みその表示ルールはどこにあるか|旧告示の廃止と食品表示基準への統合

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みその表示を定める一次規定は、府令である食品表示基準であり、米みそ・麦みそ・豆みそ・調合みその四区分は同府令の別表第四に置かれている[2]。かつて存在した複数の表示基準は、この府令の附則が廃止対象として列挙している[1]。全国1,600以上の工場がみそを供給するなかで[4]、一次規定の所在を知ることは商品の読み解きに役立つ。

この記事の結論
  • 米みそ・麦みそ・豆みそ・調合みその4区分の定義は、国の法令である食品表示基準に置かれている。
  • 米・麦・豆の違いは大豆に加えるこうじの原料で決まり、調合みそは米みそ・麦みそ・豆みそを組み合わせたものである。
  • 古い解説が挙げる「みそ品質表示基準」は廃止済みの旧ルールで、今の表示の根拠は食品表示基準である。

この記事は「「醤(ひしお・ジャン)」とは何か|東アジア調味料の母体を知る」の各論です。

目次

みその表示は何が決めているのか

国の府令と業界の規約が、同じ4区分を並行して扱うみその4区分を扱う2つの文書、食品表示基準と公正競争規約を、定める者・性格・4区分の定義の置き方で対比した図。対比国の府令と業界の規約が、同じ4区分を並行して扱う定義の骨格はほぼ同じ。違うのは、誰が定め、どんな性格のルールかという点。食品表示基準公正競争規約定める者国(府令)全国公正取引協議会連合会(業界団体)性格強制力を持つ表示ルール業界が自主的に運用する4区分の定義別表第四に米みそ・麦みそ・豆みそ・調合みそ府令とほぼ同じ文言。調合みそは米みそ・麦みそ・豆みそを組み合わせたもの区分を分けるもの米みそ・麦みそ・豆みその違いは、大豆を蒸煮した後に加えるこうじの原料が米か、麦か、大豆自体をこうじ化したものかという一点。出典: 食品表示基準 — みその区分の定義(別表)/みその表示に関する公正競争規約および施行規則(全国公正取引協議会連合会)図解:ajimuse.com

輸入食材店や地方の物産店で「米みそ」「豆みそ」と書かれた商品を手に取ると、この呼び方を誰が決めているのか気になる。答えは単純ではなく、時期によって根拠となる法令・告示が変わってきた経緯がある。現在のみそ表示について押さえるべき出発点は、食品表示基準というひとつの府令である。

表示の一次規定は「食品表示基準」という府令

食品表示基準は、自身の条文中で「この府令の施行の日から」という言い回しを使っており、府令として制定されたものであることが読み取れる[1]。この一つの府令のなかに、米みそ・麦みそ・豆みそ・調合みその定義が別表としてまとめられている[2]。全国で1,600以上の工場からみそが市場に供給されているという調査があり[4]、産地も製法もばらつく商品群を一つの定義体系で束ねる必要性は小さくない。

なぜ複数の法律・規約が関係して見えるのか

みそのラベルを調べると、行政の府令だけでなく、全国公正取引協議会連合会という業界団体が定める公正競争規約にも同じような定義が出てくる[3]。これは、国が定める食品表示基準(強制力を持つ表示ルール)と、業界が自主的に運用する公正競争規約が、並行して同じ4区分の呼び方を扱っているためである。両者の定義は文言のうえでかなり近く、米みそ・麦みそ・豆みそという呼称の実質的な内容は、どちらの資料を見ても大きくは変わらない[2][3]。国の府令と業界の規約が別の文書として存在する点は、初めて調べる人が混乱しやすいところである。

かつて存在した品質表示基準という仕組み

現在の食品表示基準に一本化される前、みそを含む加工食品の表示は、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(旧JAS法)の系統に基づく告示によって扱われていた時期がある。この系統の告示がどのように整理されたかを確認すると、現行制度の位置づけがはっきりする。

農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律に基づく体系

食品表示基準の附則第二条は、廃止対象となる府令・告示を列挙しており、そのなかに「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律附則第六条第一項の規定に基づき、加工食品品質表示基準を定める件」(平成十二年農林水産省告示第五百十三号)が含まれている[1]。この告示名そのものが「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律附則第六条第一項の規定に基づき」で始まっており、加工食品全般を対象とした品質表示基準が、かつて別の法律の枠組みのもとで農林水産省の告示として置かれていたことが読み取れる[1]。食品衛生法に基づく内閣府令(平成二十三年内閣府令第四十五号、第四十六号)も同じ附則で廃止対象に並んでおり[1]、系統の異なる複数の表示ルールが一本化前は別々に存在していたことが分かる。

みそ専用の告示は、廃止対象の一覧のどこに並んでいるか

附則第二条の一覧をたどると、みそ専用の告示はその三十一番目に置かれている。条文には「三十一 みそ品質表示基準を定めた件(平成十二年農林水産省告示第千六百六十四号)」とあり[1]、みその表示を定めていた告示が、名指しで廃止対象に並べられていることが確認できる。同じ一覧には、加工食品品質表示基準という品目横断的な告示も入っている[1]。つまり、みそについては品目専用の告示と横断的な告示の両方が同時に廃止され、定義は現行の食品表示基準の別表へ移された[2]。古い解説が告示番号を出典として挙げ続けているのは、この移し替えの前後で引用が更新されていないためである。

食品表示基準はどの旧告示を廃止したか

みその旧告示は、調味料の告示とまとめて畳まれた平成十二年の調味料の品目別告示、平成十六年のしょうゆの全部改正、平成二十三年の食品衛生法系の内閣府令が、食品表示基準の附則第二条でまとめて廃止された経緯を示した年表。年表みその旧告示は、調味料の告示とまとめて畳まれた品目別の告示と、系統の違う府令・告示を、食品表示基準の附則第二条が一括で廃止した。平成十二年調味料の品目別告示三十一号みそから三十六号めん類等用つゆまで、番号がほぼ連続平成十六年しょうゆの全部改正告示第千七百四号。制定が新しいぶん、一覧では五十六号平成二十三年食品衛生法系の内閣府令第四十五号・第四十六号現在食品表示基準に一本化附則第二条がこれらを廃止。みその定義は別表第四へ現行古い解説を読むとき「みそ品質表示基準」の告示番号を現行の根拠に挙げている解説は、廃止前の引用がそのまま残っているものと考えてよい。出典: 食品表示基準 — 附則第二条(次に掲げる府令及び告示は、廃止する)図解:ajimuse.com

複数の系統に分かれていた表示ルールが、なぜ一つの府令にまとまったのかを理解するには、廃止対象として何が列挙されているかを具体的に見るのが早い。

附則第二条が列挙する廃止対象

食品表示基準の附則第二条は、次の府令・告示を廃止すると定めている[1]。

  • 食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令(平成二十三年内閣府令第四十五号)
  • 食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品の表示の基準に関する内閣府令(平成二十三年内閣府令第四十六号)
  • 容器包装の面積により表示を省略することができる食品を定める件(昭和四十五年厚生省告示第百八十号)
  • 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律附則第六条第一項の規定に基づき、加工食品品質表示基準を定める件(平成十二年農林水産省告示第五百十三号)

附則第二条の列挙はこの四つで終わらない。五号以降も品目別の告示が続き、最後は五十八号の「即席めん類品質表示基準の全部を改正する件」(平成二十一年農林水産省告示第四百八十七号)まで並ぶ[1]。

並びを追っていくと、調味料の品質表示基準がひと固まりになっているのが目につく。三十一号のみそに続けて、三十二号にウスターソース類(平成十二年農林水産省告示第千六百六十六号)、三十三号にドレッシング及びドレッシングタイプ調味料(同第千六百六十七号)、三十四号に食酢(同第千六百六十八号)、三十五号に風味調味料(同第千六百六十九号)、三十六号にめん類等用つゆ(同第千六百七十号)が置かれている[1]。いずれも平成十二年の農林水産省告示で、番号もほぼ連続している。調味料の品目別基準が同じ年に整えられ、同じ府令によってまとめて畳まれたことが、この並びから読み取れる。

しょうゆの品質表示基準は少し離れた五十六号にあり、「しょうゆ品質表示基準の全部を改正する件(平成十六年農林水産省告示第千七百四号)」という名前で並んでいる[1]。平成十六年の全部改正という形なので、制定年が新しい分だけ一覧の後ろに回っているわけである。みそとしょうゆで告示番号の桁がまるで違うのは、扱いの軽重ではなく、単に整備された時期が違うことの反映にすぎない。

「府令への統合」が意味すること

この廃止リストを見ると、旧来の表示ルールは食品衛生法系の内閣府令と、旧JAS法系の農林水産省告示という、所管も根拠法も異なる系統に分かれていたことが分かる[1]。食品表示基準は、これらを一つの府令として整理し、みその区分定義(別表第四)も含めて同じ文書のなかに収めている[1][2]。読者にとっての実利は、以前なら複数の告示を横断して確認する必要があった表示ルールが、現在は食品表示基準という一つの府令を参照すればよくなった点である。

米みそ・麦みそ・豆みそ・調合みその定義は今どこにあるか

区分の呼び方そのものは店頭でもよく見かけるが、その定義がどの条文にあるかまで確認する機会は少ない。ここでは食品表示基準の別表第四に置かれた定義の骨格を見る。

食品表示基準別表第四の定義

食品表示基準の別表第四は、みそを大豆等を蒸煮したものに、こうじ(米・大麦・はだか麦・大豆にこうじ菌を培養したもの)と食塩を混合し、発酵させ、及び熟成させたものと位置づけている[2]。これに砂糖類(砂糖、糖蜜及び糖類)や、風味原料(かつおぶし、煮干魚類、こんぶ等の粉末又は抽出濃縮物、魚醤油、たんぱく加水分解物、酵母エキスその他これらに類する食品を指す)等を加えたものも、同じ枠組みのなかに含まれる[2]。この土台のうえで、使うこうじの種類によって米みそ・麦みそ・豆みそという名称が区別される。

表で見る4区分の違い

各区分の原料構成は、食品表示基準の別表と公正競争規約の双方でほぼ同じ内容として確認できる[2][3]。

区分使用するこうじ原料構成の要点
米みそ米こうじ(米を蒸煮してこうじ菌を培養したもの)大豆(脱脂加工大豆を除く)を蒸煮したものに米こうじを加え、食塩を混合したもの[2][3]
麦みそ麦こうじ(大麦又ははだか麦を蒸煮してこうじ菌を培養したもの)大豆を蒸煮したものに麦こうじを加え、食塩を混合したもの[2][3]
豆みそ豆こうじ(大豆を蒸煮してこうじ菌を培養したもの)豆こうじに食塩を混合したもの[2][3]
調合みそ―米みそ、麦みそ又は豆みそを組み合わせたもの[3]

米みそ・麦みそ・豆みその違いは、大豆を蒸煮した後に加えるこうじの原料が米か、麦(大麦・はだか麦)か、あるいは大豆自体をこうじ化したものかという一点に集約される[2]。

公正競争規約に見る業界側の定義との対応

全国公正取引協議会連合会の公正競争規約は、米みそ・麦みそ・豆みその定義を食品表示基準とほぼ同じ文言で示しており、調合みそについては「米みそ、麦みそ又は豆みそを」組み合わせたものと定めている[3]。業界団体の規約が国の府令と同じ骨格の定義を採用している点は、店頭表示の実務が府令の定義に沿って運用されていることの裏づけになる。麹歩合や甘辛による分類は、これとは別の切り口の話であり、この記事では扱わない。

原料原産地表示との関係

食品表示基準は、みその区分定義だけでなく、加工食品の原料原産地表示に関する規定も含む一つの府令として構成されている。ただし、この記事で参照した一次資料の範囲は、みその区分定義(別表第四)と附則の廃止規定に限られており、原料原産地表示の対象品目や具体的な表示方法を定めた条文までは含まれていない。

一次資料から言えることと言えないこと

確認できるのは、みその区分定義と原料原産地表示の規定が、同じ食品表示基準という一つの府令のなかに収められているという構造上の事実である[1][2]。廃止された旧告示の側にも「加工食品品質表示基準」のような品目横断の基準と、みそのような品目専用の基準が併存していたことを思えば、横断規定と品目規定が一つの府令に同居している現在の構造は、その二層をそのまま引き継いだものと見ることができる[1]。原料原産地表示の対象がみそにどこまで及ぶか、対象原材料は何かといった具体的な内容は、この記事の一次資料の範囲では確認できておらず、もっともらしい数値や品目名を当てはめることは避ける。

ラベルを実際に確認するときの姿勢

原料原産地に関する具体的な表示ルールを知りたい場合は、手元の商品ラベルに記載された原材料表示欄そのものを確認するのが確実な方法である。区分名(米みそ・麦みそ・豆みそ・調合みそ)と原材料表示は、同じ府令が定める別の項目として並んでいるため、両方を照らし合わせて読む習慣をつけておくと、輸入食材店で見慣れない銘柄に出会ったときにも判断がしやすくなる。

結論

みその表示区分を最終的に決めているのは、府令としての食品表示基準の別表第四であり、米みそ・麦みそ・豆みそは使うこうじの原料によって区別され、調合みそはそれらを組み合わせたものとして扱われる[2][3]。かつて別々の系統にあった食品衛生法系の内閣府令と旧JAS法系の告示は、食品表示基準の附則によって廃止対象として整理され、一つの府令に集約された[1]。旧「みそ品質表示基準を定めた件」は、その一覧の三十一号(平成十二年農林水産省告示第千六百六十四号)として名指しされている[1]。古い解説がこの告示番号を現行の根拠として挙げていたら、廃止前の引用がそのまま残っているものと考えてよい。

買うとき・使い切るときに見るべき項目

みそを選ぶときや、輸入食材店で買った商品を使い切りたいときは、次の項目を順に見ていくとラベルの情報を無駄なく読み取れる。

  • パッケージ正面や原材料表示欄にある区分名(米みそ・麦みそ・豆みそ・調合みそ)
  • 原材料表示の並び順(大豆、こうじの種類、食塩、砂糖類や風味原料の有無)
  • 内容量や賞味期限など、区分の定義とは別に記載されている一般表示事項

表示を読むときの要点

法令の条文を追っていくと、店頭で何気なく目にする「米みそ」「調合みそ」という言葉の背後に、廃止された旧告示と現行の府令という二層の歴史があることが分かる。店頭のみそは、区分名だけでなく原材料表示欄まで目を通し、どのこうじが使われているかを確認するとよい。麹歩合や甘辛の違いといった、区分名の先にある味の特徴については、別の切り口から調べる必要がある。

参考文献

  1. 食品表示基準 — 附則第二条(次に掲げる府令及び告示は、廃止する)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
  2. 食品表示基準 — みその区分の定義(別表)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
  3. みその表示に関する公正競争規約および施行規則(全国公正取引協議会連合会)
    https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/d03_H_miso.pdf
  4. みその商品知識 (I)(日本醸造協会誌)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/89/10/89_10_762/_article/-char/ja

この記事を書いた人

AJIMUSE Lab は、世界の調味料メディア AJIMUSE をつくっている編集ラボです。Codex(国際食品規格)、EU の規則と原産地呼称の登録簿、国際オリーブ理事会の規格、日本の JAS 規格と食品成分表、米国農務省やインド香辛料庁の資料、査読論文——本国の規格や公的機関の資料を中心に、一次資料を原典で読むことを出発点にしています。現地の言葉で書かれた規格や資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字や固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と記事のつくりかたは運営者情報にまとめています。

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