の割合が高いものから順に、その最も一般的な名称で表示することであり[2]、複合原材料についても重量順で内訳を括弧書きするという規定になっている[2]。この欄が答えているのは「何がどれだけ多く入っているか」という順序であり、「その油がどの等級に格付けされているか」という問いには最初から答えていない。

さらに、原料の側の解像度も一定ではない。食品表示基準は、原材料の区分ごとに使ってよい代替の名称を表の形で定めており、「食用油脂」に該当する原材料については「植物油、植物脂若しくは植物油脂、動物油、動物脂若しくは動物油脂又は加工油、加工脂若しくは加工油脂」という名称をもって表示することができるとしている[2]。マヨネーズやドレッシング、菓子の原材料欄に「植物油脂」とだけ書かれていて油種が読み取れないのは、この規定に沿った表示だからである。

つまり油をめぐるラベルには、少なくとも三つの層がある。規格が持っている等級の軸、表示義務が開示する重量順の軸、そして総称でまとめてよいという名称の軸である。三つはそれぞれ別の文書に根拠を持ち、開示する情報の粒度も違う[1][2][4]。「サラダ油とキャノーラ油はどちらがよいか」という問いが素直に答えられないのは、二つの語がこの三層のうち別の層から来ているためだと考えると、店頭での見方が定まってくる。

表示制度の乗り換えという経緯

現在の食品表示基準は、施行にあたって食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令(平成二十三年内閣府令第四十五号)や、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律附則第六条第一項の規定に基づく加工食品品質表示基準を定める件(平成十二年農林水産省告示第五百十三号)など、複数の府令・告示を廃止して一本化したものである[3]。廃止された規定には次のものが含まれる。

  • 食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令(平成二十三年内閣府令第四十五号)[3]
  • 食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品の表示の基準に関する内閣府令(平成二十三年内閣府令第四十六号)[3]
  • 容器包装の面積により表示を省略することができる食品を定める件(昭和四十五年厚生省告示第百八十号)[3]
  • 加工食品品質表示基準を定める件(平成十二年農林水産省告示第五百十三号)[3]

つまり「品質表示基準」という名前で原料や等級に近い情報を扱っていた時期の制度は、現在の食品表示基準に置き換わっており、いま棚にあるラベルの原材料名欄は、その一本化後の重量順表示のルールに沿って書かれている。

ラベルの原材料名欄から分かることラベルの原材料名欄から分からないこと
使用している原料油の種類[2]JASの等級(サラダ油等級かどうか)
原料油が複数ある場合の重量順[2]冷却試験など試験方法の数値
複合原材料の内訳(重量順)[2]格付表示(認証マーク)の有無[4]

結論

等級と原料は別の軸として読む

サラダ油とキャノーラ油の関係を一文で言うなら、原料の軸(なたね油かどうか)と等級の軸(清澄さの等級を満たすかどうか)が別々に走っていて、なたね油がその等級を満たした地点で両者が重なる、という説明が最も無理がない。JASの目次に並ぶ区分名は食用なたね油であり、キャノーラ油という規格区分は存在しない[1]。一方で原材料名欄が開示するのは重量順の原料名だけであり、等級そのものはラベルから読み取れない[2]。

ラベルを読むときに確認したい順番

棚の前では、まず原材料名欄の並び順から主原料を読み、その上で商品名にある「サラダ油」や「キャノーラ」という言葉を、規格の等級と原料由来の呼び方という別々の情報として扱うと取り違えにくい。本記事が扱うのは等級名と原材料表示の関係までであり、発煙点や酸化安定性のように精製度や原料で変わる性質は、この整理とは別に確認する必要がある。

参考文献

  1. 食用植物油脂の日本農林規格(農林水産省)
    https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-386.pdf
  2. 食品表示基準 — 原材料名の表示(重量の割合の高い順)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
  3. 食品表示基準 — 附則第二条(次に掲げる府令及び告示は、廃止する)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
  4. 日本農林規格等に関する法律 — 格付と格付の表示(第10条)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000175

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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