味噌の甘辛は麹歩合(こうじぶあい)と塩分の比率で決まる。麹歩合とは原料の大豆に対する米麹(麦麹)の比率で、[米(麦)の重量÷大豆の重量×10]で表す。塩分が一定なら、麹歩合が高いほど糖化が進んで甘口になる[1]。米味噌では麹歩合5〜10・食塩11〜13%が辛口味噌、15〜30・食塩5〜7%が甘味噌の目安とされる[1]。スーパーの棚で「信州味噌」と「西京味噌」の色と値札を見比べたとき、その差は単なる嗜好ではなく、麹と塩の配合という醸造設計の結果である。麹歩合を読めば、パッケージを開ける前に味の輪郭を予測でき、料理への使い分けが明確になる。
麹歩合と甘辛|塩分と麹の比率が決める味の構造
味噌の味わいは、麹が生む糖分と添加する塩分のバランスで決まる。麹歩合が高いほど米(または麦)由来のデンプンが糖に変わり、甘味が前面に出る。一方、塩分は発酵速度を抑えて雑菌を防ぐと同時に、塩味として味を引き締める役割を持つ[1]。
麹歩合の定義と計算
麹歩合は原料大豆に対する米麹・麦麹の比率で、[米(麦)の重量÷大豆の重量×10]で示す[1][15]。たとえば大豆10 kgに米麹8 kgを混ぜれば麹歩合8となる。米味噌では辛口で5〜10、甘口で8〜15、甘味噌で15〜30という幅がある[1]。麦味噌は麦麹を用いるが、考え方は同じである。豆味噌は米麹・麦麹を使わず大豆そのものを豆麹にするため、麹歩合という概念を適用しない[2]。
麹歩合が高いと糖化酵素(アミラーゼ)の働きでブドウ糖などの糖が増え、甘味が強まる。逆に麹歩合を抑えれば、大豆由来のアミノ酸とペプチドが相対的に濃くなり、塩味とうま味が際立つ辛口に仕上がる[1]。
塩分濃度と発酵期間の関係
味噌は通常12%程度の食塩を含み、仕込み時に加える酵母(Zygosaccharomyces rouxii)や乳酸菌(Tetragenococcus halophilus)はいずれも耐塩性である[1]。成分表でも、米みその淡色辛みそは食塩相当量12.4 g/100 g、甘みそは6.1 g/100 gと、甘辛で倍近い開きがある[6][7]。
仕込みは25〜30℃程度で行われ、仕込み時のpH 5.7〜6.0が発酵・熟成にともなって低下し、製品では5.0前後になる[1]。熟成日数は品温経過、発酵タンクの大きさ・材質、大豆の脱皮の有無、麹歩合、麹の酵素活性などによって異なり、短い味噌で1か月程度、長い味噌では年単位に及ぶ[1]。米こうじ味噌では6か月〜1年ほど熟成させるのが一般的である[13]。
長期熟成では大豆タンパク質が分解されてアミノ酸が増え、これが糖と反応するメイラード反応によって、深いうま味と赤褐色が生まれる[1][15]。麹歩合を抑えて塩分を高めに保つことで、辛口かつコクのある味わいを実現している。
甘辛の分類と実例
なお、甘味噌・甘口味噌・辛口味噌という区分は、法令上の規格ではない。みそのJAS(JAS 0022)は生産方法についての規格であり、成分値の基準を定めていない[2]。また業界団体も「甘みそ・甘口といった味による分け方は、個人の主観や地域の考え方により判断が異なる可能性がある」として、公的な表示区分には採用していない[3]。以下は醸造の解説文献が示す目安である[1]。
| 分類 | 食塩[1] | 麹歩合[1] | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 甘味噌 | 5〜7%[1] | 15〜30[1] | 西京味噌などの白甘味噌、江戸甘味噌 |
| 甘口味噌 | 7〜13%[1] | 8〜15[1] | 相白味噌、讃岐味噌 |
| 辛口味噌 | 11〜13%[1] | 5〜10[1] | 信州味噌、仙台味噌 |
京都の白味噌に代表される「白甘味噌」と、江戸甘味噌に代表される「赤甘味噌」は、麹歩合15〜20程度・塩分5〜7%の甘味噌である[1]。成分表でも米みその甘みそは食塩相当量6.1 g/100 gに対し炭水化物37.9 g/100 gと、糖質が高い[6]。一方、仙台味噌のような赤色辛口味噌は大豆の比率が高く、赤褐色と強い塩味が特徴である[15]。
編集者として、麹歩合と塩分の数値を知ると、パッケージ裏の原材料表示(大豆・米・食塩の順序)から味の傾向を推測できるようになる。甘口か辛口かは好みの問題ではなく、醸造設計の結果として客観的に存在する差である。
味噌の分類|米・麦・豆・調合と農水省みそJAS規格
味噌は使用する麹の種類によって米味噌・麦味噌・豆味噌に大別され、さらにそれ以外を調合味噌とする4区分が用いられる。この4区分は消費者庁の食品表示基準(旧・みその品質表示基準)と、みそのJAS(JAS 0022)の双方で定義されている[2][3]。
米味噌・麦味噌・豆味噌の原料構成
米味噌は、蒸煮した大豆に米こうじを加えて食塩を混合したものをいう[2]。米麹のデンプンが糖化して甘味を生み、大豆由来のアミノ酸がうま味を形成する。信州味噌、仙台味噌、西京味噌はいずれも米味噌に分類される。2025年の出荷数量では米味噌が全体の83.8%を占め、圧倒的な主流である[4]。
麦味噌は、蒸煮した大豆に麦こうじ(大麦またははだか麦)を加えて食塩を混合したものである[2]。九州・四国・中国地方の一部で伝統的に作られ、麦の香ばしさと軽い甘味が特徴である[1]。出荷シェアは3.4%で、2000年の6.5%から漸減している[4]。
豆味噌は大豆のみを原料とし、蒸煮した大豆に直接こうじ菌を培養した豆こうじに食塩を混合する[2]。愛知・岐阜・三重の東海3県が主産地で、八丁味噌がその代表である。出荷シェアは4.1%[4]。長期熟成により濃厚なうま味と渋みが生まれ、煮込み料理に向く。
調合味噌という区分
調合味噌は、米味噌・麦味噌・豆味噌を2種類以上混合したもののほか、米こうじに麦こうじや豆こうじを混合して使用したものなど、米・麦・豆のいずれにも当たらない味噌を指す[2]。つまり「完成品同士を混ぜたもの」と「仕込み段階で複数の麹を混ぜたもの」の両方が、規格上は同じ調合味噌である。出荷シェアは8.6%[4]。赤だしは、豆味噌に米味噌などを調合したこの区分に属する製品が中心である。
なお「だし入りみそ」を名乗れるのは、かつおぶし・煮干魚類・こんぶ等の粉末や抽出濃縮物、魚醤油、たん白加水分解物、酵母エキス等の重量の総和が、グルタミン酸ナトリウム等の重量の総和を超える製品に限られる[5]。
みそJAS規格の要点
みそのJAS(JAS 0022:2025)は、みその「生産方法」について規定する規格であり、水分や食塩分といった成分値の基準は置いていない[2]。主な要求事項は次の通りである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原材料 | 大豆、米・麦等の穀類、食塩、砂糖類、風味原料等以外を使用しない |
| こうじ菌 | Aspergillus oryzae でなければならない |
| こうじ | ばらこうじ(米こうじ・麦こうじ)または豆こうじに限る |
| 管理 | A. oryzae 以外のこうじ菌を培養したものと混合しない管理を行う |
| 区分の定義 | 米みそ・麦みそ・豆みそ・調合みその定義を規定 |
一方、「天然醸造」はJASの用語ではなく、みその表示に関する公正競争規約が定める特定用語である。加温により醸造を促進したものではなく、かつ食品衛生法施行規則別表第1に掲げる添加物を使用しないものに限り表示できる[5]。同規約は「生」「手造り」「長期熟成」「1年みそ」「2年みそ」などの使用基準も定めており、たとえば「2年みそ」は仕込み充填日から容器包装日までが2年以上のものを指す[5]。
JAS認定を受けた製品はパッケージに「JASマーク」を表示できる。ただし、すべての味噌がJAS認定を受けているわけではなく、認定を取らずに製造する蔵元も多い[2]。
色による違い|白・淡色・赤とメイラード反応・熟成の関係
味噌の色は、メイラード反応(アミノカルボニル反応)の進行度を反映する。色の濃淡は、大豆など原料の種類、大豆を煮るか蒸すか、麹が多いか少ないか、発酵の途中でかき回すかどうかなど複数の条件で変わる[15]。白味噌・淡色味噌・赤味噌の区分は見た目だけでなく、熟成期間・麹歩合・塩分の設計思想を示す指標である。
白味噌の製法と色の制御
白味噌は淡い黄色みを帯びた白色を呈し、米麹の比率が高いことが最大の特徴である[12]。熟成はわずか1〜10日と短く、その分だけ原料の品質と技術が仕上がりに直結する[12]。塩分が低いため、他の味噌に比べて日持ちがしない[12]。
白甘味噌は麹歩合15〜20程度・塩分5〜7%で、熟成温度を50℃程度に保ち、数日間で麹の酵素のみによって熟成させる(高温消化)。この際、酵母や乳酸菌による発酵はあまり行われないため、「分解型」の味噌と呼ばれる[1]。
白味噌は平安時代の京都に起源を持ち、京雑煮や味噌漬け、花びら餅、菓子などに使われる。2022年度には文化庁の「100年フード」にも認定された[12]。
淡色味噌と赤味噌の熟成とメイラード反応
淡色味噌は黄褐色から薄茶色を示す。信州味噌の淡色タイプがこれに当たり、麹歩合8〜12・食塩相当量12.4 g/100 g前後で、米の甘味と大豆のうま味がバランスする[1][7]。大豆を煮るか蒸すかでも色の濃さが変わる[15]。
赤味噌は赤褐色から濃褐色を呈する。原料が同じ配合であっても、熟成期間が短いと淡色であり、熟成期間が長くなるほど赤味が濃くなる[1]。長期熟成中にアミノ酸と糖がメイラード反応を起こし、メラノイジンという褐色色素を生成する。メラノイジンは味噌の着色に寄与するほか、味噌らしいコクを付与する[1]。八丁味噌のGI明細書でも、メイラード反応が十分に進むことで「抗酸化作用のあるメラノイジンが多く生成される」と説明されている[9]。
豆味噌の八丁味噌は赤味噌の中でも特に色が濃く、赤褐色の基準として概ねY値3.0%以下と定められている[9]。長期熟成で大豆タンパク質が分解され、水に溶けにくいアミノ酸が結晶化した「キビ粒」が見られるようになる[9]。
色と味の相関
色の濃さは熟成度とうま味の深さにおおむね対応する。白味噌は糖質が多く塩味が弱いため、甘味が前面に出る[6][12]。赤味噌はアミノ酸が多く塩分が高いため、うま味と塩味が強い。淡色味噌はその中間に位置し、汎用性が高い[1]。
| 色区分 | 熟成期間の目安 | 麹歩合 | 食塩 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 白味噌 | 1〜10日 | 15〜20 | 5〜7% | 雑煮、白和え、味噌漬け、菓子 |
| 淡色味噌 | 数か月 | 8〜15 | 11〜13% | 味噌汁、味噌炒め |
| 赤味噌 | 半年〜年単位 | 5〜10 | 10〜13% | 味噌煮込み、赤だし、田楽 |
上表の熟成期間・麹歩合・食塩は、本記事がここまでに引いた資料をもとにAJIMUSE Lab が整理した目安であり、単一の規格が定めた値ではない。色の違いは好みだけでなく、料理の使いどころにも影響する。白味噌は甘味と穏やかな塩味を活かして和え物や仕上げに向き、長期熟成の赤味噌は加熱してもコクが失われにくいため煮込みに向く[9][12]。
地域の味噌|信州・仙台・八丁・西京の特徴と歴史
日本各地には気候・水質・食文化に適応した地域味噌が存在する。微生物の働き方は気候風土やそれぞれの蔵によって微妙に変わるため、原料が同じでも出来上がりが違ってくる[15]。信州味噌・仙台味噌・八丁味噌・西京味噌は、それぞれ異なる醸造設計と歴史的背景を持つ。
信州味噌|淡色辛口の全国標準
信州味噌は長野県で製造される米味噌で、淡色辛口が主流である。長野県味噌工業協同組合連合会の会員が長野県内で製造したものを指し、山吹色の明るい色合いとクセのないさっぱりした味わいが特徴とされる[14]。
長野県の味噌出荷額は736億円で全国シェア50.9%(経済構造実態調査)と全国1位であり、信州味噌は日本の味噌のおよそ半分を占める[14]。全国に広まる契機となったのは1923年の関東大震災で、救援物資として送られた信州味噌が東京の市場で評価を得たとされる[14]。
仙台味噌|赤辛口の伊達家御用達
仙台味噌は宮城県で作られる米味噌で、赤辛口が特徴である。伊達政宗が軍用味噌を自給するため、城下に「御塩噌蔵(おえんそぐら)」と呼ばれる味噌工場を建てたのが仙台味噌の始まりと伝えられる[15]。文禄の役の際、他藩の味噌が夏期に腐敗したのに対し仙台藩の味噌は変質せず、請われて他藩に分け与えたことで名を上げたという伝承も残る[15]。
仙台藩の江戸藩邸に常勤する3,000人分の味噌は当初すべて仙台から運ばれ、のちに大井の下屋敷に味噌蔵が作られた。この蔵は江戸の庶民から「味噌屋敷」と呼ばれたという[15]。長期熟成によりメイラード反応が進み、赤色と大豆のうま味が生まれる[15]。味噌汁にすると濃厚な風味が立ち、豚汁や芋煮に適する。
八丁味噌|豆味噌の最高峰とGI登録の経緯
八丁味噌は愛知県で作られる豆味噌で、原料は大豆と塩(および水)のみ、米や麦の麹を使わない[9]。蒸した大豆で味噌玉を作り、その表面に麹菌を繁殖させて豆麹とする「味噌玉造り製法」が、高温多湿な愛知県で安全に麹を造る方法として定着した歴史がある[9]。豆みその食塩相当量は10.9 g/100 g、たんぱく質は17.2 g/100 gで、米みそ淡色辛みそより塩分が低くたんぱく質が多い[7][8]。
「八丁味噌」は地理的表示(GI)保護制度に登録されている(登録第49号、2017年12月15日登録)。ここで注意したいのは、GIの登録内容が一般に語られる「岡崎の伝統製法」とは一致していなかった点である。2017年に登録された愛知県味噌溜醤油工業協同組合の明細書では、生産地は岡崎市八帖町ではなく愛知県全域であり、生産方法は「豆麹、塩、水を混ぜてタンク(醸造桶)に仕込み、重しをのせて1年以上(温度調整を行う場合25℃以上で最低10か月間)熟成させる」というものだ。重しについては「その形状は問わない」と明記されており、木桶や円錐状の石積みは要件になっていない[9]。
一方、岡崎市八帖町の老舗2社(まるや・カクキュー)でつくる八丁味噌協同組合は当初この登録から外れ、登録の取消を求めて争った。同組合は2025年1月24日に生産者団体として追加登録され、登録生産者団体は2団体となった[10]。追加登録にともなって同組合の明細書も登録簿に加わり、そちらは生産地を「愛知県岡崎市八丁町」、生産方法を「約6トンが入る木桶に仕込み、天然石300〜500個程度・約3トンを円錐状に積み上げ、二夏二冬以上、加温せず天然醸造で熟成させる」と規定している[9]。つまり現在のGI「八丁味噌」は、要件の異なる2つの明細書が並立する構造になっている。
農林水産省の第三者委員会報告書によれば、県組合側の実際の熟成期間も非加温の天然熟成で平均13.5〜28.6か月であり、明細書の「一夏以上」という当時の記載は実態より短い誤解を与えるとして見直しが指摘されていた[11]。現行の「1年以上」という記載はこの経緯を踏まえたものである。
西京味噌|白甘口の京料理の核
西京味噌は京都で発達した白味噌の代表である。米麹の比率が高く、熟成は1〜10日と短い[12]。白甘味噌としての設計は麹歩合15〜20程度・塩分5〜7%で、50℃程度の高温で麹の酵素により数日で熟成させる[1]。
白味噌は京雑煮や味噌漬け、花びら餅、菓子などに使われる[12]。塩分が低いぶん日持ちがしないため、開封後は早めに使い切りたい[12]。
味噌の使い方Q&A|選び方・保存・手作りの要点
味噌の選び方と使い方には、原料・色・塩分の理解が欠かせない。よくある疑問と実用的な対処法を整理する。
どの味噌を選ぶべきか
用途に応じて味噌を使い分けると、料理の完成度が上がる。味噌汁には淡色味噌か赤味噌を選び、出汁との相性を重視する。淡色味噌はクセが少なく出汁の風味を邪魔せず[14]、赤味噌は長期熟成由来の濃厚なコクを持つ[9]。
煮込み料理には長期熟成の赤味噌が向く。八丁味噌のGI明細書でも、濃厚なコクは加熱しても失われにくく(加熱耐性がある)、少量でも料理の味を変えられると説明されている[9]。白味噌は甘味と穏やかな塩味が持ち味なので、和え物や仕上げ、味噌漬けに使うとよい[12]。
漬物には塩分の高い辛口味噌を使う。米みその淡色辛みそは食塩相当量12.4 g/100 gあり、保存性の面でも扱いやすい[7]。西京漬けは例外で、塩分の低い白味噌で魚の表面を覆い、短期間で引き上げる[12]。
保存方法と賞味期限
味噌は発酵・熟成が進むと色が濃くなる。製品になってからも反応が進むため、時間がたつと色が濃くなっていく[15]。空気との接触面積を減らすため、表面をラップで覆っておくと変化を遅らせやすい。
白味噌は塩分が低く日持ちがしないため、早めに使い切る[12]。淡色味噌・赤味噌は塩分が高いぶん保存性に優れ、八丁味噌のように水分が少なく重しで空気を抜いた味噌は「暑さ寒さに強く保存性に優れた特性」を持つとされる[9]。
表面に白い膜状のものが浮くことがあるが、これは産膜酵母である。全国味噌工業協同組合連合会は、容器の膨張につながる包装後のガス産生や、味噌の香味を損なう産膜酵母の発生を防止するために、熟成終了後に酒精を添加すると説明している[11]。産膜酵母は香味を損なうものであり、取り除いて使うのが基本である。緑や黒のカビが生えた場合は廃棄する。
手作り味噌の基本
家庭で味噌を仕込む場合も、原理は工業生産と同じである。ゆでてすり潰した大豆に米麹と塩を加えて容器に仕込み、6か月〜1年ほど熟成させると味噌になる[13]。麹歩合を10前後(大豆と米麹をほぼ同量)に取れば、標準的な淡色の味噌になる[1]。
仕込みは25〜30℃程度で行われ、pHは仕込み時5.7〜6.0から製品時5.0前後まで下がる[1]。仕込み後7〜15日ほどで「切返し(天地返し)」を行うと、①タンク内の発酵・熟成が均一になる、②酸素供給で酵母の増殖が促進される、③発酵熱を放熱できる、という効果がある。天然醸造の場合は夏場に実施することが多い[1]。
熟成日数は品温経過、容器の大きさ・材質、大豆の脱皮の有無、麹歩合、麹の酵素活性で変わるため、期間だけを頼りにせず色と香りで見極めるのが確実である[1]。初心者は少量から始めるとよい。
だし入り味噌と無添加味噌の違い
だし入り味噌は、かつおぶしや昆布などの風味原料を加えた味噌である。「だし入りみそ」を表示できるのは、これら風味原料の重量の総和がグルタミン酸ナトリウム等の重量の総和を超える製品に限られる[5]。味噌にはこうじ菌由来のホスファターゼなどの酵素が含まれ、だしのうま味を分解してしまうため、酵素を失活させる急速加熱・急速冷却の設備によって製造される[1]。
「無添加」の表示については、公正競争規約が合理的な根拠資料の保存を義務づけており、根拠なく表示することはできない[5]。無添加の味噌は発酵が止まらないため、常温では色や酸味が進みやすい。
酒精(アルコール)添加は、発酵そのものを止めるためではなく、熟成終了後に包装後のガス産生と産膜酵母の発生を防ぐために行われるものである。全国味噌工業協同組合連合会は、酒精は豆味噌の香味等の品質には影響しないとしている[11]。なお、公正競争規約上「天然醸造」を表示できるのは、加温により醸造を促進しておらず、かつ食品衛生法施行規則別表第1に掲げる添加物を使用しないものに限られる[5]。
結論|麹歩合と塩分を読めば、味噌の味は予測できる
味噌の甘辛は、麹歩合と塩分の配合比で決まる。塩分が一定なら麹歩合が高いほど甘口になり、麹歩合を抑えて塩分を上げれば辛口になる[1][15]。この原則を知れば、パッケージ裏の原材料表示(大豆・米・食塩の順序)から味の傾向を推測でき、料理に合わせた選択が可能になる。
色の違いは熟成期間とメイラード反応の進行度を示す。白味噌は1〜10日の短期熟成で甘く[12]、赤味噌は長期熟成でうま味が濃い[1]。地域ごとの味噌(信州・仙台・八丁・西京)は、気候と食文化に適応した醸造設計の結果であり、それぞれに最適な用途がある。
編集者として、味噌を選ぶ際には麹歩合・塩分・色の3要素を確認する習慣が有効だと感じる。数値で味を予測できると、試行錯誤の回数が減り、冷蔵庫に眠る味噌を使い切る道筋が見える。次に味噌を買うときは、裏面の原材料欄を見て、大豆と米の比率を確認してほしい。その数字が、あなたの料理に必要な甘辛を教えてくれる。
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参考文献
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